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55年以上前の「一夜」が<今>を照射する:映画評「あの夜、マイアミで」

1964年2月、カシアス・クレイ(モハメド・アリ)が世界チャンピオンとなった夜に、この4人(カシアス、マルコムX、サム・クック、ジム・ブラウン)が集まって祝勝会をしたのが史実のようです。
…とはいえ、こんな会話をかわしたとは思えませんな。
これはその<史実>を舞台にした、フィクション。
元は戯曲のようです。


地味な話やなぁ
…と事前情報で思ったんですが、見始めると全然そんなことがなくて、グイグイ引き込まれます。
会話メインのストーリーなのに、かなりドラマチック。
その会話の中から、彼らそれぞれが抱える<人生>が浮かび上がり、そこに「公民権運動」への黒人の様々なアプローチが重なり、それがBL M等の<今>の黒人人権運動を照らし出すという…。
意欲的で、それでいてエンタメ性もある、なかなかの作品です。
2時間弱、ドップリはまりました。


エンタメなので事前知識なしでも楽しめます
…と言いたいところですが、さすがに4人の伝記的な知識はあったほうがいいです(Wikipediaで十分)。
「ジム・ブラウン」については僕は全然知らなかったんですが(NFLの伝説的な選手で、存命なのは彼だけです)、「人権運動」に一定の距離のある彼のキャラは、それなりに重要なポジション。
サム・クックの音楽ビジネスでのポジションや、マルコムXとカシアス・クレイ(モハメド・アリ)の関係(以降も含め)も押さえておいたほうがいいですね。

そして何よりサム・クックの「 A Change is gonna come」。
マルコムXの表情との被りには、グッと込み上げてくるものがありました。


ポリティカル・コレクト的に「黒人人権運動」「公民権運動」を語るのではなく、黒人間でのポジションや考え方のずれや、活動に関わるものの自意識のあり方(ジム・ブラウンがマルコムを問い詰めます)等にまで踏み込んでるところが本作の「現代性」でしょう。
(黒人社会における「男女差別」の問題とかにも踏み込めば…とも思ったんですが、それじゃ論点が増えすぎるかな?サム・クックやジム・ブラウンの描き方には、ちょっとそう言う面も含ませてますが)


Amazon original movie。

Netflixだけじゃなく、Amazon、Apple、Disneyも負けてませんな。
観る側としては嬉しい話ではありますが、映画館は厳しいわなぁ。
(とはいえ、ミニシアターで上映するよりは多くの人が見るんじゃないでしょうか?僕の個人的意見としては、この手の作品は「ミニシアター上映+ストリーミング配信」がベストだと思います)

#映画評
#あの夜マイアミで
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#one_night_in_miami

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