マガジンのカバー画像

書記の読書記録まとめ

1,279
今までに読んだ本についてのレビュー。 ブクログ:https://booklog.jp/users/9512a62a15b04973
運営しているクリエイター

#音楽

書記の読書記録#1230『音楽と建築』

ヤニス クセナキス(訳:高橋 悠治)『音楽と建築』のレビュー レビュー古代ギリシャをはじめとした音楽の代数構造,建築との関連などが書かれている。電子音楽の過渡期を知る上では重要性の高い著書。 もくじ音楽(確率論と作曲;三つのたとえ;メタミュージックに向かって;音楽の哲学へ) 建築(フィリップス展示館―建築の夜明け;「電子的運動表現」覚書;宇宙都市;見るための音楽“ディアトープ”) 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#1056『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)』

岡田 暁生『音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)』のレビュー レビューさまざまな音楽批評の事例から,音楽の聴き方および語り方について解剖する本。主張自体は無難なものが多いものの,巻末の読者案内を始め単純に勉強になる内容が多い。 もくじ第1章 音楽と共鳴するとき―「内なる図書館」を作る(音楽の生理的次元;相性のメカニズム ほか) 第2章 音楽を語る言葉を探す―神学修辞から「わざ言語」へ(「鳴り響く沈黙」とドイツ・ロマン派の音楽観;神の代理人としての音楽批評 ほ

書記の読書記録#764『音と音楽の科学』

岩宮 眞一郎『音と音楽の科学』のレビュー レビュー一つ一つのテーマについて軽く触れた程度の読み物,後ろ3章(映像メディアにおける音の役割,第9章 サウンドスケープ,第10章 音のデザイン)については入門としては使えるか。 もくじ第1章 音と聴覚のしくみ 第2章 音の物理と心理 第3章 音楽のしくみ 第4章 音の空間性 第5章 オーディオ機器の歴史と原理 第6章 楽器の分類とそのしくみ 第7章 電子楽器からDTMへ 第8章 映像メディアにおける音の役割 第9

書記の読書記録#245「中世・ルネサンスの音楽」

皆川 達夫「中世・ルネサンスの音楽」のレビューと読書記録 レビュー音楽の歴史との対応を確認するのによい入門書。巻末には地図や年表などがまとめられており親切な構成。 読書記録# 1p9〜74 ・古代ギリシアの音楽・東方教会聖歌・3つのムジカ・グレゴリオ聖歌,ミサの聖歌・8つの旋法・ネウマ・典礼劇・ダニエル劇・「カルミナ ブラーナ」・トルバドゥール歌曲・ミンネゼンガー・「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 # 2p75〜128 ・多声音楽の起源・オルガヌム・トロープス・ノ

書記の読書記録#208「一般音楽論」

清水 響「一般音楽論」のレビューと読書記録 レビュー初学者向けに,音楽に関連する学問の全体像を捉えようという本で,意欲作なのは間違いないが中途半端で特に使い道が浮かばなかった。広く浅くなのはそうなのだが,いくらなんでも浅すぎる。 読書記録# 1p14〜90 ・長音階・短音階:和声的,旋律的・和音・和声進行・調の選択・転調・調性外の音高 # 2p91〜348 ・拍,拍子・テンポ,BPM・複合拍子,混合拍子,可変拍子,ポリリズム,ヘミオラ・テクスチュア・モノフォニーと教会旋

書記の読書記録#194「音楽とは何か」

田村 和紀夫「音楽とは何か ミューズの扉を開く七つの鍵」のレビュー レビューそもそものところ,音楽とは何物なのだろうか。本書は,7つのキーワード(魔法,システム,表現,リズム,旋律,ハーモニー,コミュニケーション)をもとに,音楽学のみならず多様な視点から音楽を語る。音楽についてあまり知らない人でも,自分の気になる音楽について考えながら読むだけでも面白いと思う。 メモ ・音楽の描写能力の限界,音楽を説明する歌詞,音楽と歌詞の交差 ・踊りとリズム,身体運動を音化する ・音域の

