書記の読書記録2024.8.10『計量言語学入門』

伊藤 雅光『計量言語学入門』のレビュー

計量言語学入門

レビュー

計量言語学（けいりょうげんごがく、Quantitative linguistics）は、一般言語学（より具体的には計算言語学）の下位分野であり、自然言語の構造だけでなく、言語学習、言語変化、応用を扱い、統計的手法を駆使して言語を調査する。その最大の目的は、言語法則の定式化であり、最終的には、相互に関連する一連の言語法則という意味での言語の一般理論の定式化である[1]。synergetic linguistics は当初からこの目的のために特別に設計された[2]。計量言語学は、言語統計の結果に経験的に基づくものである。この分野は、言語の統計または任意の言語対象の統計として解釈でき、実在する理論上の野心の的に必ずしも関連しているわけではない。言語学の他分野では、コーパス言語学と計算言語学が、重要な経験的証拠を与える。

計量言語学の全体像とExcelによる実装を含んだ教科書。

もくじ

まえがき

[第Ｉ部　理論編]

第１章　計量言語学とは何か

計量言語学の学問的な位置づけ
計量言語学と近接分野
計量言語学／コーパス言語学／数理言語学2／計算言語学
計量言語学の分野
言語単位の使用率の研究／文体の分析／言語の系統研究／方言区画の研究／社会言語学・言語生活の研究
まとめ
参考文献

第２章　計量語彙論の基礎

計量語彙論とは何か
語彙論と計量語彙論／語彙の質的構造と量的構造／語彙の分布の種類
　計量語彙論の基本概念
単語の数え方にかかわる基本概念―延べ語数と単位語、異なり語数と見出し語／単位語の集合にかかわる基本概念―素材テクスト・単位語集合・見出し集合・使用度数／見出し語の集合にかかわる基本概念―見出し語集合・語彙・語彙量／使用率
まとめ
参考文献

第３章　統計的調査法

これまで行なわれてきた語彙・用語調査
欧米語における用語調査／わが国における語彙調査
全数調査と標本調査
よい調査を行なうための五つの条件
語彙調査の作業手順
調査の企画／調査対象の選定／標本抽出の方法／どれくらいの標本を抽出すればよいか／単位語・見出し語の認定規則の作成／本文校訂／単位語の分割と見出し語別整理集計／五十音順と使用率順の語彙表の作成／統計解析
まとめ
参考文献

第４章　言語単位認定法

言語単位の認定問題
調査単位の認定
文法理論にかかわる問題／言語単位として自立語と付属語のどちらが優先されるか／単位の熟合度／臨時一語の問題／調査単位の長短の性格／調査単位の種類が多いことの問題点／本書で採用した「長い単位」について
集計単位の認定
単位の幅の基本問題／辞書の見出しの立て方と同語異語判別の関係／見出し語形のゆれに関する問題／可能動詞の問題／ら抜きことばの問題
欧米語の語彙表の現在の水準
大規模調査と語彙表の精度との関係
言語単位認定の重要性
まとめ
参考文献

第５章　見出し語情報認定法

見出し語情報とは何か
見出し語情報の付加作業の手順
見出し語の代表形
見出し語の代表形の基準／見出し語の代表形の表記
見出し語の正書法
見出し語の正書法の原則／送りがなの付け方が２種類ある場合／標準的な表記がひらがなの場合／外来語の場合
品詞情報の認定
どの文法学説の品詞体系を採用するか／品詞情報の種類
語種の認定
語種とは何か／語種調査における外国語の扱い方
まとめ
参考文献

第６章　データの整理法

見出し語情報ファイルのデータ整理
語彙表の作成
語彙表の構成／使用順位の決定法／使用率分布図と累積使用率分布図の作成
度数分布表と度数分布図の作成
まとめ
参考文献

第７章　統計的分析の手法

基本統計量
代表値／散布度
推定
母集団の大きさが推定できないほど膨大な量の場合／母集団の大きさが推定できる量の場合
検定
検定の原理／検定の手順と用語／カイ二乗検定(1)―適合度の検定／カイ二乗検定(2)―独立性の検定
まとめ
参考文献

[第II部　実践編]

第８章　パソコン演習１――『銀河鉄道の夜』の入力と加工

パソコン演習の方針
素材テクストの特徴
パソコン演習のための準備
［銀河10］―プレイン・テキストファイルの作成
［銀河20］―単位語テキストファイルの作成
［銀河30］―［］付き単位語テキストファイルの作成
［銀河40］―見出し語テキストファイルの作成
［銀河50］―【】付き見出し語テキストファイルの作成
［銀河60］―正書法付き見出し語テキストファイルの作成
［銀河70］―縦長データ形式へのファイル整形
［銀河80］―品詞付き見出し語テキストの作成
まとめ

第９章　パソコン演習２――『蜘蛛の糸』の入力と加工

［蜘蛛10］―プレイン・テキストファイルの作成
［蜘蛛20］―単位語テキストファイルの作成
［蜘蛛30］―［【】］付き単位語テキストファイルの作成
［蜘蛛40］―縦長データ形式へのファイル整形
［蜘蛛50］―見出し語テキストファイルの作成
［蜘蛛60］―正書法付き見出し語テキストファイルの作成
［蜘蛛70］―品詞付き見出し語テキストの作成
まとめ

