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「馬十人零」

わかるということはどういうことか、分かったつもりでも何もわかっていないことは多い。それは頭でわかったつもりになっているだけ、いうことが多い。
特に身体で経験していないことは、こういうことがありがちだ。子どもも転んで痛い思いをして初めて分かることは多かろう。「これやっちゃだめ」とか言っても決してわかってはいない、そのことは皆さん経験済みじゃないだろうか。

私が子どもの頃の遊びは、野球やサッカー、相撲というのが普通だった。投げたこと、打ったこと、蹴ったこと、組んだことがあるから自分の身体でその意味がなんとなく分かる。もちろんそれだけに一流のプロのレベルもわかるし、「なんであそこに投げれんかな」「なんであそこでパスするかな」というのはテレビ桟敷でつぶやくことはあっても、『自分では決してできない』こともよく理解している。だから罵声なんか浴びせないよ。

しかしスポーツで言えば、体得まで行かなくても身体で経験してることは決して多くない。私は高校から大学と山登りをしていたから、その感覚は今でもわかるが、それ以外は子どもの遊びの域に留まりさっぱりわからない。

その中で「やっぱりやってみないとわからないものだ」と痛感したのが数年前にやった『カーリング』である。丁度平昌五輪の前だったが、友だちと「カーリングってそんなに難しいもんかね」と言ったらその友だちが「ワシは、広島県のカーリング協会の役員なんよ、一度やってみたら」と言われ、シブシブ講習会に参加しました。
で、案の定ですが難しかった…。それ以降テレビで家人が「なんであそこに投げるかね」なんて言っても「いやいや、投げるだけでもものすごく難しいし、しかも相手のいる競技になるととてもとても」と熱くいうようになったし、もちろん勝者の素晴らしさもよりわかるようになった(敗者の健闘もよくわかる)。

で、長々と書いたが、実は先週の土曜日生まれて初めて経験したことがあった。それは『乗馬』であります。会社の向かいのスーパーの店頭で「乗馬の体験会(2000円)」の案内をしていて、思い立って申し込んだというのは以前書いたことがあるが、それです(4月7日「小さな目標発見」)。

家から1時間、吉和の乗馬クラブに到着。最初に初心者向けのビデオを見せられました。最初は「またがるだけなのに」となめてみてましたが、乗るだけ、また歩くだけ、走るだけでも結構難しいことに愕然。「これ出来るじゃろうか…」と不安になったところで「じゃあ乗りましょうか」と馬場に連れていかれました。既にビギナーコースの参加者が輪乗りでやっていますが、子どももまた上手に乗っているのを見て、不安は募るばかり。

いよいよ順番になり乗馬しました。生まれて初めて乗った馬の名前は「カーサフォルテ(イタリア語で『砦』っていう意味らしい)」5歳の騙馬でした。乗る私は64歳のほぼ廃用馬ですが…。

こまごましたことは置いておいて、楽しかった。カーサフォルテ君はとても利口で、爺さんを上手に乗せてくれました。もちろん手綱にロープをつけて指導員さんがついてくれているので、並足、軽速歩でグルグル回るだけでしたが、気持ちいいのなんの。
最後に馬房に戻り、挨拶をしてお別れ。その後感想のアンケートを書いていたら(当然ですが)「実は3回のビギナーコースというのがあり、今日申し込んでいただいたら半額です(大体1回3000円)」と言われ、これまた当然のようにふらふらと申し込みました。


体験してわかったことは、馬って大きいけど、結構細い。視点を馬の耳と耳の間に置きなさいと言われるので、馬の前足から前しか見えないが、幅は私のちょっと太いくらい。もちろん後ろ足、おしりは大きいけどね。だから馬上で前を見ると、馬が自分の幅くらいに感じるのです。
それと、初心者向けの軽速歩であっても結構揺れて、バランスをとるのが大変。鞍に座るのでなく、鐙の上から腿に欠けて両足で乗る感じでしょうか。
だから競馬のジョッキーがあの猛烈なスピードで、かつ両足でバランスをとり、狭い馬群を抜けてくるのはもう神業ということが分かりました。絶対にジョッキーに「どういうノリ方しとるんじゃ、へたくそ!」なんて決して言いません。
競馬は「馬七人三」、馬が七割、人が3割という格言があるので、そう思っていましたが、いやいや馬はそれぞれピカピカに仕上げて来るので、そこまで大きな差はないだろうと思います。だから乗り役が重要。正直「馬三人七」いや「馬二人八」はあるんじゃないかな。まあ、本日はカーサ君が全てだから「馬九人一」どころか「馬十人零」でしょうか。


あっ、後、軽速歩でカーサ君がパカパカ走っている時に、馬上の私は腰を上げたり下げたりするのですが、何回かピタッと呼吸が合うときがあり、その感覚が嬉しかったな。もちろんへたくその初心者だから、合わない時の方が多いので「このへたくそ」とカーサ君は思ってるのもわかる。で、合うと「おっ、爺さんもやればできるじゃん」というのが伝わってくるのである。もちろん馬って賢いわ~というのが一番素敵な体験でした。

結構な運動になることもよくわかり、乗馬クラブを出たところにある蕎麦屋さんで蕎麦定食をペロリでした(タイトル写真)。その後近所の温泉でひと汗流し、一路自宅に向かいました。


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