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調べるでがんす

先週末にご近所のイベント会場で「がんす横丁に見る土橋界隈」という講演がありました。これがなかなか面白いものでした。
戦後すぐにNHKの元アナウンサーさんの著書「がんす横丁」が書かれましたが、これは資料など裏付けの「史実」+そこに住んでいた人の記憶「オーラルヒストリー」が重ね合わせれたものだそうで、なるほど特に広島のような戦後とそれ以前が全く分断されたような街においては、「史実」も多くが原爆により滅失しているし、住民も被爆し、あるいは散逸してそれを組み合わせていくというのは途方もない努力だったと思います。

今回は会場が「土橋町」であったので、その中でも「土橋」近辺の町の話がいろいろ出てとても興味深いものでした。今の土橋町は旧「塚本町」「西地方町」「西新町」「堺町の一部」のようですが、中でも「塚本町」と「西地方町」は本川の西岸だったので「西本川」と呼ばれる一帯だったとか。それはそれは繁盛していたのだそうです。
タイトル写真は本川橋(旧猫屋橋)から西に向けて。なるほど、本川橋の角には立派な建物や豪邸がありますわ。

本川、左が河口方面、右の橋は猫屋橋(現本川橋)

繁盛していたので「管弦祭のお供船」が本川に浮かんでいたそうですが、塚本町と猫屋町のお供船が最後まであったとか。この船の上で神楽が舞われたそうですから、先日見た磐田の府八幡の山車や、祇園の山鉾みたいなものが、本川の船の上で見られたということなんだそうです。

本当は広島はフラワーフェスティバルみたいなイベントよりも、こういった宮島と広島をつなぐ伝統の祭りを復活させた方が相応しいんじゃないでしょうか。

それとビックリしたのは塚本町の北側、今の本川小学校の所あたりに「油座」というものがあったという話。
「油座」は浅野藩の公営の油(菜種油)独占販売所でものすごく権威があったそうです。この界隈は旧「油屋町」といいますが、それの元になったのはこの「油座」で、油を使うからその西側に「鍛冶屋町」があり「刀研ぎ」も多くいたそうです。

今回の話は
1 猫屋の架けた猫屋橋
2 猫屋橋の記憶 松五郎事件
3 本川の記憶 お供船
4 塚本町の記憶
5 鍛治屋町・油屋町の記憶
6 堺町の記憶 出雲大社への道標

2番目の松五郎は「宮浦松五郎」氏という著名人(全然知らなかった)で、幕末浅野藩の大砲、鉄砲の鋳造(そもそも韮山反射炉も作った人)で幕末の動乱期に士分でないながら、国憂の情で私設自警団を組織し、治安維持にあたって誠に人気のあった人だそうです。
ある時、本川橋(猫屋橋)の上ですれ違った上田宗箇(家老)の陪臣から「町人風情が」と暴言を吐かれ、刀を抜かれたところを、松五郎が発砲。その責めを負って町人ながら切腹したのだそうです。なんだか歌舞伎や時代劇にあるような話ですわ。

上田流と言えば、先月恒例の栗園に行ったのですが、その帰り道に上田流の「銘水」があるので、そこで水を頂戴しました。水の流れはチョロチョロなので、ポリタンクに入れてるのに時間がかかって仕方がない。

しばらくしたら他の方が駐車場に車を入れてこられる様子だったので、ポリの三分の一くらいで切り上げましたが、ポリを見ていると近くにオニヤンマが、水面にお尻をチョンチョンと繰り返し付けています。砂のある所が少し掘りあがるくらい頑張って産卵しているのだな。と見とれました。

蜻蛉の俳句には飯田蛇笏氏の
「汲まんとする 泉をうちて 夕蜻蛉」
がありますが、そんな感じ。松五郎は
「討たんとする 家臣を撃ちて 猫屋橋」でしょうか。

さて、私が生まれた堺町については「西国街道」「雲石街道」の話がメインであまりなかったので、「がんす横丁」を借りて読もうと思います。
といっても今は空鞘神社にある雲石街道の起点の石についての話は今回も諸々あり(寄進者の子孫さんが延々と質問も…)、その中で講師が
「こういった碑なんかは間違いなく歴史的価値はあるが、それが個人の敷地内にあったのか、道路上にあったのかで、財産、権利の問題で複雑なこともあり、調べるのは大変です。そのため行政も必ずしも積極的ではない」
という話をされていました。地元紙には竹原の石灯籠の移設の話が出ていましたが、お金も含めて確かに難しい問題だろうと思います。

講演が終わった後、講師の方に「西地方町と西新町、これはそれぞれ東があるのでしょうか?」と聞いたら「今の橋本町が昔、東地方町と言ってました。当時海岸線がその辺りで、東の方が早くに海が南に下がり砂浜が無くなったので、町名を変えたもの。当時は橋本町と白神社、西地方町のラインが海岸線だったのです」とのこと。
近くの海を表す場合「近海」と言いますが、陸の場合は「地方(じかた)」と表現されたのだそうです、へー。

もう1つ「今日は西新町の話がなかったようですが」と聞いたら、「西新町の話をするには西遊郭の話がどうしても必要なので、もしかしたらはばかられるかと。色々出ていますからご自分で探して見られたら」
とのことでした。やっぱりがんすは必見ですね。

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