「鳥の詩」楽曲分析(書記が音楽やるだけ#34)

時として「国歌」として形容されることがある楽曲が気になったので。

参考にした分析の先例:



楽曲情報

歌唱:Lia

作詞者:麻枝准

作曲者:折戸伸治

編曲:高瀬一矢

「鳥の詩」は,2000年にKeyから発売されたゲーム『AIR』の主題歌である。Lost Withnessの「Red Sun Rising」をモチーフとした曲であり,『AIR』の家庭用ゲーム機移植版やテレビアニメ版でも主題歌として使われている。


全体構成

※調については後述

イントロ→サビ→

(1番)Aメロ→Bメロ→サビ→間奏

(2番)Aメロ→Bメロ→サビ→間奏

→サビ→アウトロ

なんといっても場面ごとの転調が特徴的だ。まずは全体像を五度圏から見てみる。

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隣り合わせなら共通のダイアトニックコードを挟んで自然に転調できるのだが,本曲は1つあるいは2つ飛んでの転調同主短調あるいは同主長調)。こうなると明らかに調の違いが感じられる。


サビ

メロディ,上昇と下降の流れが滑らか。

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コードは4小節単位で繰り返し。「671」が基本である。更にメロディを照らし合わせると,7thがどこか沈んだ感じを与えている。

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サビの終わりは,sus4的な解決を2度繰り返す。ここの「♭Ⅶ/Ⅰ」がいい味を出している。また,sus4とくれば解決先にメジャーを期待するかもしれないが,ここではマイナーとなっている,あくまでサビの中では軸をずらさないといったところか。

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しかし,崩されたかと思った期待が転調に生きてくる。仮にサビ末尾でBとすると,AメロのE(G# minor)にすんなり繋がる,というのもダイアトニックコードを共有しているため。sus4で期待させたBは実際には現れないが,転調の橋渡しとしては機能するのである。

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Aメロ

上下の動きは少なく,付点のリズムが多い。

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ここでも「671」の繰り返し。ただ,冒頭メロディの音は第3音であり,サビに比べて浮いた感じがする。

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AメロからBメロの転調,聞こえとしては長2度上昇といった感じ。コード全体は上昇しながらも,メロディは半音下降を取るのも面白い。

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Bメロ

Bメロのメロディはサビに近い形で,より穏やかな変化。12小節+4小節で転調しているのもポイント。

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サビに近い,というのはメロディの音が7thであることからも言える。一方で,コードは「6545」と変化し,1は出てこない(6は1の代理なので全く無い訳ではない),こうなると解決感が不足するようになる。

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さてBメロ内での転調。今まで五度圏でいうと左回転を2回していたのに対し,ここで急に反転する。ここはA♭→Aという半音上昇が生じており,より緊張を高める。

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サビ前は「671」の変形Ⅴによりドミナントを一層強める

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そして上がるのかと思いきや下がるのである。やがてサビ冒頭の落ち着いた感じへと着陸する。

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本曲ではセカンダリードミナントをはじめとした,いわゆる部分転調はほとんど見られない。代わりに場面ごとに色彩を割り当てるように,はっきりとした転調を与えている。


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