見出し画像

【愛に出会え】まだ間に合う!!映画『海辺のエトランゼ』を絶対に観てほしい【一部ネタバレあり】

こんばんは!!!!!!月がきれいですね!!!!!!!!!!!!!!クソデカボイスでのご挨拶失礼いたします。

突然ですがみなさま、9月11日から全国ロードショー中の映画『海辺のエトランゼ』はご覧になりましたか?(突然すぎる…)

そもそも『海辺のエトランゼ』とはなんぞや?という方、公開したのは知ってたけど観に行くタイミングを逃したという方、それぞれいると思いますが…
実は公開から1ヶ月以上が経過して公開劇場も段々と少なくなってきているのが現状です………が…まだ!!まだ間に合うんです!!!!ぜひ劇場での鑑賞体験を逃してほしくない!!!!そんな私があなたたちへ捧げる感想レビューです。わけがわからなくても読んでほしい。いっそ読まなくていいからとりあえず観に行ってほしい。

私はこの夏のおわりの一ヵ月、公開初日に県内唯一の上映館で朝イチの回をモーニングショー(鑑賞料金は全国一律1800円なので割引はない)で観てから完全に魂をぶち抜かれてしまって狂ったように原作を読み返しては上映終了まで毎週通い詰めてしまったあげくちょっと遠出して新宿ピカデリーまでスタッフトーク付きの上映会まで観に行ってしまったのでした…合計9回観ました…もっと狂ったように観てるヤバい人も多い(称賛)(絶賛)
真実を言えば、私はこの映画の「愛」に出会って、救われました。みんなにこの救済と世界への愛を知ってもらいたい。~いや知れよ~そんな思いで筆を執りました。

本記事はそんな私を狂わせるほどにヤバくてエモい衝撃映画『海辺のエトランゼ』について未観賞の方向けネタバレ配慮verからガッツリネタバレ一緒に読解しましょう重めverまで詰め込んだ欲張りバリューパックとなっております。

まだご覧になっていない!?そいつぁてぇへんだ!?そんなあなたにこの文章を捧げます(駄文ダケド読ンデ…)。
う~~~~んちょっとまだ観に行くか迷ってンのよね~~~という方、そもそも『海辺のエトランゼ』とは何ぞや?という方、この記事を読んで少しでも『海辺のエトランゼ』を観に行く際の一助にして/『海辺のエトランゼ』に関心を持っていただければと思います。
以下目次別ににワタクシ流映画『海辺のエトランゼ』の簡単な紹介と魅力のまとめから、深めにストーリーに触れる感想まで取り揃えておりますので、よろしければ見てってやってください…ウヒヒ…(罠だ…)

ンまァ!?そこの美〇さんはもうご覧になりまして?そんなファビュラス💖でゴージャスな✨体験を既に経られた〇香さんたち(?)におかれましてはよろしかったら私のテンション爆発した文章を読んで『『『海辺のエトランゼ』』』のすばらしすぎる魅力をぜひご自身の中で反芻して頂き思い出し号泣で心の代謝を高めて頂けるとうれしいですわ…永遠に……推せる…😭(遺言その一)

下にある目次を見れば大体わかるかと思いますが内容紹介をば

・【そもそも】映画『海辺のエトランゼ』とは?(1)
公式のINTRODUCTION・STORY・ロングPVをまとめてあります
個人の意見無しで概要だけ知って劇場に行きたいならここまででおk

・未観賞の方向け(2と3)
【なるべくネタバレ配慮】版レビュー
(大体映画公式がHPやツイッターなどで出している程度のネタバレがあると思ってもらえば)

・未観賞でもガッツリネタバレおk or 観賞済みの方向け(4以降)
【ゴリッゴリネタバレまみれ】版レビュー
(語ることが多すぎて結局一から十まで物語の筋を追う方が早いことに気付いてしまったので筆者の感想と物語のネタバレ完全一体型で物語序盤から終わりまで原作全四話に準じる章立てで書いています)

こんな感じです。この文章を読んで少しでも『海辺のエトランゼ』欲をかきたてられることにより上映館まで走り出したくなる重篤な人が少しでも出ることを願って…

ー『海辺のエトランゼ』の世界へようこそー

1)【そもそも】映画『海辺のエトランゼ』とは?

映画『海辺のエトランゼ』は、漫画家・イラストレーターの紀伊カンナ先生のボーイズラブコミック『海辺のエトランゼ』(祥伝社 on BLUE comics)を映画化した作品です。

BOYS LOVE、と聞いて躊躇したあなた、ちょっと待ちな…(肩ポン)そんなあなたにも『海辺のエトランゼ』は観てもらいたい……覆したい、あなたの観念……詳細は次項以降で(オイ)(具体的には「ネタバレ配慮・ややかため」のその3あたりがいいかも)

物語がそのまま続く続編、『春風のエトランゼ』シリーズも第4巻まで現在発売中!映画と原作と合わせて読むと10000000000000倍楽しい
(春風シリーズもスタッフの皆さまが声を揃えてアニメ化したいよ~~~~と言ってるのでアニメ化するかも…?でも原作者紀伊先生曰くみんな続編アニメで観たい~と口裏を合わせたように言う割にほんとに何も決まっていないらしい)(この段落を書いた数日後に『海辺のエトランゼ』の円盤発売が決定!!!!!みんな買って

そんなわけで具体的な作品の紹介に貼りますがまずは公式HPのINTRODUCTION部分をご覧ください。
(当たり前だけどINTRODUCTIONなので主要人物などについての最低限の基礎情報ネタバレがあります、まあそれすら読みたくない方はそもそもこの記事を読まないかな?と思いますので心配はないか…?)

小説家の卵の橋本駿と
海辺に物憂げに佇む少年、知花実央。
そんなふたりの初々しくも、もどかしい関係を描き、
多くの読者の心をとらえたコミック
「海辺のエトランゼ」(紀伊カンナ作・祥伝社刊)が、
2020年夏、ついにBLアニメレーベル「BLUE LYNX」にて劇場アニメとなる。

アニメ化にあたって、作者・紀伊カンナ本人が監修、キャラクターデザインを担当。
制作は2Dおよび3Dアニメーションを主軸とした映像制作を
行っている、老舗スタジオのスタジオ雲雀。
そして監督を務めるのは、「ダンガンロンパ The Animation」の演出を担当し、
「『宝石の国』1巻発売記念フルアニメーションPV」などで
瑞々しい演出力を見せた大橋明代。

ふたりのドラマと美しい沖縄の自然を、
光、色彩、音、すべてにこだわり丹念に描く。

また、駿と実央の繊細に揺れ動く心を表現する、
村田太志(駿役)と松岡禎丞(実央役)の演技にも注目。

静かにくり返す波の音。満天の星空。ゆったりと流れていく時間。
訪れたものすべてを包み込む沖縄の離島で、
純粋で、あたたかく、でも不器用なふたりの恋が育まれる。

以上公式HPのINTRODUCTIONより抜粋(公式HPはPCから開くと背景に波の音が聴こえるのでめちゃくちゃオススメ、というかまさにいまそれが作業BGM、作中に使用されいる音源と同じものなら舞台になった離島で収録したものと思われ)

それとあらすじも紹介してもよござんすよね…え?いいですよね…?

【STORY】

『海辺のベンチで
ひとり佇む少年。
そんな彼が無性に気になった』


小説家を目指す青年・駿は、
海辺の少年・実央に思わず声をかけた。
――「ちょっと、君!」

それをきっかけに、 実央も駿のことを意識し始めるが、
彼は島を離れなくてはならなかった。
「はやく大人になりたい」
そう言い残し、実央は去っていく。

3年後、実央は駿のもとに戻ってきた。
少しだけ大人になって。 はにかんだ笑顔を浮かべながら。

叶わないはずの想いが、通じあったとき、
止まっていた時間が動き出す。

(公式HPより抜粋)
まあ具体的なあらすじについては【ゴリッゴリネタバレまみれ】の方で触れるのでもう完全にネタバレ喰らってもいいやという方はそちらをご覧ください…

というか公式が出してる範囲ギリギリまでくらいのライトなネタバレが知りたいなら私が書いてるのとか読まずにふつうに以下のロングPVをご覧になれば十分なンですわ(職務放棄)

そして、以上の公式情報を踏まえここから狂ったオタクのプレゼンが幕を開けるのだった……(以下から劇中の場面ショットなどを載せた公式ツイッターの引用などがちょくちょく入るようになります)

2)【なるべくネタバレ配慮】
『海辺のエトランゼ』のここがヤバい!!(比較的やわらかめ)

その1.絵!=美!=愛!
原作そのままに動くキャラ!!
ヤバすぎる背景美術!!~沖縄に行きたくならないわけがない~

OK、まずは端的すぎる魅力をYOUに伝授

「「「「「「「絵がすごい」」」」」」」

またの名を美。またの名を愛。劇場で堪能してほしい。ロングPV観てくれましたか?
まあ我ながら雑すぎるんですが。まずは原作公式サイトへGOじゃ。そして映画公式サイトへGOじゃ。え………ヤバくないですか?(思考停止)(語彙力の死)
まじめな話、絵柄の好み云々はおいておいて一つの技術の成果として観賞する価値がある作品なのでは、と思います、私絵についてはドドドドッッドッド素人なので根拠はないんですけど、えっ端的にすごいかわいくてきれいじゃないですか?(語彙力)

まずはキャラデザなんですが、私は紀伊先生のほんわかしたキャラクターたち大好きなんですよね、それがそのままスクリーンで動くのがまず「LOVE」だヨ。キャラクターデザインと物語の親和性がものすごいと思う。
上のINTROにもあったように、原作者紀伊先生がキャラデザ含め色々とガッツリ目に関わってらっしゃることもあって、キャラクターに限らず背景まで原作ファンの期待を超えて期待の大気圏突破しておつりが帰ってくるヤバめの〈美〉ができあがってます。スタッフへの信頼と安心感を通り越してもうエトランゼの毛布にくるまれて起床したくない。

そう、キャラデザもなんですが背景美術もとんでもないんですよ。舞台になっている沖縄の離島に実際にスタッフの皆さんは二回ロケハンに行ってるんですね(ロケハンミニレポは公式ツイッターさかのぼると見られるYO)。

海辺の情景や、キャラクターたちが住む民宿のディテール(本当に細かい、設定解説が細かいのでパンフレット絶対買った方がいい)、目の覚めるような鮮やかな色使いの植物たち、デッカい空にお月様!!

