『嚙みあわない会話と、ある過去について』辻村深月

 辻村深月の小説の中に渦巻くのは、選ばれなかった人たち、スクールカースト下位層のコンプレックス。私もスクールカーストは中~下の方だったので、「わかる、わかるぞー」と思いながら読むことが多いです。てか本当になんで芦田愛菜はこの人のファンなんでしょう。芦田愛菜にこのスクールカースト下位層の気持ちがわかってたまるか(でももしかしたら意外にも結構つらい小学校時代とか過ごしてきたのかも)。で、いろんな作品がある中で、この短編集の中にある「パッとしない子」がかなりいい。
 主人公の松尾美穂は小学校教師で、人気アイドルになった元教え子の少年と再会するんだけど、その教え子からこてんぱんにやられちゃいます。なぜなら、松尾はその教え子のことを「パッとしない子」として認識していたから。パッとしなかった少年が大人気アイドルとなって、自分をぞんざいに扱った教師に復讐するんです。怖い怖い。でもいたよね、目立つ生徒ばっかり可愛がる教師って。しかもそういう奴ってだいたい若いきれいな女の教師に多い。私にも思い当たる教師が複数名おりますね。
 私が教員になったばかりの時、「目立つ子なんかかわいがらなくていいの。目立たない子にスポットを当てるのが私たちの仕事よ」と言ってくれた先生がいましたが、その言葉とともに、この短編を世の中の調子に乗っている若い美人女教師に送りたいと思うのでありました。
 短編の「ママ・はは」もいいです。毒母の思考回路ってこんな感じか。

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