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暗号解読 #カフェ4分33秒 #毎週ショートショートnote

地下鉄の車内混み合っていない座席で、
隣の紳士が新聞を広げた。
「西区タカニカフェ4分33秒」

言葉を聞いて俺は次の駅で降りた。

ゆっくりと出口へ向かう。

目的カフェで「Reserve」の札が
置かれた席につく。
店員にコーヒーを頼み鞄から
小説を取り出し机に置く。

あと、3分11秒。

コーヒーの薫りが漂う店内。
あと、2分31秒。

小説を開きつつ扉を見る。
あと、1分15秒でターゲットが入ってくる。

カチャカチャと音を立て
新人ウェイトレスがコーヒーを運んでくる。

ゆっくりとした手つきで
慎重にコーヒーを置くウェイトレス。

あと、12秒。
空のトレイを持ち替えた
ウェイトレスがお辞儀をして立ち去る。

片手で小説をゆっくりと置きながら
時計の針と扉を確かめる。

扉が開いた。
と同時に俺の頭に痛みが走る。
横にいるウェイトレスのトレイが
俺の頭の上に置かれ「失格」と告げた。


4分33秒に扉を開ける人物ではなく
側にいる人物がターゲットだった。

スパイへの道は遠い。


#毎週ショートショートnote
#カフェ4分33秒

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