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合格率は10% 戦死の確率は

先日ジョン・フォード監督の「長い灰色の線」という映画をNHKのBSで見ました。

アメリカの陸軍士官学校の体育教師(マーティー・マー)の50年にわたる思い出の映画なのですが、フォード監督の映画にしてはそれほど上等とは思えませんが、部隊がウエスト・ポイントという所なので、政府や軍から随分便宜もあったろうし、文部省推薦みたいなかんじで、陸軍推薦映画、退役軍人推薦見たいかこともあったのかもしれないなと思いつつ見ました。

その中で引っかかったことが2点。1つは第一次世界大戦に送り出した士官が何人か戦地で亡くなります。そのことに対して主役のマーティー・マーが「軍人は国民に代わり命を投げ出すのが役割」というようなところがありました。なるほど、この頃までは軍人と国民の戦争における立場・役割の違いが明確にあったのだなと思いました。

もう1つはその第一次大戦で亡くなった士官の息子がウエスト・ポイントに入学します。それはその士官の戦死にあたりどこぞの上院議員が「息子さんのウエスト・ポイントへの入学推薦をする」という弔意替わりの手紙が来て、それに基づいて成長した息子さんは難関の試験経由でなく入学したのです(色々あって彼はその後中退するのですが)。
正直これには驚きました。士官学校・兵学校はあくまで実力主義、能力主義の選抜で、縁故とは関係ない(もちろん立身出世のプロセスになるとそんなことはないと思いますが)と思っていただけにビックリしたのです。
政府・陸軍のお墨付きのこの映画でもその辺は描かれていましたから、別に驚くようなことではないでしょう。でも縁故入学を肯定している感じでなんだかねえ~。

そういえば図書館で「戦雲(いくさふむ)」という三上智恵さんの本を借りました。三上さんは映画製作をされていますが、映画と重なる内容の本のようで、各章に映像動画に飛ぶQRコードが付いていて、言葉だけでなく映像で訴えてくる優れもの。映画は今月末から上映されます。

この中にも「翁長知事」の所で広島の横川シネマで上映され、トークをされた場面が出ています。そうだあの時私も席にいたんだ。今はやめているけれどFBにその時のことが書いてありました。

2018年8月9日

で「戦雲」の中に驚愕のデータが紹介されていました。

「ここに面白い資料がある。戦争による被害者の、軍人・民間人の割合は時代とともに明らかに変わっているのだ(杉江栄一・樅木貞雄共編著『国際関係資料集』1997年、法律文化社)。

第一次世界大戦は軍人の被害が92%で民間人は5%(この資料では、合計100%になっていない)。
第二次世界大戦では軍人の被害52%で民間人が48%
朝鮮戦争では軍人の被害15%で民間人が85%
ベトナム戦争では軍人被害がたったの5%で、95%は民間人の犠牲だ。
つまり昔は兵隊が死ぬのが戦争だったが、今はいかに自国軍の兵士を守りながら戦うかを重視した戦法、兵器にシフトしているということだ。」

ウエストポイントの合格率は10%と超難関ですが、軍人被害の大半は兵士だろうから、士官の戦死の確率は低いんじゃないだろうか。
マーティー・マーが「軍人は国民に代わり命を投げ出すのが役割」と言っていたのは第一次世界大戦の時。今なら何て言うのでしょうか。

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