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常連認定。


わたしはたいがいコソコソしている。
店などに入っても自らすすんでコミュニケーションを取らずにステルス機能を働かせていることが多いので仮に同じお店へ通い続けていてもいわゆる「常連」と認定されにくい。いい加減、見知らぬ人との出逢いも自然体で楽しめる大人になりたいと一応思ってはいるのだけれど。

ある時職場近くに丸亀製麺が開店した。
職場のある地域は飲食店の選択肢が少なくて、丸亀製麺オープンの知らせを聞きつけた時には狂喜乱舞した。以来週3くらいの勢いで通い続けている。

通い始めて1年くらい経った頃のことだっただろうか。いつものように昼時の長蛇の列に加わって勘定を済ませた時、レジのおばさんに「いつもありがとうございます!」と挨拶された。

ラブストーリーのみならず、常連認定は突然に。(古)
突然訪れた、まさかの常連認定@丸亀である。私は耳を疑った。
この店でも普段通りそれなりのステルス機能を働かせてきたつもりだったし、なにしろここは幹線道路沿いに建つ駐車場付の路面店。客にしろスタッフにしろ人の出入りは相当量、さらに言うまでもなく大手セルフうどんチェーン店だから対面接客時間も極力限定されているはず、なのに何故?
その後うどんを啜りながらしばらく悩んだ。もしかしたらあのレジのおばさんは非常に優れた顔認識能力の持ち主なのかもしれないなどと考えたりもしてみたが、1年以上同じ店に週3で通っていたらそりゃ顔も覚えられることもあるだろうし、立派な常連だ。と自分を納得させたものの動揺は収まらなかった。

考えてみれば、常連認定なんてナイーブな人間関係の上に現れる蜃気楼のようなもの。ここからは常連、なんて線引きはなく、他のスタッフにしてみたらわたしはまだ常連ではない可能性も大いにある。そんなゆらゆらとした空間であのおばさんはわたしのことを「いつも」来ている客(彼女のことをおばさん呼ばわりしてしまっているが、わたしだっておばさんである)といち早く認めてくれたのだからありがたいことだ。
ただ、年末のガラポンくじに当たったわけではないので、公衆の面前で声高らかに宣言せずともそこはおばさん同士、私にだけわかるようそっと認定して欲しかった。。。


その後、そのおばさんがレジ担当の時には必ず「いつもありがとうございます」と挨拶してくれるようになったことは言うまでもなく、別のスタッフからも「いつもありがとうございます」の称号をいただいた。今ではこちらもすっかり慣れて自他共に常連認定と相成ったのだ。めでたしめでたし。

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