第10章　パソコン演習３――『吾輩は猫である』の入力と加工

［吾輩10］―プレイン・テキストファイルの作成
［吾輩20］―単位語テキストファイルの作成
［吾輩30］―［【】］付き単位語テキストファイルの作成
［吾輩40］―縦長データ形式へのファイル整形
［吾輩50］―見出し語テキストファイルの作成
［吾輩60］―正書法付き見出し語テキストの半自動作成
［吾輩70］―品詞付き見出し語テキストの半自動作成
まとめ

第11章　パソコン演習４――『最後の一句』の入力と加工

［最後10］―プレイン・テキストファイルの作成
［最後20］―単位語テキストファイルの作成
「単位半自動分割」とは何か／「単位半自動分割」の基本的な考え／単位半自動分割の実行／正しい分割と誤った分割の観察／間違いの訂正
［最後30］―［【】］付き単位語テキスト１（横長データ形式）
［最後40］―［【】］付き単位語テキスト２（縦長データ形式）
［最後50］―見出し語テキストファイルの作成
［最後60］―正書法付き見出し語テキストの半自動作成
［最後70］―品詞付き見出し語テキストの半自動作成
まとめ
参考文献

第12章　パソコン演習５――延べ語数の品詞構成比率の計算

品詞構成比率の計算
『銀河鉄道の夜』の品詞構成比率１――延べ語数
『蜘蛛の糸』の品詞構成比率１――延べ語数
『吾輩は猫である』の品詞構成比率１――延べ語数
『最後に一句』の品詞構成比率１――延べ語数

第13章　パソコン演習６――異なり語数の品詞構成比率の計算

『銀河鉄道の夜』の品詞構成比率２――異なり語数
『蜘蛛の糸』の品詞構成比率２――異なり語数
『吾輩は猫である』の品詞構成比率２――異なり語数
『最後の一句』の品詞構成比率２――異なり語数

第14章　パソコン演習７――Excel で円グラフをつくる

『銀河鉄道の夜』の円グラフ作成
その他のグラフの作成

第15章　パソコン演習８――Excel でドーナツグラフをつくる

『銀河鉄道の夜』のドーナツグラフ作成
その他のグラフの作成

第16章　パソコン演習９――Excel で自動的に語彙表をつくる１（作業の概略と語彙表の原データの作成）

作業の概略
見出し語情報の加工
語彙表の原データの作成

第17章　パソコン演習10――Excel で自動的に語彙表をつくる２（度数順の語彙表の作成）

延べ語数の自動計算と異なり語数の読み取り法
見出し語度数のパーセンテージの計算
３種類の全体順位を入れる
語彙表にするための整形

第18章　パソコン演習11――Excel で自動的に語彙表をつくる３（五十音順と品詞順の語彙表作成）

五十音順の語彙表の作成
品詞順の語彙表の作成

第19章　パソコン演習12――語彙表の整形

度数順語彙表の整形
語彙表のレポートや論文への取り組み
その他の語彙表の作成

第20章　パソコン演習13――応用編（読者が選んだ小説の語彙調査）

選んだ小説の見出し語情報付きテキストファイルの作成
延べ語数の品詞構成比率の計算
異なり語数の品詞構成比率の計算
Excel で円グラフをつくる
Excel でドーナツグラフをつくる
Excel で語彙表をつくる１――語彙表の原データの作成
Excel で語彙表をつくる２――度数順の語彙表の作成
Excel で語彙表をつくる３――五十音順と品詞順の語彙表の作成
語彙表の整形
語彙表作成関係のファイルリスト

[第III部　分析編]

第21章　語彙の計量的分析１――広範囲語と高頻度語の性格

語彙表の基礎的な分析
広範囲語の分析
広範囲語の性格
少量データによる疑似的分析の意味
高頻度語の性格
まとめ
参考文献

第22章　語彙の計量的分析２――延べ語数による品詞構成比率の分布法則

品詞構成比率の種類
品詞構成比率の傾向性の分析
品詞構成比率の分布法則の発見
計算練習
まとめ
参考文献

第23章　語彙の計量的分析３――異なり語数による品詞構成比率の分布法則

品詞構成比率の傾向性の分析
大野の法則１（原版）
大野の法則２ a （水谷の改訂版 a）
近似式の計算方法
近似式の計算練習
大野の法則２ b （水谷の改訂版 b）
まとめ
参考文献

第24章　語彙の計量的分析４――語彙の量的構造とは何か

語彙の量的性格と語彙の量的構造
語彙の量的構造の種類
語彙体系の量的構造と語彙運用の量的構造
伝統的言語学の記述法と計量言語学の記述法
数式の精密化
今後も期待できる新しい品詞構成比率の分布法則の発見
まとめ
参考文献

演習・応用問題 解答
７章補説
索引

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