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綺麗な包装紙

図書館で借りた「『その他の外国文学』の翻訳者」(白水社)は素晴らしい。

この中のベンガル語の丹羽京子さんの話で、「マジックリアリズム」が引用されている。これは60年代のラテンアメリカ文学のブーム、日本ではガルシア=マルケスの「百年の孤独」で火が付いたように思うが、日本での出版は1972年の鼓直氏の訳だな。私は遅ればせながら大学生のころ読んで仰天した。丹羽氏は「その火が付くまで南米に小説があることを誰も気がつかなかった」というように紹介している。百年の孤独は欧米で評判になったのだが、それをきちんと翻訳する鼓氏がいたからマルケスは日本でも受け入れられ、その後のラテンアメリカ文学が広く紹介される切っ掛けになった。ありがたい存在だな。

丹羽氏もベンガル文学の広がりの可能性を確信しているのだろうと思うし、この本に出て来る各翻訳者もその思いがあることがわかる。ここで紹介されている訳者の本は本当に読みたい、早速図書館に数冊予約した。もちろん「その他の」と括られる各国文学にも世界文学・同時代性としての普遍性があり、一方では固有性も併せ持つわけだから、バックグラウンドを紐解きながら「へ~、そういう社会なんか」「へ~日本と同じじゃん」と思いつつ読み進めるわけだから面白くないはずがない。

で丹羽京子さんの話で思い出した。丹羽氏はベンガル語なので偉大なる「タゴール」も紹介しているが、氏の教え子の佐々木美佳氏の映画と本の「タゴール・ソングス」も紹介している(今日のタイトル写真は盛和塾機関紙のタゴール氏の引用ページから)

「タゴール・ソングス」これは読まねばならんなと思いつつ、そういえばバングラデシュの吟遊詩人?歌手の本を読んだなとググると、出てきた。

これは大変面白かった。このバウルとタゴール・ソングスの共通点は?と更にググると、なんと丹羽先生のサイトが出てきた。

http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ics/journals/2017ics21/14.niwa.pdf

う~ん、広がるのう。私もバングラデシュには20年位前に行ったことがある。あまりの人の多さと騒乱状態に仰天したが、あそこには本当の人間の生きる姿やパワーがあったな。だから詩や歌が飛び交うのだろうし、心打たれるのだろうと思う。かたや綺麗な都会には生命力などなく、中身はお粗末だけど、綺麗な包装紙で包んでいるだけじゃないかと思うことは多い。

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