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リニアと上関、あわじ結び

先日上関の核のゴミの中間保管施設の問題が突如中電+関電から提示され揉めています。

実は丁度「土の声を」という信濃毎日新聞の連載記事をまとめたものを読んでいます。手に取ったのは、以前2回ほど、この南信の地域に行ったことがあり、伊奈・駒ケ根・阿智というところの記憶があったことと、なんといってもグリムスパンキーの出身地であることから、興味を持ったのです。

タイトル写真の水引は阿智の「昼神温泉」の朝市で購入したもの。
「水引占い」とかで、色々話をする中で、その人にあった色で水引を作っていただくもの。私はこの色の組み合わせでした。

この地方が「水引き」で有名なのは全く知らず、その後「紙屋ふじさき記念館」という、ほしおさなえさんの作品の主人公の祖母たちが暮らしているのが飯田市(伊那八幡駅)という設定(「紙屋ふじさき記念館 カラーインクと万年筆」の第一話「結衣の里」に詳しいです)で、この地域が「水引き」の日本一の産地ということを知りました。

そんな豊かな文化の地域もリニアに翻弄されているのは事実でした。

リニアは静岡県が揉めていることしかあまり知りませんが、その隣の長野。特に問題の水源に関するトンネルを掘っている所はどんな感じなんだろうか?と思ったのです。

まあ、様々な問題があることを「信濃毎日」さんは地道に住民(賛成・反対・その他)に聞き取り、赤裸々に紹介されていて、とても読みごたえがあります。丁度広島の豪雨災害から9年目という時期もあり、その中にあった残土処理(沢筋に埋め立てる)についての章「残土漂流」の阿智村のクララ沢についてを紹介します。


「JRからクララ沢の名前が挙がったのは17年4月。『候補地にしてよいかどうか調査したい。ボーリングに入らせてほしい』。桜井さんはJRから求められ、『調査くらいなら』と了承した。しばらくして『本格的に測量したい』と言われ、それも認めた。
調査開始から約3年半。JRは残土約20万立方メートルを埋める詳細設計図を作り、住民説明会の開催を検討する。残土の埋め立てを了承したわけではないが、いつの間にか流れが出来てしまっている。」

「『クララ沢はあくまでJRが挙げた候補地だ。』工事の課題への対応を協議するため地元関係者や村議会の代表などで作る村リニア対策委員会や村は説明する。残土を受け入れるかどうかは、住民の声を踏まえて対策委や村などが判断するとしている。」

「詳細設計図のコピーに12人の村議が見入る。『コンクリートの構造物は100年の耐久性を持ちます』『崩れないように設計しています』。JR東海中央新幹線建設部名古屋建設部の古谷佳久担当部長らは安全性を強調したという。(中略)沢筋であっても地下水や雨の排水設備を設け、地盤と盛り土を密着させる施行などで安全に造成できる-。JRは説明する。」

ところが、意外なことが判明。

「クララ沢は、山腹崩壊や地滑りで生じた土砂が土石流となって流出し、災害につながる恐れのある『崩壊土砂流出危険地区』。JRは残土約20万立方メートルの盛り土を計画している。」

これは県のハザードマップ等に表示されていたが、故意か忘却かわかりませんがJRは無視、実際に住民の生命に責任のある県はどうやらそれよりリニアの経済効果を優先していたように見てとれました。

これは上関と同じ構造でしょうか。リニアは国交相+長野県+JR東海という形で、原発は経産省+山口県+中電・関電という形。でも上記の

「中電から上関に使用済み燃料の中間貯蔵施設について。『候補地にしてよいかどうか調査したい。』。上関町長はお金とバーターで中電・関電から求められ、『調査くらいなら』と了承した。
【今この辺】
しばらくして『本格的に測量したい』と言われ、町議会は認め、中電と関電は詳細設計図を作り、住民説明会の開催を検討する。中間貯蔵施設を受け入れるかどうかは、住民の声を踏まえて対策委や村などが判断するという建前なので、施設建設を了承したわけではないが、いつの間にか流れが出来てしまっている。」

に重なります。

さて地元紙はどうもリニアにおける信濃毎日新聞さんとは随分スタンスが違うようです。地元の声が聞こえてこない。この本の序文にはこうありました。

「信濃毎日新聞はこの間、リニア建設そのものに明確な反対の論陣を張ったことはありません。隆起が続く南アルプスの難工事や運行の安全性、自然環境保護や景観保全、とてつもない電力を費やす必要性といった視点から、さまざまな問題提起を重ねてはいました。
(中略)
地域を激変させる歴史的事業を検証せず、結果的に追認する報道に留まれば、信毎は責務を果たしているとは言えません。地域に禍根を残すことになり、未来の評価にも耐えられないでしょう。

賛成、判定の旗幟を鮮明にして言い切るような記事を書くことは、実はストレスが少なくて済みます。多様な意見に向き合い、どう橋渡ししていくかに腐心しなければならない地方紙は、それでは読者の信頼を得られません。
私たちは取材を始める前に、一つの確認をしました。『この報道はリニア反対キャンペーンではない。現場を丹念に歩き、事実を一つ一つ積み上げ、しっかりした根拠をもてたならば、堂々と「これはおかしい」「再考すべきだ
」と書こう』。」

広島の地元紙はどう肚を据えているのでしょうか。一面のコラムは何か言っているようで、その実何も…無責任な印象を受けます。

なお、水引きの結び方に「あわじ結び」というのがあるそうで、ほしおさんの本のキーワードにもなっています。
あわじ結びとは、一度結ぶとほどけない結び方。 水引きとしては、結び切りと同様「この先同じことが起きるのは避けたい」という意味になるそうです。
リニア、中間貯蔵施設ともに地域住民を分断することなく、「あわじ結び」のようにしっかりと話し合い、合意をした上で決めて欲しいと思います。

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