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力強いドキュメント・ノンフィクションは弱者、少数者の視点に立つから

昨日だけでなく、先日から何回もご紹介していますが、ようやく「ハマのドン」見ることが出来ました。いや凄い。
とても面白く、考えることが多くありました。
つい主人公である「ハマのドン」こと藤木氏のカリスマ性に目が行きますが、この映画の主役は横浜の山下ふ頭。
そこに誘致しようとするカジノが「今・近未来に必要」という人たちと「未来・次世代には不要」という価値観の争いであることに気がつきます。

必要派は自民党本部が中核の地元経済団体で、反対派の中心がこの藤木氏ですが、いみじくも藤木氏が選挙戦後に語ったように「横浜市民」が勝ったということは間違いなかろうと思います。

もちろん藤木氏もいいこと沢山言っておられ、中でも
「人は幸せに生きなきゃいけない。人は一人でいる時は人間じゃない。相手がいて人間になれる。だから相手に幸せな思いを与えるように努力する。向こうからも幸せになれるよう助けてもらう」
というのは至言。
自分が行動したり判断する時に、自分だけで決めていないか、反省です。

さてこの映画を作られた松原文枝監督には、神戸の元町映画館の前でチラシを頂きました。
その時はまさか監督とは存じ上げないので、広島からの旅先であること、広島なら「横川シネマ」でやるだろうから、その時行きます。と軽く言ったので、その償い(?)で今回初日に行くつもりでしたが、17日に監督が来られるということなので、急遽変更しました。

上映後の松原監督のご挨拶も感銘を受けました。「小さなリスク」なるほどです。
出口でパンフレットを買い、サインもいただきましたが、その際「神戸で…」とお話したら「あっ、あの時旅行だった」と思い出していただけました。約束守ってよかったです。

帰りに「本と自由」のガタロ展に行こうと思いました。

なんと、14時40分まで戻ってこないとの張り紙。仕事中抜け出してだったので今回は断念しました。どこかで行けるかな?

実は横川シネマでは何本かこういったドキュメンタリー映画を見てショックを受けています。今でも思い出すたびに身の毛がよだつのが二本あり、一本は西表島と台湾を描いた「緑の牢獄」黄インイク監督


もう一つは三上智恵、大矢英代監督の「沖縄スパイ戦史」

で、それぞれ大ショックでしたが、両方ともに映画から展開した本もあり、それでしっかりと復習も出来たことも印象に残っています。

この3つの映画は弱者、少数者の視点から描いていること。強者、多数者からの圧力がありながらおもねっていないことが異なるテーマの映画でありながら共通する点でしょう。

そして先日読み終わって、これまたとてもショックだったのが「黒い海 船は突然、深海へ消えた」伊澤理江さんのものです。
こちらもまた弱者、少数者の視点に伊澤さんが身を移して、丁寧に調べ上げたノンフィクションだけに、迫力は半端ありません。是非真相が表に出て欲しい。

また「黒い海」の中で、ひたすら真相を求める船主さんが紹介される石牟礼道子氏の詩も凄い

船主の野崎さんは突然の事故で人命や船を失い、経営危機にも直面します。さらに東日本大地震、津波の影響でさらに船が壊れ、あげくには福島原発事故で漁業にも出れないというどうしようもない苦しい体験をされます。
普通ならお手上げ、逃げ出そうとするのでしょうが、この方は福島県の漁協の会長を務められ、福島原発からの処理水の海洋放出という政府の方針にも立ち向かわねばなりません。伊澤さんの筆からは巨大な権力構造に砂を噛むような思いで、一歩一歩進む野崎さんの生き様が、石牟礼さんの詩に重なる思いでしたし、野崎さんはまた「ハマのドン」藤木さんの生き方にも重なりました。

野崎さんは青学をでて家業につかれましたが、少し下の同年代である私もまた東京の四谷にある大学でしたから、通学時にどこかで遭遇していたのかもしれませんし、野崎さんは在京時、中板橋界隈におられたそうですが、わたしも板橋に友人がいて良く遊びに行ってましたから、もしかしたら接点があったかもしれないません。そんな野崎さんの姿を読みながら、とてつもない苦難だと思いますし、その心情の一部は同い年の経営者である私にも伝わるものがありました。

そうだ、横川シネマさんのツイートに私も写り込みしてます。3枚目の前から3列目、白髪頭が少し見えるのが、私です。

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