さあ、ここで公式ツイッターから背景美術をご覧いただきましょう。

個人的にBL作品は人間関係に重きを置いてるから背景はわりとサッパリ目でいいんじゃない?という感じで生きてきたワイ、『海辺のエトランゼ』の背景に度肝を抜かれる。いや繰り返しになるけど、BLって背景にこんなに力入れるジャンルなんだっけ????…ええやんそういうBLがあっても。
こんなのってアリかよ…筆者は『海辺のエトランゼ』を観て舞台になった座間味島のホテルを予約しました(マジ)。それどころかこの段落を書いてる2020年10月21日時点で既に聖地巡礼に行って主人公たちが暮らす民宿のモデルになったお宿に泊まってらっしゃる先達の方(@shiba2often 志羽ハルキ【志羽旅々Ch.】さん)までいらっしゃいますわよ…神か…。というか原作の時点でそもそも背景の描きこみが細かくてキャラクターたちの部屋に何があるのかとか探すのがめちゃくちゃ楽しい。

劇場の大スクリーンでみてほしい。
私は作画の技術についてはよく分からないんですがスタッフトークなどのお話を聞く限り美術監督の方が紀伊先生の原作を研究されて色使いなどを工夫されたそう。
いやもうさ…すごいんだよ美術監督さんのその研究の話もそうだしさ…作中で海が映った時、夜空が映った時、(うっわ、うつくしいな…)って息を呑むんだよ……なんていうか、BLだから男ふたりのいちゃこらを描いておわり~~じゃなくて、その二人を取り巻いてる世界全部の解像度がヤバいんだよね…登場人物たちが生きてる世界まるごとめちゃくちゃスタッフさんたちに愛されて、その愛に送り出された作品なんですよ、大げさじゃなくて
(今のところ公式の宣伝戦略に完全におんぶに抱っこな模様 個性出してこうぜ)

その2. 名脇(主)役たち
〜作品をつくる人・動物・もの〜
カワイイモノイッパイデテクルヨ

その①猫!猫!びっくりするくらい猫が出てくる

猫作監がいる。(猫作監とは?)
かわいい、シンプルかつ劇的にかわいいと共に物語を象徴的に表現することを託された名脇役でもあります。私は個人的に犬派(オイ)だけどこの猫ちゃんたちと彼らによる体当たり(?)の表現はこの作品に欠かせない要素だな~と思います。まごうことなきネコ映画

その②飯、またの名を料理

完全に飯テロ。料理作監がいる。(料理作監とは?)
料理もまた登場人物たちによって重要なアイテム。初見で劇場で泣いて作中に出て来た料理を家で再現して泣いて二回目以降も劇場で泣く。
旨そう!!!!!!!!!!!!以上!!!!!!!!!!

その③脇を固めるキャラクターたち

この『海辺のエトランゼ』に何かあとからじんわり来る泣き所があるとしたらそれはこの人たちが作ってるんじゃないかと思う。呼称としては脇役だけど愛しさとしては主役級。
主役の二人以外にもそれぞれの人生があって、それぞれにしかできない仕方で二人に関わってくれるめちゃくちゃ愛すべき人々。登場人物全員に魂がこもってるんですよ。魂感じてくれ。詳しくは本編を観てくれ〜〜〜!!!みれば、わかる

お気づきかもしれないけど実は順当にプレゼンしようと思うと「いいところ?全部」ってなるのは不可避なんですよ。謀ったな…
BL、たしかにボーイズラブなんだけど、主人公の二人だけの物語ではなくて、2人を見守る人々と世界全ての物語なんだなこれは。群像劇というほど視点はばらけないけど、ここでこの登場人物がこう動くみたいな描写の逐一にスタッフからの愛を感じるし、小道具の配置や動きもむちゃくちゃ味わい深いんですよ。互いが出会う前からずっと続いてきた二人の人生とそれに関わった世界、二人が出会うことになる場所を取り巻く世界、そして出会ったあとの二人の人生を彩る世界、全部まとめて描き上げる人間の生と愛についての普遍的な物語です。敢えて言うべし。心が温かくなる作品です。

(このへんまで公式と同じ路線の宣伝ポイントだけど次以降深まっていってしまいます…)

3)【なるべくネタバレ配慮】
『海辺のエトランゼ』のここがヤバい!!(ややかため)

その3.普遍的な物語としての普遍的な強度~BL好きでもBL好きでなくても観てほしい!!~

(上よりは若干重いネタバレありな上に主観多めで上の論点をカタめに語りなおしている感じです)
そもそもBL作品に縁のない方だといまいちピンと来ないかもしれませんが、BL作品に登場する同性愛者は必ずしも現実に存在する同性愛者―大多数は自分のアイデンティティと社会との摩擦に悩んだ経験が多少なりともあるわけですが―と似ているわけではありません。

『海辺のエトランゼ』の場合、一人のゲイ(これは「一人の人間」と当然置き換えることができる)が自分の中核的なアイデンティティと他者・社会との摩擦について、根本的に関わりを考えるわりと深刻な視点がある。(信頼できる統計的観測とかにもとづいてるわけではなくてあくまで個人的な感覚ですが)これは、BL作品としては意外と珍しいことのように思います。あまりにも本質的、というか正面にある問題すぎて扱いにくいということもありそう。というかふつうそこを正面切って描いてしまうとカプが結ばれるまでの障害があまりに強大なものになり過ぎてしまう。

『海辺のエトランゼ』の場合、「男が好きである」ということが主人公にとって避けては通れない中核的なアイデンティティであり、同時に昔の傷などからそれが苦痛の源泉なんですね。ただ、展開として、その同性愛の苦悩を経由してなお、もう一人の主人公と男同士で結ばれるその展開に、驚くほどの納得感がある。
何というか、主人公はゲイであることがすさまじい苦悩であり、そした現に男しか好きになれないし、そのうえで同性同士で結ばれるんだけど、逆説的に、主人公二人が同性同士として結ばれたのはたまたまで、この二人は、この二人という人間同士だったから結ばれたんだな、と思わせるものがある。
ゲイであることの苦悩を経由して、それでも/だからこそ、その苦悩からの解放を経て、その相手とまるで運命づけられているように結ばれる。同性愛の困難、という根底的でありながら意外とBLのお約束的に扱いにくいものを描き切ることで、BLとして徹底的にリアリティ(そもそもBLはファンタジーだという主張も大いにその通りなのですが)のあるものになる。むしろそこから「ボーイズラブ」というジャンルにとらわれない人間関係の表現に至っていると、私は思います。とはいえこの辺りの記述、ネタバレなしだと抽象的すぎてなんのこっちゃか分からないと思う。

もうひとつ、本作のBLとしての破格さの分かりやすい指標としていわゆる「ボーイズラブ間に割って入る女」が登場することが挙げられると思います。
ンぎゃ!?拙者男同士の間に割って入る女キャラド地雷侍!という攘夷志士の方もいるかもしれませんが、よろしければ一度お話を聞いてもらえるとうれしいです。
エトランゼに登場する女の子は「ただの当て馬」でも「ただの応援してくれる友達」でもない。全てのキャラクターの描かれ方がそうなんですが、あーこの人は特定の役割として消費されるために用意された「キャラクター」なんだな…とこちらを白けさせてしまうような描かれ方をしている人物がいないんですよね。
上に書いたように一応分類するとすれば「割って入る女性人物」になるかな…?という人物もいるんですが、しかし、虚心坦懐に物語を読めば、ああ「この人がいないエトランゼ」と「この人がいなかった主人公」は存在する余地がないな、と思わせる必然性があります。ハッキリ言って、くっついた男ふたり、だけには到底収まらない人間関係が、一人一人必ずそこにいなければならない!という強度をもって展開するので、たしかにBLに分類されるけどこの作品が成立するのに別にBLという分類は必須ではないな、と思わせるものがあります。だからもしあなたが未読/未見で、これから『海辺のエトランゼ』という作品を、男ふたりがくっつくその関係性をササっと消費するような享受の仕方をするつもりなら、むしろその楽しみ方にはこの作品はノイズが強すぎるかもしれません。(原作続編の「春風」シリーズになってその傾向は増したように思える。)
全ての登場人物たちの間に、性愛に限定されない広い意味での互いへの愛や思いやりが感じられるし、何より彼ら彼女らの物語を描いている原作者の紀伊先生や、映画の大橋監督らスタッフみなさんから登場人物たちへの愛が感じられるんですよね。色んな意味で愛に満ちた作品。愛に出会え。

その4. 小道具などを巧みに用いた文学的表現
そこにそんな仕掛けがあったなんて…~実録衝撃ファイル~

実録衝撃ファイルとか言う割にネタバレはできないのでまた抽象的になりますがね…上で魅力にあげたように、背景や猫ちゃんなどイチャコラする主人公たち2人の描写以外にもかなり力の入った作品だということはご理解いただけたことと思います。

まあ具体的なネタバレにならないようにシーンの推移による演出だったりキャラクターの背景を探ったりする上で注目してほしいところだけ箇条書きでドンドンあげてしまいますと(いま再びの職務放棄)
・背景の色づかい
・天体
・植物(花言葉とかいうクソベタだけどいつまで経っても古びない最高のエモ装置)(パンフを…パンフを読んで…)
・猫ちゃん
・主人公たちの部屋においてあるこまごましたもの
・回想軸と現在軸の色使いの変化
あたりは必須ですかね…細かいことはぜひ劇場で観て自分なりに考えていただきたいんですが、演出の芸が細かいこと細かいこと…

超個人的に注目してるのは主人公の小説家の部屋に貼ってあるポスターですかね…作中でどのジャンルの小説家は明言されてないし多分公式文書にもどこにも載ってないんですがスタッフトークでの発言によると…(おっと誰か来たようだ)

(書くのに疲れてきて失速した)
【ネタバレ配慮版】まとめ

以上、長々と映画『海辺のエトランゼ』についてネタバレ少な目の紹介をしてみました。だがしかしこれで終わると思ったか?(既に十分長いヨ)
な、な~んと次からはガッツリネタバレありで物語を紹介しつつワイのめちゃ個人的な感想も交えながらレビューが進みます。テンション爆発
ネタバレありで物語の魅力を知ってから滑り込みで劇場に足を運びたい方や、滑り込みでもう一度観に行く前に物語の復習がしたい方などなど、ぜひ読んでってください。
そう、滑り込みだよ!!!!!!!!!!早く書いてこの文を完成させるんだme!!!!(危機感)

※ちなみに以下のガッツリネタバレ版は元々公開から3週間以上経った10/4 に映画『海辺のエトランゼ』を7回観た時点で考えたことを整理して書いたもの(原作第一話相当部分まで)に加筆修正したうえ、二章以降については投稿直前での書き下ろしになります。

