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One Buddha is not enough

先日ティク・ナット・ハン師の逝去の報を聞き、とてもショックだった。日本のメディアではそれほど取り上げられなかったように思うが、師の影響は大きなものがあると思う。丁度勉強しようと図書館で般若心経についての本を借りたが、その一冊がティク・ナット・ハン師の「般若心経」もう一冊は詩人の伊藤比呂美氏の「いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経」であった。

伊藤氏の本は般若心経以外のお経の現代語訳?いや言葉や音からくる意を表現した解釈になっていて、さすが詩人であると感心した。よく考えたら般若心経含めてお経を唱えるが意味を理解しつつ唱えることはない。サンスクリットの漢語表記を日本語で解釈することになるから、それもしかたない。そこに「音」や「リズム」の解釈を加えた伊藤氏の本は一読に値する。

さて一方ティク・ナット・ハン師の「般若心経」は独特な解釈であるが、ハン師がかねてから言われていることそのものがここにはある。私自身この本を読んで、「色即是空 空即是色」、いわゆる「形あるものはなく、形なきものはある」という意味を掘り下げて考えていなかったことがあらためてわかった。是非一読されたし。

そのハン氏を知ったのはNHKの「こころの時代」だった。以前も書いたが年をると朝は早い。休みの日も同様で、家人を起こさぬよう静かに別室でテレビを見ることがあるのだが、日曜の5時台はこれを見ることが多い。そして以前その番組で「ティク・ナット・ハン師」の二回連続の番組があり、その時初めて師のことを知り、衝撃を受けた。その後、師の影響を私の奥深くに感じることは少なくない。先週からウクライナへのロシアの侵略が続いており、どうなることかと悲しい思いを持つが、そのタイミングで「ティク・ナット・ハン」師を偲んで、その番組の再放送が土曜の深夜にあり、録画したものを昨日拝見した。

https://www.nhk.jp/p/ts/X83KJR6973/episode/te/N15LJP11XM/

https://www.nhk.jp/p/ts/X83KJR6973/episode/te/VVP8ZY74L3/

以前放送されたのは2015年とのことだったから、もう7年前。師以外の場面の記憶は薄かったが、あらためて気づくことは多くあり、驚いた。中でも先月この「こころの時代」で紹介され感動したのが「山谷に生きる〜僧侶 親子三代の戦後〜」だったのだが、取り上げられていた僧侶吉水岳彦さんがこの「ティク・ナット・ハン」師の後半に師の教えの実践者として出ておられたのだった。もちろん7年前の話ではなく、先月の放送でも続けておられたので、その取り組みに頭が下がる。

https://www.nhk.jp/p/ts/X83KJR6973/episode/te/KX477RQNKK/

師の姿や言葉を、このタイミングで放送するのには意味があるのだと思います。番組では師の言葉として

「One Buddha is not enough 一人の特別な人がブッダになるのではありません。一人ひとりがブッダになるのです。深く見つめてください。そうすれば歩く時、呼吸する時、微笑む時、私がいつもみんなと共にいることがわかるでしょう。」

を紹介していました。この言葉からも、ウクライナの悲劇は、誰か特別な人が解決するわけではなく、私たち一人ひとりがウクライナの人を思い、心を鎮めながら歩き、呼吸し、食事の時もウクライナのシェルターに避難している人を思いながらひと噛みひと噛みすることが主体的にブッダになる(近づく)こと。そして距離も、生も死も超えて慈しみによって結ばれる人々の繋がりこそ、「怒り」「恐怖」「絶望」に打ち勝つ慈悲による人間の道だということを忘れてはならないと感じています。



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