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せめて『治す』魔法が良かった #肋骨貸す魔法 #毎週ショートショートnote  

俺の能力は『肋骨貸す』

消える。
物を動かす。
せめて、『肋骨を治す』
だったら良かったのに。


使えねぇ……。
ボソッと呟いた俺の言葉は
学校のチャイムの音にかき消された。

哀れみの目で俺をみる
担任のなんともいえない
表情が俺の学校での
最後の思い出だ。


あれから俺は、ひきこもった。


そんな俺に両親も
友人も幼馴染も何も言わなかった。


ネットで同期が救助隊となって
活躍するニュースを見て
モニターを殴ってしまった。


自分の事が自分で嫌になった。
俺の存在に意味はない。
思考は、どんどんとマイナスになる。


少しでも気分転換にと
スマホだけもってコンビニに向かう。


路地裏で騒ぎ声が聞こえる。
近所の、ガキの喧嘩だ。
1vs5。
倒れたスーツ姿の男に
蹴りを入れて男達は去って行った。


「にぃさん、大丈夫?」
声をかけたが、指先が動いただけ。

胸を押さえて苦しそうだった。
男の左薬指の指輪を見て助けたい。
そう思った。

肋骨貸す魔法を使う。

俺は激しい痛みで意識が途絶えた。


【406文字】

#肋骨貸す魔法  
#毎週ショートショートnote

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