4)【ここから下はゴリッゴリのネタバレまみれ】次項以降の諸注意

※ 映画本編のセリフなどを引用する場合については記憶と原作を頼りに書いてるので劇中のセリフそのままとはややちがうかもしれません。
原作漫画や原作続編『春風のエトランゼ』①~④巻についても大量のネタバレを含みます。危ねぇぞ!!!最新巻やぞ!!!気ぃつけや!!!!!
※リンクする形で出典は明記しませんが公式Twitterが紹介している各種メディアでのインタビューや、公式パンフレット、スタッフトークショーなどで見聞きした内容をふんだんに含みます。
※公式Twitterが公開から時間が経ってふんだんに場面写を載せてくれるようになったので文だと飽きるだろうし僭越ながらツイートを埋め込ませて頂きます。

5)『海辺のエトランゼ』夏休み大解剖総特集号
~序盤〜(原作第1話相当部分)

嵐のネタバレの前に未鑑賞の方は最初に紹介したものを忘れているかもしれない。まずは公式の【STORY】を復習しましょう。
ここから先は手加減しないぜ…

『海辺のベンチで
ひとり佇む少年。
そんな彼が無性に気になった』


小説家を目指す青年・駿は、
海辺の少年・実央に思わず声をかけた。
――「ちょっと、君!」

それをきっかけに、 実央も駿のことを意識し始めるが、
彼は島を離れなくてはならなかった。
「はやく大人になりたい」
そう言い残し、実央は去っていく。

3年後、実央は駿のもとに戻ってきた。
少しだけ大人になって。 はにかんだ笑顔を浮かべながら。

叶わないはずの想いが、通じあったとき、
止まっていた時間が動き出す。

(公式HPより抜粋)

まずどこの海辺だよって話なんですが、舞台は沖縄慶良間諸島は座間味島という離島です。実際に海がめちゃキレイらしい。ググれ
まず私は全く行ったことがないにも関わらず離島への逃避願望みたいなものがあって、BL映画とは思えないくらい美しい背景美術(上でも書いたけどやっぱり正直当初BLだから背景はそんなに期待してないよ〜と舐めてた節があった。土下座して謝罪します)で冒頭からぶん殴られてまず正気を喪失した。海がね、美しいんですよ。『海辺のエトランゼ』は世界にまるごと祝福された二人の物語だと思うんですよね。
ちなみに冒頭のシーンからしばらく要所要所で海辺のベンチをうしろから撮っているカットでは月がかかっているのですが、月の欠け方までしっかり演出されているし海の色や空の色まで場面によって調整されているそうなので必見です。

で、主人公の橋本駿(cv村田太志氏、マジで橋本駿のキャラデザと声帯の完全一致感はヤバい)は函館出身のゲイ。幼なじみとの結婚式当日に家族カムア・婚儀破談・実家絶縁トリプルコンボ全部のせ丼特盛りをかまして家を飛び出します。すげえ…

橋本駿、ぐう顔が好み(私情)
その後TOKYOで編集のバイトを経てとある経緯で小金を手にした橋本(あえて橋本と呼ばせろ)は、やや遠縁のみやこおばちゃんが民宿兼ご飯屋さん「京屋」を営む座間味島へ身を寄せるのだった…。(このあたりの経過の詳細は『春風』で、ただしいくつの時に飛び出したとか何年TOKYOにいたのかとか経歴に謎は多い)

まず離島で民宿をやってる親戚がいるって羨ましすぎない????いや、離島の暮らしも関東でのんきに暮らす大学生には想像もつかない大変さがあると思うんだけどさ、橋本よ、おめぇめちゃくちゃ良い親戚ネットワークあるやん。すげぇ〜〜〜うらやましいな

親戚のみやこおばちゃんや、同じく京屋に住み込むレズビアンのエリちゃん(めっちゃいい性格しとる、ラブい)やエリちゃんの彼女の鈴ちゃん(ラブい、京屋には住んでいない)たちと京屋を手伝ったりして何やかんや平和に暮らす橋本、旧バ先から回される下読みのバイトなどもしつついつから目指してたのか自分でも小説家を志して新人賞に応募したり、そんなこんなですでに3年もの間島で暮らしていたのだった。橋本駿24歳。

そんなある日橋本は、民宿の目の前にあるベンチから一人海を眺める美少年を見かける。夜になっても帰らない美少年が気になる橋本。『海辺のエトランゼ』、海辺に佇む異邦人。タイトル回収〜!!タイトル回収おめでとう!!ところでなんでフランス語??紀伊先生おしゃれすぎない?ちなみに(オイ)美少年は知花実央という島の少年でした。

橋本、のんきに(顔がいい少年が物憂げにベンチに座っとる…)と眺めてたわけですが、実は実央は唯一の肉親だった母を高校生にして失い、親戚の家に引き取られて孤独な思いをしていたのでした。
そんなこととは露知らぬ橋本、いつまで経っても帰らない実央に京屋さんで売ってるパンの残りをあげ合法的にファーストコンタクトを仕掛けるのでした。けしからん。そのお礼に実央がお母さんの育てた苗を株分けして持ってきてくれるのですが、橋本はその時におばちゃんから聞いて、初めて実央の境遇を知ります。

夕暮れのベンチでたそがれる実央。思い出すのはお母さんとの思い出ばかりです。早くにお父さんを亡くして女手一人で実央を育てたお母さん。

「みおー今日夕飯何がいい?」
「カレー」
「それはぁ、昨日も一昨日も食べたよぅ」
「えー…じゃあこれ!(みお、自筆のほしいものノートを見せる、立派な蟹の写真)」
「…ァ……」
「今日おかねない日ー?」
「う、うんうん、蟹食べよっか!」

お母さんが用意したのはご飯の上に卵とカニカマを載せた「カニカマンマ」。「か、カニカマ…」と泣き顔のお母さんもちびみおが元気にカニカマンマを食べる姿を見て、笑顔になります。
ちなみにこのシーン、実央がいるベランダに七夕の笹が飾ってあって、幼少期実央が書いた「エビになりたい」という超次元短冊がぶら下がってるので探してみてください。ぎゃんかわ

そんな追憶にひたる実央に、隣いい?と腰掛ける橋本。
(続編とか読んでるとこのあたりの橋本駿めちゃくちゃグイグイアタックするな??別人か??と真面目なシーンなのにちょっと笑えてしまう。まだ若いナ~橋本ヨ)
苗のお礼を述べたあと、なんでもない世間話をするように

「いつも一人で寂しくならない?」

とクッッッソ地雷臭い超鈍感お前ほんとに小説家志望か????と全観客が呆れる一言を放ちます。実央、ブチ切れ

「いつも見てるのはそっちだろ(怒)💢💢………
………気持ち悪い」

無神経ハシモト自業自得感がすごいんですが最後にボソッと言われた一言で高校の時のイヤ〜な記憶(ゲイ特有の「あいつホモっぽくね?笑」系の周りは隠れてなにげなく言ったつもりでも実は聞こえてた本人は図星でマジで笑えないイベント)がフラッシュバックした橋本、貧血でぶっ倒れて慌てた実央に屋内に運び込まれ(たらしい、橋本視点なので実央のスパダリぶりは見られないのでした……)

いや、筆者お前何そのさも知ったような口ぶり…って感じですが何を隠そう私自身もまさに男女二刀流だからなんですね〜…いや〜この回想フラッシュバックシーン、地味にキツいんですよ、私も似たような感じで思い当たる節があるから…まあ私は橋本と違って色々迷惑かけながら生きてるんで自業自得感満載なんですが…それはさておき…
この絶妙なリアリティがキッつい ちなみにこの「あいつホモなんじゃね?笑」「オレ席隣なんだけど〜笑」の回想の中のやり取りそのものは原作の別の場所に類似のシーンがありますがここに持って来られてるのは映画オリジナル、大橋明代監督、その裁量がエグすごいわよアナタ…

翌日、橋本のところに実央がやってきて酷いこと言ってしまったと謝罪、ほんまにええ子や。マジで実央は愛の愛による愛の子です。
実央ちゃん、このレベルのマジで良い子なので多分自分がなにげなく(もちろん必死なんだけど)言った「気持ち悪い」の一言で相手がぶっ倒れたらそりゃ気にも病むよね。謝りにも来るよね。背景美術がすっごい華やかなシーンなんだけど、実はそれに反してこの時の実央の心境は積み重なったしんどい+人をぶっ倒れさせてしまったで更に相当しんどくなってると思う。

ちょっと真面目に原作ベースで記憶を頼りにやりとりを引きますね(細部は違うかも)

実央「ひどいこと言った ごめん」
駿「…は?なんで謝るんだよ あれは君のせいじゃなくて俺が勝手に」
実央「家族がいなくてかわいそうって みんなそういう目で見るんだよ 悲しいとか寂しいとか そんなの俺にしかわからないよ 気安く慰めてほしくない …あんたも、そうなのかと思って」
駿「ちがうよ! …俺は単純に気になって…話してみたかったんだよ ただの下心だよ!
実央「…なにそれ しょうもない理由、ナンパみたいじゃん ……でも、よかった

実央はこれまで「家族がいなくてかわいそう」「一人でかわいそう」という同情から散々声かけられてうんざりしてもう疲れてお父さんとお母さんのいる海の向こうへ行ってしまおうかな、と思うくらい追い詰められてたんですよ。さらに、自分の一言で相手をぶっ倒れさせてしまった。相当消耗してると思う。

そんな実央に対して、「ただの下心」

続編で実央は、ある人物に実央はなんで駿をすきになったの?と聞かれて「駿はオレの恩人なのさ」と答えるんです。
橋本の美少年と話したいっていうしょ〜もない、でも駿だからこその下心が、ここで実央の心に触れて、むちゃくちゃしんどかった心を解きほぐしたんじゃないかな。駿は最初から実央のことを「かわいそうな実央」としてではなくてただの「実央」として見てたわけです。(下心ダケド)
たぶん実央、気が抜けたのでは???だってキツイこと言ってぶっ倒れさせてしまった相手が「し、下心で話しかけただけなんですぅ…」って返したきたらそりゃ張りつめてた心も脱力するわ(笑)

でもさ~~~  このやりとりでの駿の返答がどれだけアレだっとしてもさ、実央はまぎれもなくここで駿に救われたと思うんだよね。
よかったね、実央。

ていうか転じて橋本、のちのち指摘されがちなんですが、マジで自分のことしか考えてないし、公式で台本のト書に「走るクズ男」「ぶたれるクズ男」とか書いてあったらしい(さすがに不憫で笑う)し……でもその駿の性格が、確かに知花実央っていう一人の人間を救ったんですよね。

