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阿媽、グラフィック・ノベル、阿里山茶

先日四国のホステルで歩き遍路をしている台湾からのおばあさん(1人で)に会った話は書きました。
彼女は日本語もペラペラで、リュックの中から出して見せてくれたのは「日本100名城」のガイドブックで、行ったところに印が付いてましたが、結構訪問済みで、またよく知ってました。
これから回る先にある「高知城」「宇和島城」「大洲城」をお薦めしたら、「その先の今治城がいいのよ」とまぁよくご存知で感服しました。

逆に私は台湾のことどれくらい知ってるだろうかと恥ずかしくなり、図書館で「台湾の少年」四巻を借りて読みました。

この本は、ここに書かれていますが
第一巻は「統治時代生まれ」で日本統治下に台中で生まれた主人公が日本教育を受けながら日本敗戦後までの少年・青年期が描かれます。
第二巻は「収容諸島の十年」で、蒋介石による白色テロで濡れ衣、無実なのに逮捕され、十年の刑となり、台湾の南にある「緑島」という収容所(島)でのマンデラ氏ながらの苦難の日々。
第三巻は「戒厳令下の編集者」は出所したものの逮捕歴がついて周り、就職も大変な中、出版社を作り上げたが思ってもいない様々な不遇により倒産。
第四巻は「民主化の時代へ」で、ようやく白色テロの不当逮捕からの名誉回復が描かれます。

いや凄まじい。主人公の蔡焜霖(さい こんりん)さんは実在の方、1930年生まれですから90歳を超えておられます。

私は1957年生まれなので、第三巻の蔡氏が警察に見張られながら少しずつ社会復帰していく時期に生まれたことなります。また台湾で戒厳令が解除されたのは1987年なので、私が30歳までこのような抑圧された台湾だったのかと、不明を恥ずかしく思いました。

岩波のサイトにも書かれているように、この重たいテーマですがグラフィック・ノベルという形態になっていることによりなんとか読みきれたように思いました。出版社の皆さんに感謝します。

さて第一巻の冒頭にこうあります。

蔡氏は本著の中で「私は何人だ」と自問するところがあります。それはまた母国語と密接に繋がっているのです。

タイトルの阿媽は台湾語でおばあさん。
読後に蔡氏の国により木の葉のように翻弄された、氏の波瀾万丈の人生を噛み締めながら、阿媽に勧められた阿里山茶をしみじみ頂きました。

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