会社員って結局何してるの
すごく頭が漠然とした小学生だったので、「会社員」という職業の人は全員もれなくお金を製造している人なのだと思っていた。つまり、僕のお父さんも君のお父さんも造幣局のようなところにみんな勤めており、500円玉とか1000円札とかを作っていて、作った分がもらえる、みたいなシステムだと思っていた。(部長とか社長は偉いから、大きい額のお札を作れるので給料が高い)
また、サラリーマンといえば満員電車、というイメージがあって、ぎゅうぎゅうの車両に詰め込まれた男たちを見て「大人になっても絶対にこうはなりたくない」と強く思ったのをやけに覚えている。会社員たちは満員電車に揺られて今日もお金を製造するのだ。
会社員ではない人たちの存在も意識の中にはあった。学校の先生とか、お花屋さんとか。そういう人たちは特殊なケースで、歯医者さんとか魚屋さんとかお笑い芸人とか、専門的な職業の人たちはあらかじめそういうレールを通過して会社員ではない職業人になるのだと思っていたようだ。
漠然とした子供だったのだ本当に。
小学校を卒業するときに卒業文集には学年みんなの将来なりたい職業が書いてあった。「会社員」と書いた人は一人たりともいなかった。この夢が全て叶った場合、世の中は教師とスポーツ選手とパティシエで溢れかえるな、と思った。しかし実際には世の中は教師とスポーツ選手とパティシエで溢れていない。電車は会社員で溢れている。これはどういうことなのか。
では会社員は夢破れた人の職業なのだろうか。
しかし会社員をやりながら輝いている人もいるし、会社員をしながら「俺だっていつかは」と機を伺っている人もいると思う。一方で、会社員というシステムは能力が多少低くても誰でも交換可能な部品になって決められた事をこなせばいいようになっている節がある。従順にしていて、やることをやっていれば毎月お金がもらえるシステムだ。それは素晴らしいシステムであると同時に、そのシステムの外側で自分のルールで決めながら生きている人もたくさんいるのだろう。
僕は結局のところ会社員になった。
500円玉とか1000円札を作る仕事ではない。満員電車ではなくてスクーターに乗って職場を行き来している。
タイトルに立ち返る。「会社員って結局何してるの?」
小学生の自分にそう尋ねられて僕は納得する返事を返すことができるだろうか?今日は電話でアポイントを取って打ち合わせをして、企画書を作った。果たしてこれがお金を稼ぐという事なんだろうか?
お金はいつ発生しているのだろう。納品が済んだとき?会社にお金が振り込まれたとき?それとも銀行口座に給与が振り込まれたとき?お金を稼ぐというのがどういう事なのか、わからないまま大人になった気さえする。
財布の百円玉を自動販売機に滑り込ませて100円の缶コーヒーを買う。この100円玉はどうして財布に入っていたのだろう。
ほんとうに会社から振り込まれた100円玉なのだろうか?
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