いや、正直返しとしてはお前そんなこと言うか??状況が状況ならブちぎれっぞ相手って返しだわ(笑)。でもさ~~そのあけすけなところが橋本駿の良さなんだよな〜(ムカツク)。そして台詞のしょうもなさと比べてこのとき内心駿は、あ〜あ、またホモだって思われたなぁ、って小さく絶望してるシーンだと思うんですよ。

橋本駿のナンパで知花実央が不意に救われてしまって、二人の心情がカチリとかみ合ったことで、駿のナンパは実質そのまま実央への告白になってしまった。奇跡のシーンです。

そしてこのシーンで二人の背景に爛漫と咲いている三種類の花が最高なんですよね。そして台詞に合わせて風に揺れ動く花たち。それぞれの花にも意味があるんですが、詳しくは、ぜひ、パンフを、買って、花言葉を、調べて、みてください(今すぐ花の種類まで知りたい人はtwitterで検索しても出て来るんじゃね?わからんが)

そして花だけじゃなくここで流れる窪田ミナさんの音楽がまたすばらしいこと。ちょうどここを書いてる今日(10/23)発売が発表された円盤にサントラCDがつくことが決定してるので買ってください。円盤の発売は2021年1/20です

そんなやり取りを経て釣りをしたり京屋でおばちゃんエリちゃん鈴ちゃんたちといっしょにご飯を食べたりして少し距離を詰める橋本と実央。

ご飯シーン、おばちゃんと鈴ちゃんがポテサラと筑前煮を小皿に山盛り(もはや小皿を使うなレベル)にして実央に渡すの、愛しすぎる。細かい描写だけどおばちゃんとすずちゃんは絶対そうする人たちだよなっていう説得力がすごすぎるんだよな。マジで大好き 泣いとる
ご飯のあと、海辺のベンチに座って語らう二人。
(「いつもちょっかいかけてくるくせにこのタイミングではちょっかい出さないで2人だけにしてあげる絶妙なエリちゃん」概念を感じる)
しかし実央は翌日本島の施設に移ることになっていると突然駿に告げるのでした…
携帯持ってない実央(推定2012年?くらいなので携帯持ってない高校生も田舎はバリバリいたというかそれがふつう時代だと思う)、番号も交換できないので、本島に行ったらそのうち電話するねと、駿の手に自分の手を重ねて約束します。

「こどもって、ひとりじゃ何もできないよ」

直接にはこの台詞は、自分は携帯も持ってない子供なんだ、ってことを受けていってると思うんですが、そういう意味では二話以降の方が響く部分なのでそちらで細かく話します。
実央、めちゃくちゃ偉くないですか?多分この台詞って、駿によって救われたことで実央が未来を見ることができるようになったからこそ、初めて出てくることのできるセリフだと思うんですよね。自殺を考えるくらい追い込まれていた実央が、駿という下心マシマシへっぽこ男(ゴメン言い過ぎた)に彼岸から此岸へとふっと、なにげなく引き戻されたからこその、そしてでも引き戻されてすぐにこの台詞が出てくることがしんどい。えらい。
分からない、実央が自分とはちがいすぎてよく理解できないんだけど、でも自分がどん底で苦しんでるところを、思わぬ形で飄々と救い上げてくれる大人が現れたら、ちょっとその「恩人」には憧れるかもね(フタを開けたらヘタレだが)

そしてこの「なにもできない子供の自分」を受けての実央自身がどうなるのか?という答えは少し先に出てきます。

まるでいつも通り学校に行くように、翌日実央は島を去っていくのでした。

それからーーーーー
3年の月日が経ちました。(早ェ)
その間に新人賞に入選した橋本、連載ももらって(素直にすごい)作家として〆切に苦しみながらも変わらず京屋で暮らしています。27歳になって全身から発せられるなんか疲れてんな感がすごい ファイトだ…
エリちゃんはこの度京屋を出て二人だけの愛の巣へ引っ越すことに。当然のように橋本をこき使って引越し作業を進めます。
サボってる橋本が読んでる本に挟まる絵葉書が1枚。
ちなみに公開3週目入場者特典としてグッズ化された(なんて?)。

実は小説が入選した折、実央から一言「入選おめでとう」と書かれた絵葉書が送られてきたのでした。でも実央からの連絡はそれきり。約束した電話もなく、駿は「ま、そんなもんだよね〜…」と割り切ったような諦めたようなひとことを漏らします。うわ、キツ…駿がこのあきらめに慣れてるのがさぁ、リアルでキツいよな……

そんな橋本へ追い打ちをかけるようなエリちゃんの一言、「あ、そろそろ新しい住人着くんじゃない?(なんか疑問形だった気がする、なぜ疑問形)」。橋本「聞いてね〜」男の住人の場合カーテン1枚隔てた仕切りだけで大部屋をシェアすることになる橋本、マジか…ともはや疲れ果て何もかもあきらめます、橋本はツカレタノダ。そりゃいきなり知らんやつとカーテン1枚隔てた暮らし今日から始めろ言われたらビックリするわ。そんな大事なことを言わないエリさま鬼だわ…居眠り始めようとする駿に

「寝てるの?」と聞き覚えのある声。
そう、新しい住人とは他ならぬ実央のことだったのでした。

「俺二十歳になったよ
もうひとりで何でもできるし全部自分で決められる
ここで役に立つことも絵理ちゃんに聞いて全部覚えた
俺、駿のこと好きだよ。
だから駿も、俺のこと好きになってよ!
」(まぶしすぎる笑顔)

「こどもって、ひとりじゃ何もできないよ」
そう、実央が去った時のこのセリフは、のちにスパダリとしてカムバックするための布石なのでした…マジか……いやマジか………
(こういう一つ一つセリフの応酬というか活かし方が非常に濃密なのは、実はこのシーンが相当する単行本第1話が元々読み切りとして構想されていて、かなり濃密に構成されてることもあると思います)

これは映画では描かれなくて原作でしか描かれるないんですけど(旧版で続編言うてしまった、訂正)、実央くん、離れていた3年の間、たぶん本島に着いてすぐ?実はちゃんと京屋さんに電話していたのでした。約束を守るいい子だよ。
でもその電話に出たのはエリちゃんだったのでした。エリさまは「あのねぇ美少年くん あいつってねゲイなのよ きいてるー?ゲイっていうのはねー」とマイペース全開(ホンマにシラフか?)で実央の電話を駿に取り付いだりは全くしないのでした(でもそれがエリちゃんの優しさなんだよね)。好きでもないのになんで電話したの?ほんとなんも考えてないのねーというエリちゃんの手厳しい追及に、しかし実央はこれから考えて、好きだったら告白するし好きじゃなかったら友達になると返事をするのでした。(なんだ結構希望あんじゃね?と受話器越しにニマニマするエリさま)駿と全く関わらないという選択肢はそもそもない実央が愛おしい。
それから実央は酒屋さんの配達バイトで知り合ったゲイバーの面々などと交友を深めつつ駿とのことをずっと考えに考え、フリーターとはいえ平然と常時バイトをかけ持ちしつつお金も貯めてスパダリ力を3年もの間磨き続けていたのでした…すげえ…

折れてしまいそうなほど細くて儚い美少年
→元気いっぱい咲き誇る爛漫キラキラ笑顔のスパダリ
という実央くんの成長に完全にノックアウトされたワイ、そして恐らく橋本駿。そんな我々へスパダリ実央からの
「俺、駿のこと好きだよ、だから駿も俺のこと好きになってよ!」
これが、3年考え続けた知花実央の答えです。
やっぱり私は実央のこの情緒全然理解できないんですよね(オイ)。実央という人間があまりにも遠すぎる。多分私はどちらかというと橋本駿側の人間なんですよ。だからその後の会話での駿の反応はけっこうよくわかる。
海辺のベンチに移動してから駿は実央にこう言います。
「冗談だろ。男が好きなんていいこと何も無いよ」
「だから3年考えたよ」
「そんなの思い込みだろ」
「そうかも」
思わぬ返答に黙る駿
「理由なんかいいんだよ。一緒にいたいから、戻ってきたよ」

そう来たか…「理由なんか」どうでもいいんだよね…多分実央ちゃんはちょっとおバカなのでそんなこといちいち考えないんですよ(ゴメン)。でもその「理由なんか」どうでもいい、に至るまでに実央は3年間ずっと考え続けてきたんですよね…その末に実央が出した結論がこれなんだよね…私はどちらかというと橋本駿側だし駿に救われてもいないから、駿を恩人と思って好きになる実央のことはよくわからないけど、でも、そんな愛があってもいいんじゃない?とはすっごい思います

3年前にしょ〜もない、駿のクソしょ〜もない下心で、でもその下心でたしかに救われた実央。実央があそこで救われたことに理由もくそもないんですよ(ただのナンパだから)。
その実央が、三年も考え続けた末に、ゲイであるアイデンティティにさんざん悩みクソ拗らせている橋本駿に放つ「理由なんかいいんだよ」「一緒にいたいから」「戻ってきたよ」。

実央に手渡された救いが、三年後にスパダリになって駿のところに帰って来た。ずっと自分が自分であることに悩み続けた駿を、ただ無条件に肯定する実央。
そんな二人の周りに咲き誇る「オオバナアリアケカズラ」(名前が明言された初出はトークショー)。かつて実央が株分けしてくれた花をベンチの周りに植えたものです。橋本が実央に言って曰く「育ちまくってお前そっくり」。花言葉は「恋に落ちる前」「永遠の幸せ」「楽しい追憶」

すげえな…なんかもう運命としか言いようがなくないですか…?

ちなみに実央が「一緒にいたいから、もどってきたよ」と言いつつベンチに座る橋本の前に跪くの、スパダリすぎて死んだ(死んだ)。

そこからなんかいい感じになって(語彙力の死)キスしようとする実央、しかし
「なんかッ、腹減ったな」とヘタレ橋本にキスを回避され
「なんで今〜〜⁉️⁉️⁉️」とガン萎えしますが、
振り返った駿に一言「おかえり、まだ言ってなかったから」
と言われ、明るい激マブ笑顔で「ただいま!!」と返すのでした。

ここまでで冒頭1/4(推定)(計ってないのでわからん)〜驚愕〜
なんつ〜濃さ😂😂😂 なぜ推定1/4かというと(筆者が挿入した続編由来の回想シーンなど除いて)ここまでのシーンが映画化原作『海辺のエトランゼ』単行本収録全4話のうちのたった第1話部分だからですッッッッ!!!!!!
やべぇ〜〜〜〜紀伊カンナやべぇ〜〜〜〜〜!!!!!(敬称略)

まだキスもエッチもしていない…そこのBL好きなアナタ、あきらめないで、キスもエッチもあるわよ…coming soon...♥

そこのBLはあんまり得意ではない貴方、既に十分理解してもらえたと思いますが『海辺のエトランゼ』はBLという枠には到底収まらないデッけぇ愛を描いた作品なんだってばよ…頼む…少しでも気になったら…劇場に…観に行ってくれ……まだ、まだ君に観てもらいたい続きがあるんだ…ここで終わると…思うなよ…(なんかちがう)

未鑑賞でこのレビューを読んでくれている方がもしいたらさすがに一度本編を鑑賞することをオススメいたしますゎ。ワイの雑文はいつでも読めるから…。

…そして…第二話相当部分以降について知る覚悟はあるか?

