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ボー 女の都

土曜の夜の上映に行きました。

もちろん主役のホアキン・フェニックスのポンコツぶりもすさまじいものでしたが、助演のスティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソンはDuneで、ネイサン・レインはプロデューサーズでそれぞれ印象的な役者だったですが、今回も凄い。

最初は終演が11時近く、上映時間が3時間もあるので飽ないで見れるかなと思っていましたが、いやもうタップリ堪能しました。

この映画のつくりはどこかで似たものが…と思いつつ「アッ!」と思い出したのはフェリーニの「女の都」であります。

フェリーニの映画には変な所が多く出てきますが、それは過去の記憶、夢といったモチーフが混在して、映画が夢の話か、実在の話か混とんとしてくるところが魅力的。
「女の都」はその極致といっても良いかもしれませんし、フェリーニの女性観が盛り込まれているので、好き嫌いもあろうかと思う映画です。
まず、「女の都」はマルチェロ・マストロヤンニがスナポラツという主人公を演じるわけですが、そのマルチェロとボーを演じるホアキンのポンコツぶりがまず似ているのです。

そして「女の都」はマルチェロ=スナポラツ=フェリーニの女性に対する偶像化と裏切り(?)、子どもの頃の大人の女性や、尼さんの記憶が彼らの女性観を作り上げていたことに気づく話です。
フェリーニの映画では豊満な女性が登場しますが、なぜなのかという源流が少しわかる映画でもあります。

一方「ボー」の方はマザコンの映画といってよいかもしれません。息子が母親から受ける女性像、母親の息子への溺愛。そういう意味では「ボー」を作り上げて女性(母親)との関係の話ですから、「女の都」の違う見方の映画といっても良いところがあります。

また何といっても印象的なのが、不可解な場面設定。これはフェリーニとアリ・アスターの共通点です。「ボー」のアパートから見る風景、森の中の不思議な劇団、実家の豪華な邸宅と隠し部屋、最後の離島での出来事などはフェリーニお得意の場面設定でもあります。

とにかく三時間の長丁場の映画ですが、全然飽きない。笑えるしびっくりするところ満載でした。もちろんマザコンというテーマもありますので、自分に置き換えて、自分の女性感がどう作られてきたのかということを感じることも少なくない。

この映画はフェリーニの映画が好きな人には、ばっちりはまると思います。前述の助演陣は風采もことごとく変な人、女性陣は思わせぶりで、物凄く謎と癖のある人ばかり。
最初の場面のダウンタウンの全裸の男や全身入れ墨男、あらゆる妙な人々はフェリーニのサーカス風で、とにかくフェリーニへのオマージュを感じた映画でした。

ただ癖もあるので万人向けとはいかず、1週間程度で打ち切りになると思いますから、早めに行くことをお勧めします。
映画が終わり、風呂に入って12時頃寝ましたが、夢に「ボー」のシーンが次々と出てきて、いかに刺激的だったのか、朝起きてもドキドキ気分。アリ・アスター監督の世界を堪能しました。
音楽もいい、邸宅のシーンのこちらもナイス

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