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目的地はどこですか-すずころ日和 母-


こんにちは、皐月です。
今日もお立ち寄りいただきありがとうございます。

さて、あなたは目的地に1人で行けますか?


コレは行く場所にもよるかもしれませんね。
未知の場所や初めての所はやはり難しいかも。

でも、それがたとえば一年前に行った場所ならどうですか。

これは分かれると思う。
行けるよ、というか。
全然わかんない。かというか。

ちなみに私は「行けるよ」です。たとえ記憶怪しくても地図見れば思い出すし、地図みて動くもできます。


先日、母に頼まれて甥っ子の発表会に行った。
場所は某ショッピングビルの中にあるホール。
ちなみに私はビルは知っていますが、大改装後の中は初めて。

ビルの中の立体駐車場に車を入れてから、エレベーターの前に歩く。
そこには1〜8階までの案内看板が。

8階Aホール
7階Bホール、Cホール
6階Dホール

ん?どこだろうか。それっぽいものがいくつかある。

私「ねぇ、何階のどこ?」
母「えー、ちょっと待って…」

母は一年前に1人で来たという場所だ。
彼女はスマホを見ながら言う。

「あのね、たしかね。どこか一ヶ所からは入れないところなの」

……⁈
その情報だけでどうしろと???

「いや、何階かもわからないのにその情報いらないよね」
「いや、だってね。行ける、と思ったらいけなかったことは覚えてるのよ」

だーかーらー

何階なのか?
ホールの名前は?

東西南北のどこから入れないかさえも定かで無いどこか一ヶ所からは入れないホール。

その情報が活かせる場所なんてないわ。
そして、せめて入れた情報をくれ。

仕方なく、母のスマホの画面を見る。
姉が送ってくれたチラシの画像。そこには真ん中にはっきりとあった。

場所:6階Dホール

コレだよ!この情報だけでいいんだよ。
コレで行けるよ!

なんで?どうしてチラシ見ながらさっきの回答になるのか。

「えー、だってね。行けると思ったら入れない!ってびっくりしたことだけ覚えてるんだもの」

記憶を聞いたのでは無いよ、母さん。
チラシの情報を聞いたんだよ。
いったい貴女はどこにどうやって行くつもりなのか。

母は昔から方向音痴だ。
中高生の頃、母の運転する車に乗っていると、あ、と悪い予感を感じる。

「ねぇ、母さん」
「え?なあに?」
「また、前の車について行ってるでしょう」
「……だって、道わかんなくなったのよねぇ」


これは日常だった。
曲がり損ねたりしていつもと違うルートに入ると途端に道がわからなくなる。そして、彼女は平然を装いとりあえず前の車について行く。という、恐ろしい選択をなぜかいつもするのだ。

この習性がある為、慣れた道でもたまたま前の車が二、三台連続で左折とかするとそちらについて行く。

方向音痴の自覚があるため、勝手に前を走る車の方が正しい。という、なぞの思考を爆発させる。

いや、横に私いる時くらいは聞いてくれ。

前の車が同じ場所を目指すなんて、無い方が圧倒的に多いわ。むしろ奇跡級だわ。

なので。
いつもナビをしていた。前の車について行こうとしないように。

カーナビなんて付いていない昔の軽自動車。
家に帰るだけだから、来た道を戻るだけ。とかつい油断したときには、大体さっきのような会話になってしまう。

分からなかった。
なぜ、来た道を戻る。こんな簡単なことができなくなるのか。

そして今回。
久しぶりに母の場所に関する珍回答。
そもそも会話が成立していない。

天気を聞いたら、朝食のしかも感想だけ答えられた。

みたいな。

なぜなんだ。
そんな母は70を超えた。無事に甥っ子(母には孫)の発表会も観ることもできた。
終わった後、母はご満悦だった。

不思議に思う。
こうやって、圧倒的弱点があっても目的地にいける彼女。
こういう人には本人無意識にナビ人が設定される謎。

わたしは彼女が産んで育てたわけで。
なーんもできない赤ん坊だったわけで。
その時は母はまさかの東京の田舎でわたし達を育てていたわけで。
どうやって電車を見分けていたのか。目の前に来た電車に乗ろうとするお約束なのに。

世の中は不思議だらけだ。

で、年月がたって今はわたしは彼女をナビする人。

そんな母が、たまにうらやましい。


親子ということで、今日はちょっと強めの物言い。
なんで、親の前では子に戻るのか。

ま、年を重ねても永遠に親と子。
ババとオバになっても母娘。

今日も最後までありがとうございました。
では、また。

皐月

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