6)中盤① ~映画版のあらすじと魅力~

実は第二話相当部分、第一話のとある分岐点から原作と映画がパラレルワールドのようになっていて物語を追うこと自体に一番素朴な楽しみがある章だと思ってます。
が、そのまえに~~~まずは映画での展開とその魅力を序盤よろしく一通り追ってみましょう!!アヘアヘ(人とおり次の次の節まで映画版の紹介をせずに原作との対比に重点を置いて書いてたらあとあと映画版について書きたいことが溢れ出してきて結局映画版の魅力について改めてもっと書くことにした躁状態)
特に原作とちがいが多くてほとんど記憶で書いてるのでちがったり抜けてるところがあるかも

駿と実央の「おかえり」「ただいま」から場面が切り替わって、自転車で坂を上る実央。お父さんとお母さんのお墓参りに来たのでした。
「来たよ、父さん母さん、今日は元気?」再び帰って来た故郷での暮らしに実央はすっかりなじんでいます。
お供えしたあと食べてる混ぜ込おにぎりだけで飯テロ(食べてるときのサクサクって音がむちゃくちゃ良い)。

実央が京屋に帰ってくると台所で執筆している駿。進捗はゼロです
表情が完全に死んでて観るたび必ず笑ってしまう。続編の「春風」の駿は終始こんな感じです
そんなうめいてる駿の隙を見て横からキスしようとする駿。
しかしアッと間の抜けた声と共に何かを思い出した駿にびっくりしてあえなくキスは失敗。公式TwitterがゲキカワGIFを作る天才ぶりなので下に貼らざるをえない。

「たのんだやつ買ってきてくれた?」「へ?」「冷えペタ」「あ~~わっすれたッ」
実央は駿に頼まれた冷感シートを買ってき忘れていたのでした。あ~~バイトがあるからそのあと買ってくるねと、あわただしく去る実央。

夜になり宿に併設の食堂であわただしく給仕する実央。
外には冷えペタを自力で買って帰って来た駿(不憫)。店の中からお客と実央の会話する声が聞こえます。

「ボクちゃん島の人~?」
ッボッ!?、、そ、そうで~す」(動揺の仕方が天才カワイイ
「名前は?」
「チバナくんで~す」
「歳は?」
「ハタチ」
「(食い気味)若っ!?!?え、彼女は????あ~~赤くなった~~笑」

そのやり取りを通りすがりに聞いている駿(不憫)(冷えペタはもしかしたら実央がバイト帰りに買ってきたのをおいて行ってくれたのかな?という解釈も不可能ではないですが私は不憫推しです)

まあ、不憫さはたしかにあるのですが、このシーンは映画の中では結構重要なシーンで、観光客=島の外の世界の人々=駿が逃げて来た世界の住人、と実央が交流する姿を描いてるシーンなんですよね。
実央が帰って来たときの告白で駿が救われたことは間違いないんだけど、でもまだ駿の中にはまちがいなく、まともな人間としての実央を自分の側に引き込んでしまう/しまったことの罪悪感みたいなものがあって、だから実央に対してもう一歩踏み出すことができない、ということをにおわせる描写です。

というか「ボクちゃん」、あとあとおもろいので覚えといてください。

店の手伝いが終わり、風呂から上がった実央が部屋に帰ってくると、縁側で寝ている駿。
原稿の進捗はクソだけど今から寝るヨ☆と大胆不敵にも宣言する駿(もうちょっとシリアスなシーンなのだがよくよく考えるとまぎれもなくそういうことなんだよな…)に、
「じゃあ今日はそっちで寝てもいい?」と目を輝かせる実央(多分エッチとかではなく隣で寝たいだけだと思う)を、
しかし駿は「フランクすぎかよ、お前ってホントなんも考えてねえのな」とすげなく突き放します
ちなみにこのシーン、パンフに載ってる絵コンテに実央の顔について「なんも考えてなさそうな顔」とわざわざト書きされていて実際マジでなんも考えてなさそうな顔をしてるので毎回笑ってしまう かわいい 撫でたい

原稿の進捗だったりパンフとかいろいろ見ると笑えてしまうところもあるんですけど、ここもまぎれもなく駿の苦悩を表しているシーン。
だからさ~~~~駿、おめえのそういう不器用なところさ~~~~ってなる(不器用な語彙力)
これ、序盤の「理由なんかいいんだよ」に対する駿からの突き放しなんですよね。いろんなことを一足飛びで飛び越えて距離を詰めようとする実央(そこには三年考え続けた蓄積あってこそなんだけどね)に対して、実央のことを想うからこそ考え続けてしまう駿のもどかしさ。でもさ~~~~そこで実央に甘えないところが橋本駿なんだよね、橋本駿のそういうところほんと大好きだよ
なにげにインテリ(作家)vs非インテリ(なんも考えてなさそうな顔)という対立軸(?)がここで生まれてることにも感動(?)。ほんとにおもしろいよなエトランゼ

駿にすげなくフラれてつまらなそ~に布団に寝転がる実央。仕切りのカーテンの間から駿の執筆する姿が見えます。くわえていたアイスの棒をゴミ箱に放り投げて実央は眠りにつくのでした。
何げないシーンだけど、この二人がこの仕切りのカーテンと言う一見なんでもない障壁を越えるのにどれだけ悩んでいるか、ということを伝える大事なシーン。

シーンは夢の中の実央の回想へ。
知花家の朝は早い。女手一人で実央を育てるお母さんのために、ちび実央は早起きして混ぜ込みおにぎりを作ります(だからお墓参りでそれをお供えするんだよね…)。まあ台所がぐちゃぐちゃに散乱していますがご愛敬。実央の思いやりがうれしいお母さんは、実央と仲良くおにぎりを食べるのでした。
お母さんとちび実央のやり取りがむちゃくちゃかわいくておもしろいしここは回想の中でも映画オリジナルシーンなのでぜひ劇場で。

回想にも登場した目覚まし時計が鳴って目覚める実央、まだ6時なのに起床する健康優良児です。お母さんのお手伝いをしたりして昔から早起きだったんだろうな…(ちなみに筆者がこの文章を書いている今3時前、寝て)
駿は徹夜で執筆継続中。実はこの時点で〆切を過ぎている。寝てないの?という実央の問いかけにも生返事です。そんな限界〆切作家駿の朝ごはんに混ぜ込みおにぎりをきちんと置いていってあげる実央という天使。

商店の前に佇む実央。社用車に乗った絵理ちゃんが通りかかります(なにげ絵理ちゃんの職業が暗示される原作・映画通して唯一のシーン)。
今日そっち行くけど何か食べたいものある?という絵理ちゃんにカレーと即答する実央、好きだねえと苦笑する絵理ちゃん。
「でどう~?作家先生との暮らしは?」ニンマニンマしながら尋ねる絵理ちゃん
しかし実央は元気のない様子で「まあ…ふつう、かな…」と答えます。

京屋の台所でカレーを作る絵理ちゃん(絵理ちゃん鈴ちゃんはマジで実央にすごい優しい)。ずっと執筆していた駿が朝実央の置いておいてくれたおにぎりの皿を片付けにやってきます(伏線です)
「あら、大先生」
「ハァ~?」
「あんたねえ、もう少し構ってやりなさいよ、忙しいフリか、ダサッ」(いいぞもっと言え)
「ふりじゃねえし」
橋本駿、続編もそうだけど基本余裕のない人だから、許してあげて…

夜になってまだまだ絶賛執筆中の駿。仕切りのカーテンを少しあけて、実央がこちらをうかがっています。

ミ「それ〆切いつなの?」
橋「昨日」(衝撃の告白)(知ってた)
ミ「エッ」
橋「明日出せば間に合う」
ミ「それ間に合ってないのでは………(やや不機嫌)駿はいそがしいんだね…」
橋「お前もだろ」
ミ「えっ?」
橋「接客とか」
ミ「あー店?店は別に」
橋「(頬杖をついて、さえぎるように)ボクちゃんモテモテ~~

キレた実央が投げた少女漫画(『姫ちゃんのリボン』集英社)の角が後頭部にクリティカルヒットしイテッ!?なんだよ!?と声をあげる駿。実央はカーテンををがさっと閉めて寝てしまいます。
この「ボクちゃんモテモテ~~~~~」っていう駿の悪いところ/愛おしいところ凝縮したようなセリフがめちゃくちゃ好きなんですよね。原作には実央が食堂を手伝うシーンがないのでこれも映画オリジナルなんですけど、この台詞が映画版オリジナル要素の中でも一二を争うくらい好きです。
ちなみに実央が投げつけた本は元々亡きお母さんの蔵書だった少女漫画で、そんな大事なものをハシモトの頭部に投げつけてしまって良いのか…でもなんか本を投げるものとして扱える実央の精神性が絶妙に好きなんだよな…いや私は本投げたりしないけど…なんかすき…

翌朝、京屋にきていた絵理ちゃん鈴ちゃん、通りすがりの実央に鈴ちゃんが揚げたドーナツを勧めます。
「いっこも~らい」「あ、家でも食べたでしょ!」「ん~すずのどーなつおいひ~~~」「…んもォ…」(ラブい)

それに対してテンション低い実央「二人は仲いいね…」
絶妙な間をとって返事する絵理ちゃん、とことん実央のことよく見てるよな…まあ普段元気な実央がここまでダウナーだったらそりゃ心配よね…だって実央と駿が知り合った時から二人のこと知ってるし実央を京屋に呼んだのも絵理ちゃんだからな…待て橋本ちゃんと絵理ちゃんにお礼言った?
「まァね~鈴はかわいいから~(照れる鈴ちゃん)。
そ っ ち の と ち が っ て(言い方がぐう好き)。ねェ~駿?」
実央が振り返ると駿がいました。
「(心の底からウザがっている二徹明けの声)…ナンダヨ…」
めでたく原稿が上がった橋本駿、クソ眠い身体に鞭打って本島まで航空便を出しに向かうところなのでした。
気が利く絵理ちゃん、実央に一緒に本島行って来れば?と提案。店は私たちがやっとくからさ、と状況がよくわかってない鈴ちゃんも巻き込んでゴリ押し。でも秒でうん、いいよ!と言ってくれる鈴ちゃん天使。