書記の読書記録#82「わたしたちに音楽がある理由 音楽性の学際的研究」

今井恭子(編著)「わたしたちに音楽がある理由 音楽性の学際的研究」のレビューと読書記録 レビュー本書は音楽性の研究についての論文のまとめのような体裁をとっている。内容としては,主に霊長類からみた音声コミュニケーションの発達,乳幼児の音楽性の発達と教育(コミュニカティヴ・ミュージカリティ)が中心となっている。 本書のキーとなるのは「絆の音楽性:つながりの基盤を求めて」という訳書であろう,合わせて読むとよいと思う。 読書記録# 1p3〜64 ・咽頭の形態・発生運動学習の困難

書記の読書記録#73「音楽の秘密を形式からひも解く 名曲の設計図」

青島広志「音楽の秘密を形式からひも解く 名曲の設計図」のレビューと読書記録 レビュー音楽学のうち「楽式論」についての本で,アナリーゼを簡略に行ってもいる。記述が明快で読みやすいが,楽曲分析となると中々読むのが大変だった。最初は1部形式から始まって,変奏曲,ロンド,ソナタ,カノン,フーガにまで話が伸びる。 読書記録# 1p6〜72 ・音高と音の長さの変換→動機・重心・小楽節,大楽節・1部形式,2部形式,3部形式・複合3部形式:メヌエット,トリオ,ファンファーレ,ダカーポアリ

書記の読書記録#59「音楽のリズム」

M.リュシー著「音楽のリズム」のレビューと読書記録 本書はM.リュシー「音楽のリズム」をもとに,要約者E.ドゥトワ,編集者にE.フォールス翻訳者に飯島かほる,監修者に稲森訓敏により出来ている。 レビュー西洋音楽における三要素として,一般に音楽は「リズム」「メロディー」「ハーモニー」の三要素からなると考えられている。 リズムの理論として,リュシーメソッドというものがある。リズムやアクセントにも種類があり,それらをうまく使うことで演奏効果が出るのだろう。 本書では,リュシ

書記の読書記録#35「音楽の基礎」

芥川也寸志「音楽の基礎」のレビューと読書記録 レビュー芥川 也寸志(1925年7月12日-1989年1月31日)は,日本の作曲家,指揮者であり,日本の近代音楽を牽引してきた人物の1人である。 本書の内容自体は黄色い楽典に書いてあるようなもので,筆者によるたとえが快活である。また,ただ単に理論を知るだけでなく,それが成り立ってきた歴史的背景についても触れられている。 読書記録# 1p1〜85 ・静寂が音楽の基礎・音:高さ,長さ,強さ,音色・倍音・記譜法の歴史と変化・音名・

書記の読書記録#34「音楽・数学・言語 情報科学が拓く音楽の地平」

東条敏,平田圭二「音楽・数学・言語 情報科学が拓く音楽の地平」のレビューと読書記録 レビュー音楽の意味の考察として,言語学の知見や数理モデルの発想を用いる。メインとなるのは,生成的音楽理論の代表としての暗意-実現モデルやGTTMである。人工知能の興亡の最中にある現代において,音楽について再考を求められている。 (音楽理論の都合上仕方ないが)天下り的な発想が多く,音楽理論に慣れてないととっつきづらいかもしれない。ただ,この分野のテキストはそれだけで貴重で価値あるものだと思う

書記の読書記録#25 メシアン「音楽言語の技法」

オリヴィエ・メシアン(細野孝興訳)「音楽言語の技法」のレビューと読書記録 レビュー本書は作曲家自身による,自らの音楽の理論について書かれた本である。キーワードは「不可逆リズム」と「移高が限られた旋法」。 こればかりは読み切れたとは言い切れないと断言できるので,残りはメシアンの作品の案内をするにとどめておく。 極めて特徴とされる作品(巻末より)を以下に列挙する,予め聴き込んでおくことで理論の方向性がわかりやすくなると思う。 ピアノ曲:Visions de I’Amen