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書記が法学やるだけ#29 留置権,先取特権,質権,譲渡担保

問題


解説

担保物権とは,他人の持っている物を自分の債権の満足を確保するために処分する権利であり,法定担保物権(留置権・先取特権)約定担保物権(質権・抵当権)に分けられる。担保物権の効力には優先弁済的効力・留置的効力・収益的効力があり,通有性には付従性・随伴性・不可分性・物上代位性がある。

(1)誤り他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる(留置権,295条)。ここで,債権と物との牽連性が認められるかどうかは判例による。例えば最判昭47.11.16判例によると「甲(A)所有の物を買受けた乙(B)が、売買代金を支払わないままこれを丙(C)に譲渡した場合には、甲(A)は、丙(C)からの物の引渡請求に対して、未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。」とあり,この場合は債権と物との牽連性が認められる。なお,留置権は優先弁済的効力・収益的効力・物上代位性を有しない

(2)誤り:留置権者は,善良な管理者の注意をもって,留置物を占有しなければならず,債務者の承諾を得なければ,留置物を使用し,賃貸し,又は担保に供することができない。留置権者がこれに違反したときは,債務者は,留置権の消滅を請求することができる(298条)。

(3)正しい:給料債権などの特に保護すべき債権を有する者について,先取特権者は,その債務者の財産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する(先取特権,303条)。先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる(物上代位,304条)。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならないなお,先取特権には留置的効力・収益的効力を有しない

(4)正しい質権者は,その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し,かつ,その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する(質権,342条)。質権は目的物の種類に応じて動産質・不動産質・権利質に分類される。動産質権者は,継続して質物を占有しなければ,その質権をもって第三者に対抗することができず(352条)、また,質物の占有を第三者によって奪われたときは,占有回収の訴えによってのみ,その質物を回復することができる(353条)。なお質権について,収益的効力は不動産質権のみ有する

(5)正しい譲渡担保とは,債権者が債権担保の目的で所有権をはじめとする財産権を債務者または物上保証人から法律形式上譲り受け,被担保債権の弁済をもってその権利を返還するという形式をとる担保方法である。その中で集合動産譲渡担保とは,動産の集合体を対象とした者であり,対抗要件は引渡しである(178条)。


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