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思い出「神子の字」

展示用

【ミミズの運動会】


6歳の時
3か月に1度開かれる「硬筆展」という
字の上手さを競う展覧会があった。

この展覧会は
学年ごとに行われて
「金」「銀」「銅」と賞が取れる。

当然俺の字は
ミミズの運動会みたいな字を書き
毎回最下位争いに加わっていた。

最下位と言っても最下位賞なんて物は
特に用意されて無く
他の人と比べると明らかに
1番下手くそだろうと言う字だった。

俺は
字を書く時上手く書こうと腕が力んでしまい
余計な力がかかって全然上手に字が書けない。
フンガフンガフンガ(# `Д´)_φカキカキ

それ処か
しょっちゅう鉛筆の芯を折っている始末。
ボキ(# `Д´)_L  ヽ(#`д´#)ノムキャー

こんな状態だから
あっという間に鉛筆が短くなってしまい
授業中にもよく鉛筆を削っていた。

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【怪物】


俺は
凄く字が書くのが苦手で
特に漢字なんて大の苦手だった。

そんな中俺は
毎回硬筆展に自分の書いた文を出展させられて
みんなに下手くそな字を晒してた。
(;´д` )トホホ

俺にとっては
そんな硬筆展だったけど
なんと!毎回金賞を取る化け物がいた!
/(@`<‘‘‘‘ ‘ ゴォー

その人の名は
「千葉秋」さん。

しかも
明らかにダントツな字の上手さで金賞を取る。

その子の字は
どう見ても6歳の子の字じゃなく
明らかに大人と同じ字を書いていた。

もしかしたら
そこらの大人より全然字が上手だったかもしれない。

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【貴重な瞬間】


硬筆展で毎回金賞を取る千葉秋さんは
凄くおとなしくて全く誰とも会話をしない。

学校にいる間一言も話さない
不思議な子だった。
シーッ!! d(゚ε゚* )

授業で先生にさされて回答する時も
なかなか声を出せず
やっと声を出せても凄く小さい。

なので
その滅多に聞けない声を
みんな凄く貴重で珍しい瞬間だと感た。
( ♡ω♡)メズラシイ!

そんな状態だから
先生にさされて回答をする時
クラスの子達が一斉にその子が声を出す瞬間に
ワクワクし始める。

そして
千葉秋さんが声を出すと
凄く貴重な瞬間を味わえた気がして
みんな一斉に声が聴けた事に喜んだ。

千葉さんが声を出した授業が終わると
次の休み時間は
千葉さんの声が聴けた事の話題で盛り上がる。
キャッヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃キャッ

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【家と学校の違い】


クラスのみんなの千葉さんに対する接し方が
こんな腫物を触るような接し方だから
千葉さんも全然気持ちを開いてくれず
言葉も全く発しない。

しかし
こんな千葉さんでも家族と一緒にいる時は
普通に会話するらしい。

クラスの子の何人かが
母親と一緒に買い物してる姿を目撃して
学校で見せない別人の千葉さんを目撃していた。

その姿は
我々と変わらず普通に楽しく
母親と会話する姿だった。
(((o(*゚▽゚*)o)))

俺は
そんな姿を1度も見た事が無くて
全然ピンと来ない。

先生も家庭訪問に行った事があり
この事実を知っていたが
何をどうすれば良いのか解らない様だった。
(o'ω'o)ワカラン

しかし我々は
千葉さんのそんな姿にも
しばらくしたら慣れてしまい気にならなくなる。

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【駄々こね】


そして
再び硬筆展が開かれる事になり
学校で練習をする事になった。

俺は
千葉さんの圧倒的な字の上手さに憧れ
なんとしても同じ位上手な字を書いてみたかった。

そして俺は
物凄くゆっくりと字を書いて
出来るだけ千葉さんの字に近づけてみる。

でも
やっぱり全然字が上手く書けない。

そこで俺は
先生に「千葉さんみたいな字が書きたい~」
そう駄々をこねてみた。
ジョウズニヾ(≧Д≦)ノカキタイ

そうしたら
「これをなぞってみなさい」と
50音のひらがなが点線で書かれた紙をくれた。

先生が言うには
「この点線通りになぞって行けば
千葉さんみたいに上手な字が書けるよ」
そう言われてやってみる事にした。

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【直談判】


点線で書かれた紙をゆっくりなぞって行くが
それでも点線からはみ出て上手に書けない。

俺は
諦めずもっとゆっくり点線をなぞったが
それでも千葉さんみたいな字が書けない。
ε-(・д・`;)カケナイ…

でも
しばらくそのプリントをやり続けていたら
だいぶ千葉さんの字に近づいてきた。

しかし
1文字書くのに10分位かかってしまい
これじゃ硬筆展で実践するには
とても時間がかかりすぎて書ききれない。

俺は
千葉さんがあんな短時間で
大人以上に上手な字が書ける事が
不思議でならなかった。

そこで
千葉さんに直接聞いてみる事にした。
オシエテ!(屮゚∀゚)屮

そして千葉さんに
「どうやればあんなに上手な字が書けるの?」
そう聞いてみた。

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【神には勝てず】


俺が千葉さんに上手な字の書き方を聞いたら
やっぱり何も話してくれず
ず~っと何も答えてくれなかった。
(*´꒳`*)シ~ン

俺は
千葉さんに教えてもらう事をあきらめて
先生かくれた点線で書かれたひらがなの紙を
なぞって練習するしかなかった。

それから
硬筆展の練習を何日かしていたが
結局少しだけ字が上手になっただけ。

千葉さんの字には
到底程遠いミミズが運動会している字だった。
(*´Д`*)アァ~ゥ~

そんな状態のまま
また硬筆展が開かれた。

結果は
当然最下位争いの字しか書けず終了する。

そして硬筆展で書いた字は
廊下に飾られて先生が賞の審査をした。

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【才能の差】


硬筆展の審査の結果
当然千葉さんの字が金賞を取っていた。

しかも
銀賞の人と圧倒的な実力差で
金賞を取っていた。

その実力差は
子供の我々が見ても明らかな違いがあった。
∑(゚Д゚)スッ、スゲー!!

俺は
このとてつもない次元が高い文字に
とてもかなわないと唖然として眺めてた。

千葉さんは
もう神か怪物と認めざる得ない。

その後も俺は
結局千葉さんの神文字に近づく事なく
相変わらず下手くそな字しか書けなかった。

そして2年生になってクラス替えで
千葉さんと分かれてしまい
結局あの物凄く上手な字を書ける魔法が解らず
今でも何故あんなに上手い字が書けたのか謎だ。

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