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ブギとクレイジー

ブギと言えば朝ドラのブギウギ=笠置シヅ子でありましょうが、私にとってブギと言えばTレックスです。先日はCCRのことを書きましたが、Tレックスは今でも曲の冒頭を聞くだけで、その後の音が身体の中で流れるような感覚です。

さてそのブギですが、先日から読んでいる「欲望という名の音楽-狂気と騒乱の世紀が生んだジャズ」(二階堂尚)。
登場する音楽を聴きながら読むと良かろうと思います。

これが非常に面白いのですが、その終わりころに美空ひばりが出てきます。
話の前後にアメリカのマフィアと芸能界(シナトラなど)の関係が描かれており、ひばりの章は山口組との関係を書かれているのですが、それは置いておいて、朝ドラで取り上げられている笠置が若干登場します。その箇所は

現在、日本コロムビアから発売されているその音源『美空ひばり&川田晴久アメリカ1950』を聴いて驚くのは、音質のよさだけではなく、小学校を卒業したばかりのひばりの歌の素晴らしさである。当時13歳だった彼女の持ち歌は、デビュー曲の「河童ブギウギ」と45万枚の大ヒットとなった「悲しき口笛」のわずか2曲だけだったが、ほかに岡晴夫の「港シャンソン」や笠置シヅ子の「ヘイヘイブギー」「コペカチータ」、ダイナ・ショアの「ボタンとリボン」などを歌っている。
笠置シヅ子の2曲はオリジナルも相当の名唱だが、ひばりの歌はそれよりも塩辛くブルージーな味わいがあってエッジが効いている。笠置シヅ子はこの小さな天才歌手に恐れをなして、自分の曲を歌うことを禁じた。その歌をひばりが歌えたのは、そこがアメリカだったからだ。その点でも、これは極めて貴重な音源と言うべきである。


へー笠置シヅ子が、なるほどですね。実は私は笠置シズ子は現役歌手というよりも歌番組の審査員、俳優やCM(カネヨン)で知り、後からブギの女王と知ったものです。

俳優としては本当に普通のおばちゃんが似合う人はいなかったと思います。違和感なく自然体で、汚れた中にも生き生きとした存在。先日BS12で「日本侠客伝 浪花篇」をやってましたが、おばちゃん役で登場。

確かに私も美空ひばり氏は凄いと思います。それは彼女の歌の凄さだけではなく、卓越した耳のよさのあると思っています。ここにもあるように彼女は英語がわからなくても英語の音をそのまま聞いて、それを歌う(表現)することができる。だからひばりの英語はネイティブに近く、また日本人の情感が入る卓越した歌唱です。

そういう感覚でいうと、いまだに日本の歌手は耳が悪いと思います。海外で生活したり、留学したりする歌手は多くいますが、それでも英語の発声はだめ。それは耳のよさがあるかどうか、その上で耳で聞いた音を表現する発声ができるかというものが欠けているからではないでしょうか。

昔も今も日本語で歌っていても、心に響かない歌手が多くいます。上手だなと思ってもそれだけ。それは歌唱力が発声に力を入れており、聞く能力を疎かにしている、いややっていても発声より、聞くトレーニングの方が甚だ困難だからなのかもしれません。

また偉大なるクレイジーキャッツの章もありますが、これも大変面白く、その中には先日お亡くなりになった最後のクレイジー、犬塚弘氏のこともあります。また2019年のサンスポのインタビューにはこういう記事があるのです。

最後の出演作となるのは、大林監督がメガホンを執った「海辺の映画館-キネマの玉手箱」(11月1日に東京国際映画祭で先行上映、来年公開)。俳優復帰は2012年に公開された大林監督の「この空の花 長岡花火物語」以来で、監督本人からのたっての願いで昨年7月、映画館の常連とコントラバスを弾く老人の一人二役を演じた。

 「監督からは即興の長ぜりふをしゃべらされた。参ったよ」と言いつつ満足げな笑顔。マネジャーによると、今後はトーク番組などに出演を絞る予定で、犬塚も「クレージーのおかげで、いろんな仕事ができた。感謝しています。でも、これからはゆっくりして、あと3年ぐらいで、あの世に行く」とコメディアンらしくブラックユーモアで締めくくった。

この記事は2019年の10月2日に掲載されたもの。そして犬塚弘氏は2023年の10月27日に逝去された。インタビューの3年より1年多い4年後でした。


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