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「円筒分水」沼

鉄道の話や堺町、ピースキャンドルの話を色々書いてきましたが、もう一つ私にはゾクゾクしちゃう沼があります。それは何か?
「円筒分水」沼であります。

円筒?分水?何?と思われると思いますが、水不足の際に田んぼに水をひかなければなりませんが、「上の村が水をよこさない!」「あそこが勝手に水を多く使う!」ともめるのは時代劇でよく見ますよね。間に庄屋さんが立って「まあまあ」とやるのですが、水は農家にとって命でしょう。
それを取り決めたとおりに分けるのがこの「円筒分水」という優れものであります。

これは全国にあるのですが(それだけ全国的に揉める問題である)、出張で川崎の久地にある会社に行った時の事。東急の溝の口駅で降りて、タクシーで5分くらいのところにある会社に行って商談が終わったので、では帰ろうということになったのですが、時間もあるし、天気もいいし、タクシーで5分くらいだから帰りはぶらぶらと歩いて最寄り駅まで帰ろうと思ったんですな。これが沼にはまる一歩目でした。

そこの社員の人に聞くと、溝の口でなく高津駅の方が近いらしいので、そちらの方に向かうと途中に「久地円筒分水」というものが目に入りました。なんじゃろう?と見て、一目で恋の沼にズブズブとはまりました

ここの円筒分水を例にすると、これは4か所の用水に分岐するもの。上流から来た水を一度地下に潜らせて、そこからサイフォン式に円筒の真ん中に吹き上げさせます。その水を4つに分岐させてそれぞれの用水に流し込むのですが、必要量に応じてその分岐する割合を決めています。

例えば10の流量があるとすると、一番使うところに4、二番目に3、三番目に2,最後に1の割合で自動的に分けます。
仮に水の量が少なくなり5しかないと、一番は2,二番は1.5、三番は1、四番は0.5となるわけです。当然使用量に応じての分水量は協議して決めるのでしょうが、これは誰かが得する、誰かが存するのではなく、自然(水)に応じて公平に分けるというなかなかの知恵だと思います。

いまでは機械やモーターで容易にそれができるのでしょうが、そんなものがない時代、土やコンクリートとかでできるこの「円筒分水」は本当にすごいと思います。
もちろん円筒分水が老朽化したり、機械化により使われなくなったりと、だんだん廃止され、壊されており、見るなら今なのです。

先ほど紹介したようにこの久地の円筒分水は規模、しくみでは日本一。言ってみれば私は円筒分水界のトップスターに出会って、一目で恋に落ちたということになります。
これを管理している川崎市高津区役所ではかつて「円筒分水サミット」を開催され、それを知ったので区役所に行ってその記録ももらうことができました。

広島では治山治水というけれど、どうしても土砂崩れとか川の氾濫に目が行きがちです、しかしこの「円筒分水」は公平の精神を目の当たりにできる優れもの。

そういえば、8年前に安佐南区などの大規模土砂崩れがありましたが、その時にボランティアでお手伝いした「佐東公民館」の方から

「古代中国の夏王朝の初代の王様である『禹王』は治水の神様。公民館の近くに、太田川改修を記念して大禹王碑を建てたが、それで終わりじゃいけなかった。もっと歴史を学ばないといけないね」と聞きました。


やはり日本の国土は急峻ですから川の氾濫には頭が痛かったのでしょうね、その禹王にちなむ碑も円筒分水同様、全国にあるのです。
近くでは香川の高松、栗林公園の中にやはり「禹王碑」である「大禹謨」があります。

久地の円筒分水の紹介はこちら

https://www.city.kawasaki.jp/530/page/0000018473.html


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