高速船の船内から外を眺める駿。帽子をかぶった実央がペットボトルのコーラを差し出します。珍しくかぶっている帽子について尋ねる駿。
実は人と目が合うことが苦手な実央(けっこう驚きの設定じゃない?)は、人が多い本島に行くのにわざわざ帽子を持ってきたのでした。は?いつも接客できてんじゃんと言う駿に、

ミ「だから、できるようにがんばったんだよ」
橋「マジか、ちゃんとしてんなァ~」
ミ「ヘヘ、まァね!」
橋「ちゃんとしてんな~ その調子で彼女でも作ればいいのに もったいないよな」
ミ「………は?何言ってんの?」

完全にやらかしてる橋本。実央、松岡さんの最高の演技と最高の笑顔の作画が合わさってサイッコ~~~~~にかわいい「まァね!」が仕上がってるのですが、(ちょうどこのシーンのGIFを使っているツイートが現在公開中の劇場一覧も挙げているのご参照ください

そのあとの駿のひとことで全てぶち壊しです。松岡さんの「…は?」が怖い。
余裕のなさと寝不足と罪悪感と全部ないまぜになってしまってつっけんどんに出てしまった「その調子で彼女でもつくればいいのに」。でもわかってしまうんだよな…そうやって言ってしまうメンタル…もう解説とか要らないですよね…私もつらいです…

下船した二人、勝手に帰るから、といって実央は歩き去ってしまいます。
空港から原稿を送り出してさまよう駿。
桜坂劇場(映画館・『海辺のエトランゼ』も上映していた)の前で立ち尽くしていると、携帯に実央から電話が。

「駿は俺が馬鹿みたいに盛り上がって何も考えてないと思ってるだろうけど 駿と別れた後ずっと考えてた 
俺、駿が好きだよ けど、駿はそうじゃないの?
俺が帰ってきて迷惑だった?」
「…実央、今どこ」
「桜坂のライブハウス」
「そっち行くからそこにいて」

実央のもとへ走り出す駿。
自分の噂話をされている教室から逃げ出した、高校時代の嫌な記憶がよみがえって重なります。それを振り払って、肩で息をしながらやっとのことうずくまっている実央のところにたどりつく駿。
「俺は駿が好いてくれてると思ったから好きになったんだよ
俺が欲しいのは彼女じゃないよ!」

うずくまる実央の手を取る駿、手を引いて駿が向かったのはホテルでした。フロントで手続きする間もずっと手をつないだままの二人。好奇の視線にさらされて、実央は一層強く駿の手を握り返します。この細かい描写、映画オリジナルのすばらしい演出です。

部屋に上がると貪るように、初めてのキスを味わう二人。しかし駿がポツリといいます。
「なんで、帰って来たんだよ…」目を見開く実央
「…俺なんかじゃなくて普通の女の子好きになった方が幸せだったのに
そう、思っちゃうんだよ…」
顔を埋める駿を愛おしむように抱きしめる実央

ベッドに寝転ぶ二人。

橋「おまえ、女の子としたことあんの?」
ミ「あるけど…」
橋「俺もあるよ」
ミ「できるの!?」
橋「一応。 でも俺、男とはしたことないんだよな~」
ミ「ないの!?!?なんで!?!?」
橋「告白したことねーし 友達だからな 言ってダメになるなら、言わない方がいいだろ
まあでもお前には声かけちゃったなー…なんかほっとけなくて」
ミ「……駿、セックスしよう!!!!
橋「ホァっ!?俺、二徹明けナンダケド…」

実央の必死の訴えもむなしく二徹明けの橋本駿はぐーすか眠りに落ちていくのでした、こう言い残して
「あ~、おにぎり、ありがとね~」(伏線回収)
「も~~~~なんで寝ちゃうんだよ、バカ゜っ!!」(これを聞くためだけでに劇場に行く価値あり)
仲良く眠りにつく実央なのでした。

~二話部分おわり~

ポジティブな意味で最終回か?????ってくらいの盛り上がり。こんなに盛り上がった二人のその後をまだ見せてもらえることが贅沢すぎる。まだまだエトランゼは終わらねえゾお~~~~~!!!!!!!
毎回ボロ泣きしてる桜坂のシーン。私は駿に感情移入するタイプなので映画版は特にヤバい。実央のところへ走っていく現在の駿に、教室から逃げ出した高校時代の駿のトラウマが重なる描写があまりにしんどすぎる。つらい記憶と実央への愛おしさと睡眠不足と余裕のなさと全部合わさった駿に寄り添う窪田ミナさんの音楽最高で絶対泣いてしまう。実央のもとへ走っていく現在の駿と、教室から逃げ出す高校時代のトラウマでの動きが完全にシンクロしてるんだけど、現在軸には駿を応援するように背景に咲き乱れる鮮やかな花を入れましたって監督が言っていて泣いた。
9回も観たんやから覚えとるやろ…と思ったら桜坂の辺りとか毎回泣いてるので逆に台詞の細かいところを覚えてなくて修行不足を感じました。(桜坂での携帯越しの会話書き起こしは@egg_yudetaさんにお助けいただきました。)

あ~~~~~やっと駿は、すこしだけ自分のことをゆるせたのかな、と思うとほんとに涙出て来る。駿の言葉が全て語っているのでもはや私が注釈する余地がない。ありがとうタイシムラタ、橋本駿に命を吹き込んで橋本駿に自分を許す機会を与えてくれたすべての人に心の底からお礼が言いたい。ありがとう。
なんかさ~~~~【ここから最新巻ネタバレ】5年後になると立場が逆転してて「駿は5年も一緒にいて飽きない…?」って実央の方が不安になっているのに対して、駿の方が「はぁ~~~~「月が、きれいですね」の意味、わかる???我、君を、愛す、だよ!!バァ~~~カ」って返すの、ほんとに最高なんだよな。ハシモト~~~~~!!!!!!お前五年前のお前のこと忘れてねえからな俺らは!!!心の底からおめでとう!!!!!!【最新巻ネタバレおわり】みんな「春風のエトランゼ」も読みましょう。

さて…映画版の流れは楽しんでいただけたでしょうか?
上にも書きましたが、実は二話部分だけ、原作と映画ではパラレル並みに流れが違うんですよ。本作は大橋監督が絵コンテも脚本も務めており、人物たちの感情の流れを整理するために原作と色々変えたところもあると各種媒体のインタビューなどでお話になってます。
ただ、最終的に全く同じところに着地するその手際が鮮やかすぎるし、ぜひこれは原作の流れも同時に知ってもらいたい!!!!ので、次節まるまる原作の流れを改めて追うことにします。二つ知れば50000000000000000000倍楽しい

実は二話部分、先に元気な時に次節を書いたので次節が本当の本番みたいなところがあります(驚異的な前置きの長さ)

中盤① 続き(ある意味本命)
~原作第2話とのパラレルエトランゼとしての~

実は原作と映画の大きな違いはたった二つに整理することができて、それは
1.電話の「約束」について
2.いつ初キスするか?

の二つ。
2についてはまあ既読の人はわかってる未読の人はネタバレごめんだけどなんとそもそも《《《高校生の実央が島を去る前日》》》に既にキスはしてるんですね、口じゃないけど
(ここはもう2話の範疇じゃないかな~と思うので詳細は書かないけど原作1話にしかないそのシーンはぜひ原作で読んでほしい、しかし映画版の二人の居場所をベンチに固定するという判断は映像効果とかを考えても映画的に作品が締まってそれはそれでめちゃくちゃ英断だと思う 全肯定human)
それに引き換え映画だと初キスは本島のホテルまで驚異の3年お預け。不憫
(あくまで描かれている限りの。ワシらの観てないところではキスしてないといつから錯覚していた??たぶん実際してないけど

私はキスされてるのに心を開ききれないうじうじ原作橋本駿も心を開いて自分から初キスを奪いに行くちょっと雄の映画橋本駿もどちらも等しく愛すべきハシモトシュンって感じで大好きです。マジで好き ムカツク~!(愛)

初キスのタイミングが変わったのはむしろ結果であって目的ではなかったのでは?と個人的には解釈しています(普通に初キスのタイミングちがうifがあったら読んで/観てみたいので十分目的にもなるけど)。そしてキスのタイミングと連関して大きく変わったのが、この映画の代表的なオリジナルポイントのひとつである、1の「電話の「約束」について」なんですね。
原作と映画どちらがいいか、という話じゃなくて原作と並び立つ「もう一つの『海辺のエトランゼ』」を見せてもらえたことが私は本当に心の底からうれしい。そんなこんなでいったいぜんたいどうなってるかを今からつらつらとプレゼンしていきます。(ナガクナルヨ~)

パラレルエトランゼへの正真正銘ファーストコンタクトは上にも書いた実央が島を去る前のキスなんですが、場所は変わりますけど台詞のやりとりとしては実は映画とそこは大きなちがいはなくて、最初の主要な分岐はみんな大好き・育ちまくって実央そっくりなオオバナアリアケカズラが見守る「おかえり」「ただいま」シーンです。literallyみんな大好き
な~んと原作では「理由なんかいいんだよ 一緒にいたいから戻ってきたよ」のあとは以下のようになっているのですね。(映画観て久々に原作読み返した時橋本駿みたいな奇声アゲテシマタよね)

橋「…お前 電話するって言ったろうが 電話くらい簡単だろ
戻ってくるなら もっと早く帰ってこいよ」
ミ「ごめんね」
(ここでキスする)
橋「なんか…腹減った」
ミ「ナンデイマ~~~!?!?!?」
橋「おれはな~ もう待ちくたびれたよ」
ミ「えっ」
橋「もういいや 何か食お」
ミ「ほんとごめん…」
橋「はいはい許す許す

