腹いっぱいの金須　#小判食え　#毎週ショートショートnote

金は、ばら撒くほどあるが
ばら撒いても面白くない。

「何か面白い事はないか？」
妻に尋ねると、しばらく考えた後
コソコソと主人に耳打ちをした。


町に貼られたチラシは
人々の興味を集めた。

『大判、小判、一分金　食した者。
腹に入った分全てを譲渡する』

「大判は無理だが、小判1枚でもいいな」
「一分金をたくさん食べる方が効率的だ」
「腹を空かせてから行ってみよう」
町は、この話題で盛り上がった。


屋敷に訪れた男が、座敷に通されると
目の前に大判、小判、一分金が
積み上げられる。

ゴクリと喉を鳴らして
男は一分金を女中の用意した
水で流し込んでいく。
小さめな小判も、多少無理をすれば
喉を通っていった。

ニコニコと旦那と妻は
「大判食え、小判食え、もっと食え」と
囃したてる。

男の腹はズシリと重くなった。

「もっと食え」
と主人が言うが
男の顔色が徐々に悪くなる。


「厠へ行っても、いいですか？」
男は尋ねる。


主人は
「ならぬ。厠の変わりに
この桶なら良いぞ」
と笑顔で答えた。

【410文字】



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【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか？』お題発表！11/5｜たらはかに（田原にか）

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