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卒業マジック

卒業間近の教室で大半の人がかけられるマジック。卒業マジック。
卒業アルバムが配られる頃、じわじわと教室の雰囲気を支配していくこの魔法の力は凄まじい。今までたいして仲良くなかった、話さなかった人と急に「私たち、友達だったよね!」
なーんて空気感を漂わせ、別れを惜しむ。

卒アルの後ろにあるメッセージ欄には、大人になってしまえば忘れてしまう顔、声、名前をした、ただのクラスメイトからの「一年間ありがとう!」「またいつか会おうね!」という、心にもない言葉たちが並んでしまう。本当に大事な人がくれた言葉がそれらで隠されてしまう気がしてならない。本当に仲が良かった友人と、これからも仲良くしよう!という契りを交わす。

今はまだ、新しい世界に飛び込み、一つも二つも成長した未来の自分たちには今と変わらぬ絆があると思っている。そして、その絆はいつからでも紡ぎ続きなおせると、いつまでもそのままの変わらぬ姿でそこにあると、信じている。そんな、今からは想像も妄想さえもおぼつかない未来の話をしている時が結局、一番楽しい。

でも、この魔法がいいように作用することだってある。勉強もまともにせず、笑って毎日を過ごしていた愛らしいバカが、「このクラスでよがっだーー」なんてガラにもなく涙し、お世話になったけど、私たちを一度も褒めてくれなかった人が、手のひらを返して、人格が変わったかのように私たちを讃え、これからの人生で大切なことを全力で伝えてくれる。背中を押してくれる。

最後になってからでないと、気がつけないことばかりで嫌になる。でも、この経験が次の始まりの糧になるのだろう。


そう、思っていたい。

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