どうあがいても腹が減る橋本マジで好き お前はいつもそうだ いっぱい食って大きくなれよ

そう、映画だとわりとナアナアにされている実央からの電話の約束を原作駿はけっこう根に持ってる(ように見える)んですね。
そして、これは映画も共通ですが、実央が島を去る前日のやり取りを振り返るとこの電話の「約束」が結構重要なことがわかります。
明日本島に引っ越すんだ(ミ)
→連絡先、携帯は?(橋)
→持ってない(ミ)
→こどもって一人じゃ何もできないよ(ミ)
→あっち着いたら電話するね(ミ)
実央の「こどもって一人じゃ何もできないよ」はまあ幅広くとれば早く大人になりてぇ~~ってニュアンスでしょうけど、直接には直前の、自分は携帯を持ってない、自立した個人の証である連絡先を持っていない、というような意味のことを受けての発言なんですよ。
で、その後帰ってきた実央がスパダリとして「何でもできるようになって」帰って来たというからには、まずは電話の「約束」がクリアされてなければならない、というのは筋道としてハッとするほどその通りだなって感じなんですよね。実央にとって、自分がスパダリとして帰還するには、実は「電話の「約束」」のクリアが不可欠なんですよ。
駿、小説家らしくクリティカルな急所をヒットして突くな…たぶん無自覚なんだけどね…
で、駿ははいはいユルスユルスとか勢いで言ってますけど、たぶん駿は本当にここで半ば許していて、この「電話の「約束」」が果たされないままでは筋としては進みようがない、っていうのは実は実央の立場であり実央の想いの話だと私は思うんですよ。
駿もこのあと電話の約束の話を全く出さないわけじゃないし、ちょっと根に持ってる…?ように見える描写もないことはないんですけど、たぶんそれは駿自身の理由から実央との関係に正直になれないことの隠れ蓑・言い訳・口実にしか過ぎないと思うんですよね(あとで具体的に流れを追います)。

極論、原作2話は、実央がスパダリとしてやり残した、「電話の「約束」」を果たす話です。なぜかというと原作2話は1話の駿視点から切り替わってほとんど実央視点で話が進むから。映画の2話相当部分は、実央のスパダリへの最終覚醒のキーである「電話の「約束」」というモチーフは残しつつも、原作における「はいはい許す許す」のあとの駿、約束のことはもう許したけど、それでも彼自身の理由で実央と関係することをためらう駿をクローズアップして、その心情をわかりやすく描写するために新しい要素を置いた構図に全体が換骨奪胎されています。

つまり映画と原作は、同じ内容を実央と駿のどちらに視点の重点を置いて描くか、という違いで生まれたパラレルだと私は思います。なんのこっちゃ?と言う方が大半と思いますのでこれからは具体的に書きます、待たせたな(マジで待たせてスマン)

で、やっと2話について語る準備ができたわけですが(どういう形で書いていくか考えあぐねている)まあ順番に追っていくしかないですね…

原作第2話もお墓参りのシーンから始まります。大まかな流れは原作も映画もしばらく変わりません。
あいかわらずおにぎりを食べてますが(いっぱい食ってでかくなれ)、


「今日はね駿に部屋が汚いってすっごい怒られたよ
絵理ちゃんと鈴ちゃんもずっとケンカしてて みんな朝から険悪でさ
(せっかく一緒にいるんだから)
仲良くしたらいいのにね」

なんだか不穏、そして序盤からむちゃくちゃ泣かせに来ている…

その後京屋に帰ると駿が悶絶ゲンコーマンになっています(でも原作だと自己申告で3行進んでる ホントか~?(笑))
原作オリジナル幻の「食パンに挟んだおはぎ」とかいう劇物を食べる実央ですが、冷えペタの買い忘れを指摘されおはぎパンを慌てて食べて買いに行こうとしたーーーーーーその時歴史が動いた。

ミ「ごめん!食べたらすぐ買ってくる」
橋「お前な〜約束はー
(ここでキスしようとする実央)
守れよな!(実央を押し返す)」
ミ「なんで避けるのさ!」
橋「お前はフランクすぎるの!」
ミ「いいじゃんしようよ!」
「しないの!」「しようよ〜」
エリ様「公衆でじゃれつくな!!!!💢💢💢💢💢💢」エリ様去る
橋「怖えー…女のヒスは性質悪りーな」
(隙を見て駿にほっぺキスする実央)
橋「実央!」
ミ「 いってきまーす😁」

これがとっくの昔3年前に初キスを済ませている世界線の実央です…映画の世界線の橋本「フランクすぎかよ…泣」 いや、ミオミオかわいすぎない?
実央のあまりの激マブキュートさに気を取られてしまうんですが、駿の「約束はー 守れよな!」という思わせぶりな台詞は映画には登場しないんですよね。
この時しているのは明らかに冷えペタの話なんだけど、実央は「約束」という単語に反応して、すぐ次のコマから冷えペタを買いに行きながらも昔を思い出す実央の回想が始まります。
実央がほんとは電話していたこと、でも電話に出たのは絵理ちゃんだったこと

エリ「あのねぇ美少年くん、あいつってねゲイなのよ」
ミオ「……」
エリ「きいてるー?ゲイっていうのはねー?」
ミオ「わかるよ💢」
エリ「なによ〜そんなら返事しなさいよ」
ミオ「わかるし 知ってるよ」
エリ「あらー?君もそうなの?」
ミオ「違うよ (違うけど) 電話するって 約束したんだ
エリ「はぁ?わかっててその気もないのに?やめなさいよー ちょっとは考えなさいよ やっぱガキねー」
ミオ「…わかったよ じゃあ考える 考えてまたかけ直す」
エリ「考えて〜?」(むちゃくちゃニヤニヤしとる絵理ちゃん、ラブい)
ミオ「好きじゃなかったら友達になるし 好きだったら好きって言う」
店頭で冷えペタを手に取る実央
(約束… 約束かぁ…)

帰ってくると縁側に寝ている駿、実央手ずから冷えペタを貼ってあげます。ヒッ、と奇声を上げて起きる駿、ウケる(愛しい)
原作ではここで今駿が書いている原稿の締切の話をして、それから一緒に寝てもいい〜?!?ダメ、のやり取りをします。映画の「フランクすぎかよ」に相当する台詞は原作だとおはぎパンと一緒に出てきてしまってるんですね。実央がひたすら一緒に寝よ~よ~とおねだりするのに駿はひたすら「ダメなもんはダメなの!!」と返していて、実央視点で駿が何考えているのかよくわからない、というのが強調されてます。
場面変わって一人で寝ている実央、「戻ってくるならもっと早く帰ってこいよ 電話くらい簡単だろ」と駿の言葉を反芻しながら、(ようやく帰ってこられたのに)と考えながら眠りにつきます。

お分かり頂けただろうか。お墓参りから始まる一日の流れが原作と映画だとかなり異なることに。映画だとこの部分は
冷えペタ買い忘れ→バイト→店の手伝いとミオミオお客さんとのやり取り・結局自分で冷えペタを買ってくる駿→「一緒に寝てもいい?」「フランクすぎかよ、お前ってホントなんも考えてねーのな」→カーテンの間から駿を見て口にくわえたアイスの棒をゴミ箱に投げる
になっています。
原作だと駿との距離が微妙縮まらないのは、「約束」を守れなかったから?と実央視点で反芻し続ける場面なのに対して、映画では転じてその裏側の、駿の方がアプローチに踏み出せない理由を、駿の視点から描いています。

このさ~~~~~すれ違いだよね~~~~切なすぎるよね。実央が「なんも考えてねー」(映画・駿のセリフ)ように見えるのは素朴に「みんな仲良くすればいいのに」(原作・実央の独白)と思ってる裏返しからなんだよね。実央の「みんな仲良くすればいいのに」の前には当然「生きてるんだから」がつくんだよね、言わないけど。これは実央にしか抱けない想いだし、考えが足りないといえばそれまでなのかもしれないけど駿との距離が縮まらないことを、自分が「約束」を守らなかったからじゃないか?と考えてるの、めちゃくちゃ良い子過ぎませんか?愛じゃん~~~~~

いや〜〜〜〜〜最高のパラレル
原作の奔放でキュートな実央も大好きだけど食堂のお客さんにからかわれて「ボッ!?」ってたじろぐ映画実央も愛おしい。ていうか民宿や食堂にお客さんが来てる描写は映画にしかないですからね。飲食業に携わる知花実央が見られるのは映画『海辺のエトランゼ』だけ!

映画では翌日商店の前で絵理ちゃんと実央が会話しますが(絵理ちゃんがダイビングスクールの車を運転してるところが見られるのは映画『海辺のエトランゼ』だけ!)原作では打って変わって絵理ちゃんの方から京屋に訪ねてきます(鈴ちゃんと喧嘩して意地を張る絵理ちゃんが見られるのは映ry)。

ミオ「あれー絵理ちゃんだおはよう」
エリ「おー」
ミオ「今日は休み?」
エリ「そーよ暇だから来たの」
ミオ「まだ仲直りしてないの?」
エリ「全くその通りだけど余計なお世話よ いいわねあんたらは仲が良くて」
ミオ「そんなことないよ」
エリ「どこがよやめてよ」
ミオ「いやほんとに」
エリ「そうなの? 男共も大変ねー」
ミオ「そうだよ大変大変 そうだ絵理ちゃん 携帯電話ってすぐ持てる?」
エリ「持てるわよ身分証と印鑑あれば 本島行かないとダメだけど あんたホントに携帯持ってないのね」
ミオ「うん(本当に簡単だ)」
(このあたりの会話に全く口を出さないで二人のすぐそばでひっそりと野菜をいじり続けているみやこおばちゃんが愛しすぎる)

結局このあとなりゆきで駿と本島に行くことになるから、もし実央が一人で携帯を契約しに行ってたらどうなってたのかは永遠にわかんないけど、これ絶対携帯契約して駿との約束を果たそうとしてるのは間違いないですよね。
なんか、けなげ~でも、いいこ~でも、なくて、なんかわからんけど実央のこういうところスパダリだよな…すげえ…

あと映画だとあんなによく気が付く恋愛仕事人ぶっていた絵理さまが原作だと鈴ちゃんと喧嘩してちょっとポンコツ化してるのサイコウなんだよな。続編TVアニメ化したらエリスズの日常で3話くらい使っても良いんですよ?
映画では実央にあんたも本島行ってきなさいヨ~と猛烈な後押しをしてくれる絵理ちゃんは原作に不在、ただここで携帯について聞いたことで実央はのちのち駿が原稿を出しに行くときに自発的についていくことになります。【最新刊ネタバレあり】ところで春風④巻、原作だと一人で初めての携帯を選んだ実央が一緒に駿のスマホを選びに行くことになるの、めちゃくちゃ時限式爆弾じゃないですか?【最新刊ネタバレおわり】

