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どんな雲にも裏地がある

先日読んだ大石芳野さんの「わたしの心のレンズ 現場の記憶を紡ぐ」にこういう箇所があった。

「ウイルスへの怯えが高じて排除の気持ちにさせるのはまさに利己的な自己防衛だ。(中略)五感で感知できないウイルスだから不安なことには違いないが、そこから差別的な思考がなぜ起きるか理解に苦しむ。利己主義の露骨な顕在化ともいえようか。実際に『自粛警察』的な目がそこここにはある。」

第七波の最中(入口?)でこういうのがまた表れてきている。マスクするしない、まん延しているのだから規制はしない、様々な意見があるようだが、結局は新型コロナは何ものか?今までの対策はどこまで効果があったのか?をしっかり検証していないツケが出ているのだと思う。いわゆる「有識者」という方々のことですが。

私は中小企業の経営者の立場なので、大手企業と違い一人でも感染し休まれると大変な打撃である。もちろん健康が優先だから、休むのは仕方ないが、やはり社員一人ひとりには感染対策をしっかりしてもらいたいと伝えているし、もちろん自分が言っているわけだから、自分自身人の集まる所は極力避けている。飲み会の誘いもあるが、広島県で新規感染者が100人切らないと出ないと言っている。徐々に減少しもうすぐ出れるのかと思ったところがこの第七波で広島県では2500人を超えてしまった。
そこで、先週の日曜に楽しみにしていた「活弁シアター」もキャンセルしたのだ。

長年やっている「ピースキャンドル」の26周年の8月6日および解散式もドーム前で点灯し、近場で解散式をと思って案内していたが、残念ながらこのような状況なので、昨日、当日集まった旧会員で実施の検討をし、実施する場合はビアガーデン等のオープンな会場で実施。実施しない場合はドーム前で解散ということで案内もしました。

そういえばこのコロナの期間に親族や知人、社員が何人か亡くなった。高齢者が多いが私より年下もいる。葬儀に出れたり出れなかったり、様々なので、死についてまた葬儀についての意味を考えることが多かった。今までは漫然と葬儀とかに出ていたことにも気がついた。
これもまた自分の考え方であり基準ですが、人はどう旅立つかというのは大事だと思うし、それは正に誰でもない自分自身のもの、自分事であると思う。しかし死んだらその瞬間からそれは全く自分から離れてしまう。葬儀の儀式をどうするのかは自分の意志はそこにはなく(生前伝えている場合は別)、遺族や残されたものがやりたいようにやるだけだ。死んだ人は葬儀のやりように不満があっても、死人に口なしだからどうしようもない。
故人以外にとって大事なのは、葬儀のやり方ではなく、少なくとも四十九日時々故人のことを思い出すこと、お盆や彼岸に「そういえば」と手を合わせることと思う。決してお供えをしなければとか、仏壇やお墓に足を運ばねばということでもない。行きたきゃ行けばいいし、行けなければ今の場所で手を合わせればいいだけだ。

結局葬儀やそれに伴う色々な行事は、故人に関係なく、自分の問題、自分が他者からどう見られるかの影響の方が大きいと思う。「幾ら包まないと」「顔を出さないと」「お供えを送らないと」あるいは「お寺に幾ら包む」「葬儀のランクは松にする」「お返しは」なんていうのは故人にとってはどうでもいいことで、残った遺族や参列者のメンツでしかない。
加えていえばそりゃあ近い関係の遺族は悲しいかもしれないが、それ以外の人にとって見れば、寂しい思いはあると思うが、遺族ほど悲しくはない。もちろんそれぞれの家庭にはそれぞれの事情があるから、遺族が悲しまねばならないというのも枠に捉えられた「演技」なのかもしれないけど。

そんなコロナ禍ではあるが、このところ気がついたこともある。それは先日の被爆者二世検診の結果が返ってきたが、ここ数年どんどんと数値が良くなっているのだ。年々老化が進んでいるのにね。
考えてみたらコロナのお陰で困ったことも多いが、良い事もあるんだなぁ。それは生活のリズムが20~50代の間メチャメチャだった、出張は多い、飲みに出ることも多い、生活は不規則だった。
しかしここ数年は飲みに出ない、出張も行かない、朝5時前に起床し、7時には出社。夕方7時前には退社して帰宅。もともと外で飲むことが多かったので、家では飲まないのが習慣で、家には酒もないから。風呂に入って、食事も暴飲暴食が出来ない家でとり、晩飯を食ったら読書三昧だから、当然数値は良くなるだろうね。
というわけで、色々な出来事はあるが、悪い事ばかりが続くわけではない。
私の好きなチェット・ベイカーの歌に「Look for the silver lining」というのがある。真っ黒な雲の上(裏側)には銀色に光っている。服の裏地をかけて歌っているのだが、すべからく世の中の出来事はそういうものなのだと思う。


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