見出し画像

文楽とおばちゃんと晒

私は伝統音楽、芸術に疎いのですが、それは実際に見たり聞いたことがない、地方都市だけに見る機会が少ないというのが一番の問題点かと。

それと、以前も書いたことがありますが私は「大げさ」が嫌いなので、クラシックでもワーグナーとかベートーヴェンは好みでなく、オペラは全く興味なし。
舞台でも歌舞伎なんかは全く興味なく(能は謡を少しやったので見ます)、劇団四季とか宝塚は食指が伸びません。まあこれは昔ブロードウェイで52nd Streetというのを見たことがあり、まあこれもええわ…となった次第です。

先日図書館に行ったら「文楽」の公演が10月にあるのが目につき、そういえば文楽も見たことないな(国立文楽劇場で浪曲は聞いたことがありますが)とふと思っていました。後日、市の広報紙に「文楽鑑賞入門講座」のお知らせがあり、平日でしたが夕方からなので行ってみることにしました。

アステールプラザの研修室がほぼ満員の盛況。幸運にも、前から二列目の空いている席に案内されて、絽の着物の「おばさま」の隣で聞くことが出来ました。ああこんなに暑いのにシュッとした着物姿とは、さすが浄瑠璃の世界は違うわい、と感心した次第です。

講習では、最初に「太夫=語る人」の豊竹靖太夫という方が「初めて浄瑠璃を…という方は手を上げてください」と言われたので私も手を上げましたが、前の方の席の方は初心者ほぼゼロでしたが、後ろの方は結構上がったようなので、初心者向けに細かく説明を頂きました。

まずは「太夫」の備品(?)と語りの説明。
なかでも面白かったのは腹帯の話で、晒(さらし)を固めたような腹帯をしないと力が入らないそう、私も和太鼓をやっていた時は、バッチリ晒しで太っ腹を絞めていましたね。そう言えば下腹に力を入れるというのは長いことしていないような気がする(トイレは別)。ということは馬力を入れて!というのをしばらく怠っている、生ぬるい生き方を続けているのかもしれません。反省大。
また腹帯は基本洗わないそうなので、大相撲の力士の廻しと一緒ですね。破れたりしたらその上から布を継ぎ足すとかで、長年やっている人は巨大なバウムクーヘン状態の方もおられるそうです。

その後「三味線」の鶴澤清公さんの三味線の説明。浄瑠璃の三味線は太棹なのですが、同じ太棹の津軽三味線とは違うというのは初めて知りました。

その後人形遣いの「吉田一輔」さんが面使い、左を「蓑太郎」、足を「蓑悠」さんで人形遣いの説明。
実際に「傾城反魂香 土佐将監閑居の段より 雅楽之助の注進」という場面をサラリとやっていただきましたが、舞台下駄や人形の使い方などには驚きました。
先日ETVの「古典への招待」で一輔さんは「雛鳥」、蓑太郎さんは腰元の「桔梗」の面使いをやっておられましたから、人間国宝と共演するすごい人なんです。

さらに「艶容女舞衣 酒屋の段より お園のクドキ」という所を今度は女性の人形でやっていただいたのですが、女性の人形は表情が変わらないのに、動きやしぐさ、頭の傾げ方で心の現れるのを目の当たりにして本当に驚きました。本舞台で距離があるより、こういう講習で2メートル程度の距離だけに生きているように思いました。

お話や実演が終わり、最後に体験コーナーということで「太夫」「三味線」「人形」に分かれてということになりました。

私は人形の所に行きましたら、最初にいた男性が面使いを体験、続いてその奥さんがやられ、さあやろうと思ったら横にご夫婦がおられたので、「どうぞ」と譲り、じゃあやろうかと思ったら、後にいた「おばちゃん」が「私は面、あなた左で、あなた足」と、ずいッと入ってこられ、ちょっとムカッとしました。で終わられたら次の「おばちゃん」グループに先に人形を渡す始末。
その後も「おばちゃん」が並んでいるのを見て、なんだか彼女らの食欲にウンザリして嫌になり「や~めた」と失礼しました。闘志を失ったのは「晒」を巻いてなかったからと思います…。

正直「おばちゃん」みたいにガツガツする人が「酒屋の段のお園」みたいな艶やかな動きなんかできんし、心情も表現できまい!とムカッとしました。
講義の時隣にいた「絽の着物のおばさま」とは随分違うな~。群れるとそうなるのかな~。

なので、この研修会の後は「文楽公演」に行こうかなと思っていましたが、公演もこういうおばちゃんばかりかも…と見送ることにしました。おそるべし「おばちゃん」!

そうそう、以前8月6日に当社の場所で亡くなられた前の持ち主、履物問屋さんのご遺族の娘さんがお線香を灯されて、ご遺族の亡き後は私が代わりに灯していることを書きましたが、その娘さん始め、亡くなられたお父さん夫婦のお墓がこのアステールプラザの近くのお寺にあります。
丁度いいと、講習会の前に手ぶらでしたが伺いました。
手を合わせ、今年もお線香を灯したことをご報告しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?