家族のこと。父の話。

家族のことを記しておこう。

父、母、兄という一見普通のようで、歪んだへんてこな家族の紹介をしていこうと思う。

父81歳。製薬会社を定年してからずっと自由に、過ごしている。世間で言ういわゆる一流大学を卒業しているのに、一浪したこと。東大に行けなかったことが情けないらしい。プライドの塊みたいな人だ。一匹狼、真面目、人を信じない、すぐ怒鳴る、自分が正しいと信じてやまない。背は低いけど、顔はなかなかハンサムだと思っている。

父の家庭環境は複雑だった。幼い頃に母を病気で亡くし、弟も病死。義理の母と義理の弟、商売で忙しくしている父の父(私にとっておじいちゃん。)という家族構成。きっと孤独だったんだと思う。祖父の遺産相続は放棄して縁を切ると、私が高校生の頃に義理の母と弟に怒って話していた。細かくはわからない。何がどうなってそんなことになっただなんて。家族なんてひとことじゃ済まされない、いろんな感情が網のように入り組んでるから。人様にはわからないのだ。

そんな父が自分が信じているものは、自分と家族と金だけだとサラッと言っていた。自分が恵まれていなかったことを家族に投影するように、きっと父にとってこんな歪んだ家族でも大事な居場所になっているのだろう。

父との思い出で一番好きなのは、私が小学生の頃寝る前によく本を読んでくれたこと。その時間がすごく愛おしくて、気づいたら心地よくて眠ってしまっていた。朝起きると父は出社していて。整髪料のほのかないい香りを残した父の枕に、顔を埋めてみたりしていた。

最悪な思い出は数知れずだ。なんせ他人を信じないし、極端な考えを持っているから、20代後半に付き合っていた彼の話をしたときには大変だった。住所、会社名、どこで知り合ったのか、顔を真っ赤にしながら怒鳴っていた。結果的にその彼とはお別れしたのだが、(もちろん父に問い詰められたからではない。)父が言いたかったことは、どこの馬の骨かわからん奴に娘を渡せないという、まるで高倉健並みの不器用さ丸出しの気持ちだったわけだ。

そんな父も最近は終活といって、相続の手続きを始めている。父もいつか死ぬんだよなって冷静に考える。想像もつかないけど必ずその日は来るのだ。来年の父の誕生日には手紙でも書いてみようか。すれ違いばかりの毎日で、伝えきれない思いを込めて。



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