細川周平「アメリカでは──カエターノ・ヴェローゾ『熱帯の真実』を読む」-その4
マニャタン 彼はアメリカ合衆国をブラジルの反転と見る一方で、ニューヨークだけは特別扱いしている。八〇年代に初めてこの「アングロサクソンの世界帝国の首都」へ行った時、イベリア半島やイタリアよりももっと親しみを覚えたのは、そこがサルヴァドールや生まれ故郷サントアマーロと同じ「アメリカの領土」にいると実感させたからだった(489ページ)。そこにはブラジルと同じように「運命的に混血の現実」が動いている。混血は決してフレイリらブラジルのナショナリストが主張するようにブラジル独自の特質で