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廃線候補路線の旅 総括

前回は広島東部から岡山北部、鳥取、島根東部を回る「芸備線・伯備線・姫新線・因美線・山陰線・木次線・芸備線・福塩線」の旅でした。
いずれも乗客が大変少ない廃線候補の路線でした。
今回は逆に広島から見て西側にあたる「山口線・山陰線・美祢線・小野田線・宇部線・岩徳線」のやはり廃線候補路線の旅。

まずは前回に比べやはり山間地中心でなく、海岸部や工場群のある地域ということで、随分車窓からの風景や沿線の生活感に違いがありました。

端的に言えば、山間地の路線は間違いなく集落を結ぶ線であり、海岸・工場地帯の路線は点と点(駅と駅、家と工場)間の移動手段の一つという印象です。つまり前者は路線を通じた文化や生活のつながりが強く、後者はそれが薄いのです。それは都会の通勤路線に近い感覚。
都会に住む人で、ターミナル駅や隣の駅までは行くことはあれど、3つ先の駅に行ったこと、3つ手前の駅に降りたことのない人が大半だと思います。それは路線としての地域文化の繋がりが薄い、点と点だからだと思うのです。

かつては宇部線や小野田線は、工場勤務の人の家から工場への大事な移動手段だったと思いますが、今は車通勤が主体でしょう。工場内に広い従業員用駐車場があり、JRの時刻表を気にしなくて良ければ、誰もが鉄道でなく車を使うようになります。

さらに車通勤となると駅前で一杯ということも出来なくなりますから、この界隈のローカル駅前には飲み屋が見当たりません。駅前まで寂れますし、小料理屋で隣の人と顔を合わせることも無くなり更に希薄な関係になります。
鉄道は日常利用する人を失うと、本数が減り、さらに乗客が減るという悪循環が加速化します。
点と点になるだけでなく、点そのものが小さくなるのです。

私の乗った「小野田線本山支線」は朝2本、夕1本しか走りませんが、駅前のバス停からは朝から晩まで1時間に1本程度走っています。それは間違いなく車やバスに置き換わったということ。
僅かに走る本山支線も、間違いなくこの地区の宇部興産への通勤者のダイヤで、日中の利用者は車に移っていることを示しています。

長門本山駅の時刻表

同様にこれに該当するのが、今回乗った小野田線と宇部線。しばらくは宇部新川〜新山口は新山口方面の通勤・通学路線として、また新幹線への接続路線としては残るでしょうが、それ以外は貨物線として残るしかないのでは?

後は順番に

山口線は単線なので駅で離合

山口線は新山口〜山口まではさすがに通勤・通学路線として残るでしょうが、そこから益田までは厳しそうです。前回の津山から鳥取までの因美線に近い。
しかしここには中間点に「津和野」というキラーコンテンツがあります。もうこれ一本でなんとか維持するしかありません。

土曜日の乗車だったので断定は出来ませんが、津和野で降りた人以外は、山口から益田まで通しでの乗客ばかり、途中駅の乗降客は数えるほどでした。
また益田についたら、津和野行きのバスも見かけましたから、津和野観光に絞り便数を維持するしかないのでは?
丁度こんなのがありました。

芸備線同様に、山口線も山間地の路線ですから、山口県、島根県の境なく一本の線の繋がりを大事にして欲しいです。

次に、山陰線の益田〜長門市間は厳しいと思います。それなりに利用者はいるのですが、益田、東萩、萩、長門市以外の駅の乗降客が本当に少ないのです。山陰道や9号線でピンポイントに停まる「急行バス」に置き換わられるのは必至でしょう。

長門市駅の時刻表

仙崎支線は大好きな盲腸線なので、このままであって欲しいです。仙崎の回を書くときにもう少し補足しますね。

長門市から厚狭までの美祢線は、芸備線の感じで乗り鉄には好印象ですが、長門市も厚狭もそれぞれ小さな街なので、それを繋ぐ路線の収益向上は厳しそうです。間に秋吉台がありますが、こちらはバスが車で行きますからね。

さて少ししか乗りませんでしたが「岩徳線」です。
川西駅から岩国駅までの二駅しか利用してないので、徳山から川西までの長い区間を乗らずして語ることは出来ませんが、川西からは本当にいい感じでした。例えると、芸備線の備後落合から東城間を彷彿としました。なんとか残って欲しいです。

岩国の清流線のホームは0番、その先に岩徳線の1番ホームがあります

いずれにせよ、今回乗った廃線候補路線で乗客密度が増える要因はありません。しかしバス等に代わると、地域は間違いなく分断されるでしょう。

そうなると、長門市と厚狭市、益田市と萩市と長門市は、つながりでなく地域文化は孤立するでしょう。
つまり、前述の都会の通勤路線みたいになるのですが、市町が離れ、小さいので、小さな点があるだけになり、地域としての共有文化は切断されるでしょう。

JRの現場はこの大事さを理解しているでしょうが、本社は違うでしょう。収益を改善するためにはなんでもするのではないでしょうか。
国有鉄道でなく民営会社にしたツケは、地方の路線廃止に露骨に現れていると思います。

最後に新山口から新岩国まで新幹線に乗りましたが、この道中はトンネルと山の中の連続ですから、車窓から外を見ても生活感は何もありません。
まさに新幹線は乗車駅と下車駅という、点と点を繋ぐだけの機能でしかないことも確認しました。

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