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言わぬが花 知らぬが仏
私の好きな作家にイタリアの「ディーノ・ブッツァーティ」氏がいます。もともと最初に読んだ不条理小説「タタール人の砂漠」の心底やられてしまいました。その後も小説や童話も興奮しながら読みました。
童話の「シチリアを征服したクマ王国の物語」もとても面白かったですが、これは先日映画にもなりました。見ていませんが。
そのブッツァーティの短篇集「魔法にかかった男」「現代の地獄への旅」に次ぐ第三作「怪物」を図書館がようやく扱ってくれて借りました。う~ん参りました。
この中の「天下無敵」はとても面白い発想です。田舎の発明家が作った武器は遠く離れた爆弾を爆破させる高周波の武器。数キロ離れたところの兵士の持つ火薬、戦車、戦艦まで自爆させるというもの。結局敵国が武器を作ってもすぐに破壊されるので、損害は自国の兵士、軍隊、自国がやられるだけなので、結局「天下無敵」の武器になり、世界は平和になるというもの。
ガザでは悲惨な戦いや破壊がありますが、この「天下無敵」の武器があれば、誰がやろうとしても、その前に破壊されますから、病院の破壊なんか起こりようもありません。
さらに核兵器も敵国を破壊するのではなく、自国内で持てば持つだけその場で自爆できますから、自分自身で身を亡ぼすようなもの。北朝鮮の核兵器も「作るなら天下無敵押すよ」と言えば、平壌が爆心地になるのだから、そんな開発なんか続けられないでしょう。
徳川家康も「勝つことばかり知りて まくる事をしらざれば 害その身にいたる」の名言通りです。
確かにこういう兵器は発明されてもいいのじゃないですかね、いや発明されているが、軍需産業がやっていけなくなるので、極秘にしているのかもしれません。岸田君もきれいごとばかり言って何もやらないのだから、こういう「天下無敵」の武器を作ります!くらい言えば世界平和に大きく貢献できると思いますが、そんなことしたら安倍元首相は統一教会二世からでしたが、岸田君は軍需産業からゴルゴ13を派遣されるのかしら。
その他もとても面白く、書評もありますので、こちらも読んでいただいた方が良いかもしれません。
それぞれ素晴らしいのですが、今回は書評にも書かれているその中の「偽りの知らせ」が響いたことを書いておきます。
書評にもあるように、これは、ある戦争に参加した若者たちの物語ですが、実際の主役は老齢の村長さんです。以下引用します。
「連隊を率いるセルジョ・ジョヴァンニ伯爵がアンティーオコの郊外まで戻ってくると、サン・ジョルジョの村長だという老人が待ち構えていた。村から参戦した若者たちを郷里の英雄として凱旋させるため、出迎えにきたのだ。しかし伯爵が彼に告げた言葉は、村長にとって意外極まりないものだった。知りたくない事実をつきつけられてしまった村長はその重さを受けとめかねて苦悩する。村に帰った彼がひとびとと交わす会話の裏に苦衷が滲むのだ。結末で村長の脳裏に浮かぶ情景はまるで時が止まったようで、その中で己の恥辱を晒し続ける者たちの姿が残酷に映し出される。」
聞かねば良かった、知らねばよかったということはこの年まで生きると沢山あります。自分の胸の中だけに納めて良いのか、伝えるべきなのか、はたまた嘘をつくべきか。本当に苦しいものです。
先日女房から闘病中だった従兄弟が治療を止めて、延命もしないという選択をしたと本人から伝えられたと聞きました。従兄弟は淡々と話し、奥さんも感情を表に出すことなく伝えてもらったとのことで、「このことは数人しかまだ言っていない」とも言われたそうです。
その日、私が会社から家に戻ったら、女房の様子が少しおかしかったので聞いたらそのような話をしてくれました。従兄弟ですから女房の両親や兄弟にどう伝えるべきか、言わない方が良いのか、いや言うべきか、言うならどう言うべきなのか、どのタイミングで伝えるべきなのか。
もちろん従兄弟との距離感はそれぞれ違いますから、受け止め方も違うでしょう。
このことがブッツァーティの「偽りの知らせ」と重なり、手が震えました。
タイトルにあるように、言わぬが花か、知らぬが仏か
恐らく従兄弟からは決して女房を苦しめようと伝えたわけではなく、自分の最後の生き様を見て欲しいという思いで伝えてくれたのだと思います。それをしっかりと受け止めてこれからも生きていってほしい、という思いも伝わります。
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土曜日に女房と山口の神社に行き、病気平癒ぬ御祈願をあげていただきました。1日痛みに苦しむことのないように、心穏やかに過ごせますように。
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