携帯について聞いた実央、原稿マン橋本のところへ

ミ「駿~麦茶いる?」
橋「いる」 ニャー
ミ「調子どう?」
橋「サイアク 絶対終わんない間に合わないもう駄目だ」(涙ぐましすぎる、頑張れハシモト・筆者注)
ミ「はいはいがんばって~~ 俺は部屋片付けよ~」 ニャーン
「お前足拭いてないじゃん」ニャー「ほら足出せ」ニャーン?
「邪魔したら外出すからな」ニャ~「あー爪出すなよ 痛いって」ニャ~ン
(ニャンコの世話をする実央を半開きの口で見つめる橋本)
「あごめん うるさかった?襖閉めるよ」ウンャ
橋「ああ別にいいよ いるから見てただけ
(切なそうな表情の実央)
橋「…? なんだよ …実央?」
ミ「おれ駿が好きだよ 帰ってきて良かったよ そう思ってるよ でも駿はそうじゃない 俺が約束守らなかったから? 戻ってくるの遅かったから? だから もう好きじゃなくなった?
(鳴り出す電話)
ミ「…… …出なよ 電話編集の人でしょう困るよ 俺外出てるから」

駿が電話に出る中、実央は一人で雨の中海岸を歩くのでした。

空気を読んで沈黙できる猫ズ、ラブリー
そして明らかなことですが、映画版の桜坂の会話はこのシーンからの転用ですね。
触れてなかったんですが、実央はこのシーンまでに何度も駿に部屋片付けろと言われ続けてるんですね。そのたびにえ~とかはぐらかして一緒に寝よ~よとか言っていたわけですが、ここに来て駿に言われた通り部屋を片付けようとしている。
そこに対して「ああ別にいいよ いるから見てただけ」って、なんか…こう…ここまでの実央の思考の推移を見てると…絶妙に無神経…
駿、ひとに「なんも考えてね~のな」とか言う割に(映画版だけどネ)この時の表情、実央が「なんも考えてね~のな」って言われたときの表情と鏡映しかってくらいなんも考えてなさそうでシリアスなシーンなのにちょっと笑ってしまった。たぶんほんとに何も考えてないと思う。
絶妙なタイミングでかかって来たへんしうからの電話でそれ以降会話が描かれることもなく実央は眠りについて、翌朝。

仲直りしたようなしてないような絵理ちゃん鈴ちゃん(マジでラブリーなので読んで、そして絵理鈴は余裕が出て来ると基本実央にやさしい)が作ったおはぎを持って駿のところへ。原稿に没頭する駿は生返事をくりかえすばかり。原稿終わったら一緒に空港行くから、と駿に言ったのも「聴こえてないな まあ…いっか」と微笑んで見守る実央はほぼママ。
そうこうするうちに原稿が終わった駿、夜になっていますが横で寝ている実央を起こして本島へ向かいます。
そうなんですよ、私がむちゃくちゃ大好きなタイシムラタ渾身の「ボクちゃんモテモテ~~~」は映画オリジナルなんですよ…なぜかって原作では実央が食堂で働くシーンがないから…

とにかく高速船の中に場面は移ります。ここでは原作と映画の流れに大きな違いはありません。相変わらず彼女つくっちゃないよYOUと無神経発言をかます橋本、改めて2話部分は原作の方が駿の苦悩の描かれた方がライトなので無神経がよりすごい。

空港便を出した駿のところへかかってくる一本の電話。相手は知らない番号です。

橋「はい(編集さんかな)」
ミ「もしもし 知花ですが ハシモトさんですか」
橋「はい」
ミ「約束 守ったよ
橋「…………… 今どこ 実央」
ミ「…空港の携帯電話の店の前」
橋「は?空港?なんだよ 同じ所来てんじゃん」
ミ「俺ね 自活できるまで 帰らないって決めてたんだよ 帰ったら直接言おうって」(駿、実央の腕をつかむ)
「思って 俺は駿が好いてくれてるからって思ったから だから 好きになったんだよ 俺が欲しいのは彼女なんかじゃないよ!」
橋「…… もう船がない」
ミ「…? そうなの」
橋「帰れないんだよ 実央 今晩寝るとこ どっか見つけないと」

ちょっと言葉が出てこない 泣きそう

約束守ったね、実央

もうあんまり私が語る必要ないと思うんですけど、原作にしかない駿の「帰れないんだよ 実央」っていう駿の台詞が苦しすぎて

散々踏み出せなかった駿が、実央へ踏み出す決断をした第一歩の台詞が「(もう)帰れないんだよ」って、めちゃくちゃ苦しくて切なくないですか?そりゃ踏み出すのに時間かかるよ あ~~~~でもそういうところちゃんと年上っぽくてすごい好きだよ駿 そして駿が年下シュミじゃないし…っていう理由も何となくわかる

これ以上言葉が出てこないので閉廷します。
大丈夫、ここから先は原作も映画も同じ。私たちの大好きな実央の元気な「バカ゜っ!」が聞ける未来が待ってます。


中盤① まとめと補足
~どう転んでも二徹明け~

まさか第2話相当部分だけで三つも節を使って書くことになるとは思わなかったんですけど、前節の最後が(私が)うるっときてしまう展開でちょっとそのままは書き継げないなと思ったので節を改めました。

原作も映画もどっちもよくてどっちも最高でどっちも至高です。
改めて逐一振り返ってわかってもらえたと思うんですけど、原作は徹底して実央が「約束」を果たす話なんですよね、この部分は。
対して映画では、実央が京屋を手伝う中で、島の外から来たお客さんとコミュニケーションを取ったりする「ちゃんとしてる」姿を見て、駿が足踏みしてしまう理由と苦悩が駿の視点から描かれる。
映画のために原作を土台にこの流れを改めて構築した大橋監督と紀伊先生、無限にすごくないですか?もうすごすぎんよ。いやさ、たしかにどちらのバージョンも視点を完全に固定してるわけではなくて二人の視点は混在してるしこれは極端な話なんだけど、実央が駿を想う物語と駿が実央を想う物語のどちらを描いてもそれは『海辺のエトランゼ』だって、原作と映画両方で堂々と見せてくれたんだよね。本当にありがとう。お礼が言いたい。

そして映画ではここで初めてキスする二人ですが、でも原作でも、駿の方からキスするのは描かれている限りこのシーンが初めてです。まだまだ初エッチまでの道のりはナガイヨ~~~  でも心の底からよかったね、おめでとう!!!って言いいたくなる 言わせロ

でももうなんか理路整然としたプレゼンと言うか普通に私が二話をこう読むのが大好きやねんというただの感想文ですけど、でも原作と映画でこういう改変をしてくる監督と原作者無限にすごくないですか????というのはわかってもらえると思う。みんなも自分のエトランゼ、自分の読み方を見つけるピョン

結論はもう前節の最初の方に書いたようなもんなのであとはつらつらと補足

補足1
Q. 島を去る時点では携帯を持っていないという点では同じなのに、映画版では実央はいつ携帯を買っていつ駿と番号を交換したのか問題(桜坂でかかってくる電話はすでに実央として駿の携帯に登録されてる)
A. わからん 多分携帯は実央ひとりでさっさとどこかで買いに行っていて、実央が島に帰って来た時点で二人は番号を交換した、からののちのちわかるように実央が携帯を普段持ち歩かない人だから本島のシーンまで通話したこと自体はなかったのではないか?つまり映画版でも実央は桜坂で初めて「約束」を果たしてることにはちがいない(推定)んだよな~~~~~~~ギャフン

補足2
【スタッフトークショーの重大なネタバレ】
桜坂劇場と桜坂セントラル、ツイッターなどで調べると公開初期に沖縄在住の方から既に疑問が上がってるのが散見されるんですけど、実は徒歩一分くらいなんだそうですね…あんなに肩で息してたのに…めちゃくちゃ走ってるのに…
紀伊先生も「この人狂ってる…」と思わず漏らすロケーションのチョイスをされたのはほかならぬ大橋監督その人、大物ですわ…大橋監督「だってめっちゃよかったから…」(意訳)たしかに!!!!!駿のトラウマ=教室から逃げ出して学校の外まで走っていく、っていうのと実央のところまで駆けていく現在をオーバーラップさせるにはハシモトにしっかり走って頂く他ないので仕方ないんですよね。全然英断だと思う。決断の大胆さに監督の中のinner絵理ちゃんを感じる、ラブい。
あと27歳駿の方には高校生の時より老いて見えるようにアクション監修してもらってる、とか聞いてしまったのでそれもけっこう腹筋に来てる がんばれ作家

【総まとめと残念なお知らせ】3話4話について書く前に時間切れになった
~あと公開劇場や円盤発売!!!!について~

おつかれさまです…ここまでツラツラと原作全四話中二話の部分まで映画について書いてきたわけですが、そもそも何でこんなクソ長い感想を書いたかと言われればまだ観に行っていない方、あるいはリピートする余地のある方に少しでも魅力をお伝えして劇場まで足を運んでもらいたい、という(まあ半分自己満だけど)動機からなんですね…

全部のまとめをするにはあまりに長いのでやりようがないんですが、『海辺のエトランゼ』という巨大な愛を少しでも感じていただけていたらそれが幸いです。

で、まあ時間的制約がないなら映画後半についても上の勢いでた~~んまり話せることはいくらもあるわけですが(さく○こちゃんが出てきてない!!!と橋○文さん(仮名)からクレーム来そう)、『ゾッコン』については満を持して映画全部終わってから最後に語ろうと思ってたしね…

残念ながら公開から一ヵ月以上経って公開劇場数が少なくなってきていることもあり、あと三日も四日もかけて最後まで感想を書いている余地はないかな…という…まあそもそもどこまでの数の人に読んでもらえるかなんてわからないので捕らぬ狸のなんとやらって感じですが、最低限の目的は二話部分までである程度果たしたんじゃないかと…ということでこの記事を一旦公開してしまおうと思います…く、悔しい~~~最後まで書いてから公開して(でもそれだとほんとの自己満になってしまうので)~~~~~ここまで約33000字

え~~~ですのでですね、ここで一旦公開劇場などについて一覧にして補足をば

そして!!!!あ~~~劇場間に合わねえよおせぇよ、というあなた、私はとりあえず腹を切るので()下に、下にある円盤情報を…みてってくれ…

個人的にやべえなと思うのはスタジオ雲雀直販、絵コンテ全編が特典としてつきます

ひとまず私の映画『海辺のエトランゼ』の紹介はここまで…のちのち書き足しますけどね(まだ書くのか)
埋め込みじゃなくてリンクを貼る形でツイッターに載せるのでしばらく追加編集できません…誤字脱字あってもユルシテ…

すこしでもこの長文を読んで『海辺のエトランゼ』を観たいと思ってくれる人が増えますようにー