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悦びの結晶体

なかなか感心しました。

振り返ってみると高校生から今に至るまで時々目を通していた雑誌の中ではこの「ヤマケイ」が一番のロンゲストかもしれません。
高校・大学時代は盛んに登っていたので、毎月購入していました。

2018年8月号が創刊1000号記念特別号だったとはうっかりでした。
2023年10月14日発売の11月号「特集 決定版!全国絶景低山100」で1062号になると思いますが、毎月の雑誌の発刊+別冊もあり大したものです。

私が学生時代の山の雑誌は「山と渓谷」以外に「岳人」と「アルプ」の三冊を見ることが多くありました。それ以外にもいくつかあったように思います。

「岳人」は今でもありますが、以前は東京新聞の出版でしたが、今はモンベルが発行元。ヤマケイの1000号のコラムにもあるようにヤマケイは大衆向け、岳人は山岳部向けという硬派な感じだったでしょうか。

「アルプ」は山の文芸誌でした。山を登る時は周囲の景色に目を奪われることも多いですが、重い荷物を背負って地面を見ながら歩くことも多く、その時は自分の奥底と対話しながらという時間も多くあります。
まさに「アルプ」は自然の中で、その自分の内面との対話している様々な思いが紡がれた雑誌だったと言ってよいでしょう。これは昭和58年に廃刊になりましたが、私にとっては、アルプで目にした多くの作家、文筆家、登山家との接点は宝物のように感じています。

その中の一人、串田孫一氏の「山を去る日に」の中にこういう箇所があります。

「山での多くの経験は重なり合い、ある部分は並んで、それでも雑然としているが、それぞれに美しく、それぞれの人の中で、殆んど清浄な位置をしめているので、集まって結晶体を作り出すのにふさわしいものである。

(中略)

この結晶は、いつか消えてなくなることはないだろう。他人にこれだといって見せられるものではないが、しかし私はたしかにもっている。大切にしようもないものだし、また眺めたい時に取り出してみられるようなものでもないがそういうものを持っていることを思い出す時、それだけで悦びに囲まれる。」

この年になると本当に結晶体だな〜と深く同意するものです。

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