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24時間働くためなのか?

この「誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論」(松本俊彦)は良かったな。精神科医の書かれた本なので最初は精神疾患とか、薬物中毒とかが中心かなと思ったがそうではない。少年矯正、自殺、アルコールと幅が広い。もともと「旧」の問題で宗教に囚われるということはどういうことなのだろうか?依存症に近いのだろうか?と知りたくて図書館から借りたものでしたが、とても良い本でお薦めです。

まずは、アルコールについてですが、私はお酒も飲むし、楽しく語らう酒場も好きだ。正直なところ高校生くらいの頃から酒を飲み始めたからもう酒歴は50年近くなる。
毎年の健康診断や、私は被爆二世なので被爆二世検診、また喘息持ちなのでその合間に血液検査を受けているが、肝機能に障害が出ていないのが不思議なくらい。

20代から30代の頃が一番酒を飲んでいたと思うし、独身の頃は晩飯は食わずとも、酒を飲みに行っていたので、週6日は飲んでいただろう。
昔はお酒は今ほど種類はなく、今考えると美味しくないものも多かったが、気にすることなく飲んでいたな。

日本酒も二級酒辺りになると徳利でやりとりしていると、徳利の周りがベトベトになる。醸造用アルコール添加の日本酒が普通だったから、またウイスキーも美味しいものではなく、飲むほどに酔って気持ち良くなるのではなく、胃が気持ち悪くなるので、肝臓がやられる前に「やめとこ」になっていたような気もする。もちろん「とりあえずビール」だったが、今考えると決して美味しいビールではなかったな。

ワインブームは20代後半だったけど、それほど嵌まることなくやり過ごしたが、30代後半からウイスキーはもう結構、ビールも40代でもう結構、焼酎も50前にもう結構、しばらくはウォッカを飲んでいたが、これも止めちゃったな。今では日本酒、それもカップ酒を1個で十分です。

それでもこのコロナで飲み屋さんに行かなくなり、また自宅で飲む習慣もあまりないので、1年以上酒を口にしなかった。その後飲んだにしても、週末カップ酒1個程度なので、青年になって以降、人生で最高に肝機能の数値が良い。また飲みにいかないでいてもなんともなかったので、アル中ではなかったことも分かったのが、コロナ効果でありました。


まあそんな馬鹿話は置いておいて、アルコールは習慣性もあり大変危険だと松本医師は指摘する。この本を読み進むと本当にそう思う。それなのにいまだにテレビCMなんかではビール、酎ハイのアルコール三昧だ。政府がどうかかわるのかということも書かれていてとても興味深いが、これ読んでビール・酎ハイは終わりにしようと思いました。タイトル写真は日曜に飲んだ「ビールスタンド重富」の三度注ぎ。この美味しいビールが生涯最後のビールで良かったな。

さて、本の中で印象的なところを無断で抜き取ります。まずは少年矯正の所

「少年矯正の世界から学んだことが二つある。一つは、『困った人は困っている人かもしれない』ということ、そしてもう一つは、「暴力は自然発生するものではなく、他者から学ぶものである』ということだ。
(中略)
なぜ一部の人はコミュニティの規範を軽視し、それを逸脱するのか、その答えはあまりにも明瞭ではないか。その人がコミュニティに対する信頼感を抱けていないからなのだ。コミュニティとは、結局、それまで出会った人たちの集合体、集団である。そして、人は信頼する集団の規範、自分にとって大切な集団の規範だけを尊重し、遵守するものである。」

これは「仲間内だけよければ(○○ファースト)、同類以外の人間(性差を含む)を排除する、仲間以外の声など聞いたふりして無視」の社会そのものの病理だろう。

次に自殺の所

「私は診療の場面で自殺念慮について問うことを恐れなくなった。というよりも、問わなければ取り返しがつかない時代が起きると信じるようになった。(中略)
『次回の診察予約をとること自体に治療的な意味があり、予約の有無こそが生ける人と死せる人を隔てるものなのだ』」

これはショックだった。自殺する人は決めたら留めるのは甚だ困難だが、決める前は躊躇するものだそうだ。それを止めるのは人とのつながりであり、だからこそ、松本医師は次の予約をとることで、繋がっていることを認識してもらうのだな。

それと宗教の依存についてもこれに近いのじゃないだろうか、不安や苦しみを埋めるために宗教に近づき、その時その信者に懇切丁寧に関わられて「つながり」を感じたら、そこから逃れることは出来まい。すべての宗教とは思わないが、カルト的な宗教はこのような手法を使っているのだろうと思います。

カフェイン中毒について

「最近、カフェインの乱用に関して恐ろしい実態を知った。(中略)全国の救急医療機関に搬送されたカフェイン中毒患者が激増し、一部には究明できずに死亡してしまったものもいるというのだ。救急搬送事例の大半は、エスタロンモカ錠のようなカフェイン含有の市販薬を過剰摂取した結果であった。しかし、そのような事例が2013年から急増した背景には、同時期よりエナジードリンクの販路が拡大したことと無関係ではないだろう。恐らく山積みする仕事を目の前にした人たちが、当初はエナジードリンクで踏ん張り、やがて体制によってそれが効かなくなるとエスタロンモカ錠で鞭を入れるようになったのだ。」

これは「レッド○○」と「モンスター×××ー」などがコンビニで大々的に売られた影響を指すのだろうと思うが、エナジードリンクは筆者は落ち込んだ人が手にするわけではなく、頑張っている人がもっと頑張らねばと手にすると指摘している。かつて「24時間働けますか!」という栄養ドリンクのCMがあったが、あれから一歩も変わっていない。メーカーは「飲み過ぎには注意しましょう」と表示はするが、結局追い込んでいくことに責任は持たない。

最後は乱用薬物の変遷について

「危険ドラッグが、一時期あそこまで盛り上がった原因って、結局は日本人の遵法精神のせいだと思うんですよ。逮捕されて犯罪者としてコミュニティから排除されるのは嫌だけど、『隙あらばハイになりたい』と絶えずチャンスを伺っている感じッスね。あるいは、『逮捕されなきゃいいんだろ』みたいな、少なくとも俺にはそんなふうに見えます。そんでもって、最近は処方薬や市販薬みたいな医薬品の乱用・依存が増えているわけですよね。その意味では、日本人の『逮捕されずにハイになること』への執着というか、異様な情熱はもうすごいッスよ」

これは、かつての薬物中毒から回復中の人の言葉だったが、とても正直な言葉だと思うし、私自身の薬物に対する考え方もこの本で大きく考え直さざるを得なくなった。
社会的病理としては、丁度山際大志郎大臣が実質更迭となったが、彼がその記者会見の場で

「国会議員として、何か法に触れるようなことをやってきたわけではないので、国会議員の活動は、しっかり信用を取り戻すためにこれからも続けたい」
と言ったのを聞いたが、これに重なった。瀬戸際氏の心の言葉として言い換えてみようか。

「逮捕されて犯罪者として議員バッジを外すのは嫌だけど、『隙あらば議員になりたい』と絶えずチャンスを伺っている感じッスね。あるいは、『逮捕されなきゃいいんだろ』みたいな、少なくとも俺にはそんなふうに見えます。そんでもって、最近は「旧統一教会」みたいな票と金の乱用・依存が増えているわけですよね。その意味では、日本人の『逮捕されずに議員になること』への執着というか、異様な情熱はもうすごいッスよ」

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