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書記の読書記録まとめ

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今までに読んだ本についてのレビュー。 ブクログ:https://booklog.jp/users/9512a62a15b04973
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2021年1月の記事一覧

書記の読書記録#77「楽曲の分類から表現に導く 名曲の完成図」

青島広志「楽曲の分類から表現に導く 名曲の完成図」のレビューと読書記録 レビューこちらに続き,楽式論の入門書。 今回は楽曲の分類から分析をする。大まかには「演奏会用器楽曲」「実用器楽曲」「演奏会用声楽曲「宗教的な声楽曲」「劇場用作品」「民衆のための音楽」に分けられる。後半では近年の音楽の発展や楽曲分析の方法の説明もある。 読書記録# 1p9〜90 ・単一楽章:序曲,前奏曲,間奏曲・即興性:即興曲,幻想曲,トッカータ,エチュード・感情表現:カプリッチョ,スケルツォ,ブルレ

書記の読書記録#76「アメリカひじき・火垂るの墓」

野坂昭如「アメリカひじき・火垂るの墓」のレビュー レビュー1968年出版,第58回直木賞受賞作。「焼け跡闇市派」の金字塔ともいえる作品である。 「火垂るの墓」:戦時を駆け抜けた者による,その過程で犠牲になった者たちへの鎮魂歌。作者の自伝要素もあるそうだ。曳光弾はほんのわずか向こう側でありながらも,生命の切迫すら感じされる文章。蛍は確かに印象的だ。削られた社会について一切の妥協なしに書いたもので,単なる反戦のプロパガンダではない。 「アメリカひじき」:戦後のアメリカ兵がう

書記の読書記録#75「ギルガメシュ叙事詩」

矢島文夫(訳)「ギルガメシュ叙事詩」のレビュー レビュー本書は1965年に出版され,のちに1998年に文庫化に伴って増訂されたものであり,「ギルガメシュ叙事詩」研究の一つの到達点を示している。 先に同著書の「メソポタミアの神話」を読んであらすじをおさえておくと読みやすいと思う。 あるいは,岡田明子/小林登志子「シュメル神話の世界」で神話の周辺知識を収集しておくのもよい。 「ギルガメシュ叙事詩」について,現在残っているのは全体の約半分のみである。また破損箇所も沢山あり復

書記の読書記録#74「メソポタミアの神話」

矢島文夫「メソポタミアの神話」のレビュー レビューメソポタミアの代表的な古代民族であるシュメール人/アッカド人/ヒッタイト人による神話のあらすじを紹介する本。この辺の神話はさまざまなファンタジー作品にも登場することから馴染みのある人も多いだろう。 大まかなもくじとメモ: Ⅰ 天地創造の神話 ・人間と農牧のはじまり(シュメール):大神たちとアヌンナキの神々 ・バビロニアの創世記(アッカド):アプスーとムンム,女神ティアマト,マルドゥークの怪物退治,バーブ・イル(神の門;バ

書記の読書記録#73「音楽の秘密を形式からひも解く 名曲の設計図」

青島広志「音楽の秘密を形式からひも解く 名曲の設計図」のレビューと読書記録 レビュー音楽学のうち「楽式論」についての本で,アナリーゼを簡略に行ってもいる。記述が明快で読みやすいが,楽曲分析となると中々読むのが大変だった。最初は1部形式から始まって,変奏曲,ロンド,ソナタ,カノン,フーガにまで話が伸びる。 読書記録# 1p6〜72 ・音高と音の長さの変換→動機・重心・小楽節,大楽節・1部形式,2部形式,3部形式・複合3部形式:メヌエット,トリオ,ファンファーレ,ダカーポアリ

書記の読書記録#72「エロ事師たち」

野坂昭如「エロ事師たち」のレビュー 「戦後文学の現在形」にて紹介された本。 レビューお上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の美しきまぐわいやオーガズムなんぞどこ吹く風、ニッポン文学に永遠に屹立する傑作。 名前は知っていたが,野坂昭如の

書記の読書記録#71「シュメル神話の世界」

岡田明子/小林登志子「シュメル神話の世界」のレビューと読書記録 レビュー今もなお有名なものとして「ギルガメッシュ叙事詩」や「大洪水伝説」があるが,シュメル神話は他にもたくさんあり,この時代から既にここまでの物語の豊穣を成していたとなると驚きである。 本書はシュメル神話の研究と解説の本であり,ギルガメッシュ叙事詩のみならず幅広くシュメルを知りたい人にちょうどいい。 主な神話: 「エンキ神とニンマフ女神」ー創造神話 「大洪水伝説」 「エンキ神とニンフルサグ女神」ー楽園

