![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/98368000/rectangle_large_type_2_e309606e7d060a2f8b9bc74104109799.jpg?width=800)
尾田とダン中尉
毎週火曜の朝5時半からは、前夜の「100分de名著」の再放送を見ます。今朝は「北條民雄 いのちの初夜」の二回目。
主人公の尾田が、同じくハンセン病患者の佐柄木と会い、他のハンセン病の重症患者に接し、自分の将来を悲観して自殺を図るという所でした。
この「100分de」は時々出て来るアニメーションも良いのですが、今回佐柄木が両足を失った重病患者を背負ってトイレに連れて行く場面を描いたものがあり、それをみて思い出したことがあります。
それは「フォレスト・ガンプ」のシーン。
ガンプのベトナム時代の隊長「ダン中尉(ゲイリー・シニーズ)」は戦闘で両足を失い、ガンプに助けられます。
ダンは夜中に病院で隣のベッドに寝ているガンプを引きずり下ろし
「死にたかった。勇敢な中尉、ダン・テイラーとして」
「俺を見ろ。これからどうする?どうすればいいんだ」と泣き崩れます。
帰国したガンプはニューヨークで再びダンと会いますが、両足を失い、車いす生活のダンは自暴自棄の荒んだ生活でした。
その後ガンプは、戦死した戦友の意思を継ぎ「エビ漁師」となり、不漁続きの毎日でしたが、そこにダンがやってきます。
ある荒れ狂う大嵐の中、ガンプとダンは一隻だけ漁に出ます。ダンは風雨が打ち付ける中、マストの上で狂ったように
「どうした!こんなのは嵐じゃないぞ。もっと荒れろー!決着をつけようじゃないか、あんたと俺でな!」
と叫びます。
翌朝嵐が治まり、朝日の中大漁のエビを得て港に戻り、ダンは海に飛び込んでフォレストに礼を言います。そのシーンでフォレストが
「何も言わなかったけど、中尉はその時、神様と仲直りしたんだと思う」
というんですね。ここは泣けるところでした。
これが佐柄木の背負う重病患者(尾田の未来の姿でもあります)と重なりました。
ハンセン病患者として社会から隔離され、将来を悲観し自殺を図る尾田はダン中尉であり、エビ漁師のガンプと共に不漁続きの漁に出るダンは佐柄木に背負われた尾田でもあります。
大嵐はハンセン病という回復不能と言われた病でもあります。
「決着をつけようじゃないか、あんたと俺でな!」というダンの叫びは尾田の心の叫びでもあり。
ダンが「神様と仲直りした」のは、彼が生きる意味を見出したということですが、それはまた尾田(北條)が、作家として生きる意味を小説に残すという道をみつけたことではないでしょうか。
ついでながら、ダンがその後チタンの義足をつけてアジア系のフィアンセを連れてガンプに会いに来ますが、北條が川端康成に認められて出版することにも重なりました。
これを連想したのは、あのアニメーションの一コマからですが、アニメーションの力は凄いですね。来月になったら「100分de」のサイトに「アニメ職人の凄技」というページで前月のアニメーションの紹介をする所があるので、しっかり読みたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?