書記の読書記録#70「システム障害対応の教科書」

木村誠明「システム障害対応の教科書」のレビューと読書記録 レビュー本書は、金融系業務システムなどの開発・保守運用に携わり、多くのシステム障害対応を経験してきた著者が、障害対応の現場で必要な知識を体系的にまとめ、わかりやすく解説した1冊です。障害対応時の基本動作、現場マネジメント、必要なツールやドキュメント、効果的な教育・訓練など、ベテランが持つ経験や暗黙知に頼りがちだったさまざまなノウハウを文書化しました。 障害対応について,組織単位での共通認識が求められる中で,本書はそ

書記の読書記録#69「コンピュータの数学」

GRAHAM/KNUTH/PATASHNIK著「コンピュータの数学」のレビューと読書記録 レビュー扱っている話題:漸化式,Σ計算,ガウス記号をはじめとした整数関数,mod,素数,二項係数,特別な数,母関数,離散的確率,漸近近似 コンピュータ分野によく出る離散数学についての分厚い教科書。表紙にあるΣは,その肝となる概念で,事前に高校数学レベルの知識は欲しい。 完璧に読むのは難しいので,必要なトピックをつまみながらゆっくり埋めていく感じで読む予定である。 読書記録# 1p

書記の読書記録#68「よくわかるバイオインフォマティクス入門」

藤博幸「よくわかるバイオインフォマティクス入門」のレビューと読書記録 レビューバイオインフォマティクス (BI)の概念や手法などを広く知るには良い本だと思う。課題設定に悩んでいたり,実験するにはまだ知識が不安な人向け。データベースや機械学習について1章割いているのが個人的にはありがたい感じ。 読書記録# 1p1〜32 ・セントラルドグマ・変異と置換・遺伝的浮動・ホモログ:オーソログ,パラログ・配列DB・配列アラインメント:動的計画法・分子時計・遺伝子重複,ドメインシャッフ

書記の読書記録#67「古代メソポタミア全史」

小林登志子「古代メソポタミア全史」のレビューと読書記録 レビュー紀元前3500年の都市文明の始まりから,前539年の新バビロニア王国の滅亡までの,古代メソポタミアの歴史についての本。文明や人種,神話などの交差点であるメソポタミアの興亡の流れを辿る。 読書記録# 1p3〜82 ・ユーフラテス河,ティグリス河・大洪水伝説・メソポタミア,バビロニア,アッシリア・ウルク文化期→ジェムデットナスル期→初期王朝時代→アッカド王朝→ウル第3王朝・円筒印章・ウルク市・トークン,古拙文字,

書記の読書記録#66「ローマ帝国衰亡史 5」

E.ギボン「ローマ帝国衰亡史 5」のレビューと読書記録 レビューとうとう西ローマ帝国が滅亡する。混迷の時代。 ゴート族の王アラリックの登場とヴァンダル族のアフリカ征服,フン族の王アッティラによるガリア侵略と迎え撃つ将軍アエティウス,ヴァンダル族の王ガイセリックのローマ掠奪。 読書記録# 1p11〜107 ・アラリックのローマ進撃・ローマ貴族の風習・ゴート族の3度にわたるローマ包囲,ローマ掠奪・ゴート王アドルフスの和平,プラキディアとの結婚・ガリアとヒスパニアの革命・ヒス

書記の読書記録#65「進化計算アルゴリズム入門」

大谷紀子「進化計算アルゴリズム入門」のレビューと読書記録 レビュー最適化手法のうち,進化計算アルゴリズムについて取り扱っている。解表現と基本アルゴリズムについて示されており,C++での実装付きである。 本書で進化計算アルゴリズムについてどのような手法があるかを知ることができる。そもそもこの分野の本は少ないので,本書の意義は十分にあるだろう。ただそこから先の応用の記述は薄い。進化計算アルゴリズムのメリット/デメリットの軸の話が欲しいところ。 読書記録# 1p1〜106 ・

書記の読書記録#64「コンピュータ音楽 歴史・テクノロジー・アート」

C.Roads「コンピュータ音楽 歴史・テクノロジー・アート」のレビューと読書記録 レビュー訳本の出版は2001年と少し古い本ではあるが,ここまで網羅的な教科書は,ほかになかなか見つからないだろう。 コンピュータと音楽の融合はまだまだ可能性の広い,魅力的なテーマだと思う。 読書記録# 1p1〜67 ・周期的な波形・時間領域表現,周波数領域表現(スペクトル表現)・位相:周波数に依存した位相打ち消し・ADC,DAC・サンプリング周波数・エイリアシング・サンプリング定理・位相