宗教の勧誘にあった話

今から3年ほど前、昔お世話になっていた方に宗教の勧誘をされるという嘘のような体験をしました。よく視聴者の体験談を再現ドラマでまとめた番組なんかで見た話のような気がしますが、当時は「こんなこと実際にあるんだなぁ」と笑うしかありませんでした。

ことの始まりはある日の仕事おわり

車のドアを開けようとした瞬間、どこからともなく「鈴木ちゃん!元気?」と声をかけられました。
今考えれば場所もタイミングも200%不自然なのですが、声の主は数年前に辞めた会社で何かとお世話になったAさんでした。彼女は「たまたま近くに来たからよってみたの」と言っていましたが今思えばたぶん待ち伏せされてたんでしょうね。

もともと向こうがバーバー喋って私はうんうん聞く関係性だったので、その勢いで「お茶しようよ!」と言われ、ついOKしてしまったのです。(HSPらしくその後激しく後悔しましたが、自分の中の何かが行け行けと背中を押していた気がします。)

コメダ珈琲で会うことに

お互いドリンクを注文してから30分くらい、当時私が個人的に経験していた人生の山場について話をした気がします。珍しくうんうんと話を聞いてくれていたのですが、きっと彼女の中では私が悩んでいたのが宗教の話に持ち込む良いキッカケになったんだろうなぁと思います。

私の話が落ち着いたころAさんがごく真面目な顔で「最近の台風とか地震って、なんで起きてるんだと思う?」と質問しました。
(確か北海道あたりで天災が頻発していた時期でした)

「今はね、神に従わない人間をこらしめる時なのよ」

緊張による笑みで顔がひきつりました。何が起きているんだと。

Aさんは鞄から冊子や新聞を取り出し、テーブルの上に広げました。そして同じものを私に差し出し「私が読むから文章を目で追ってね」と指示をされて、開いた口が塞がりませんでした。

渡された新聞にはカルト特有の不安を煽るような見出しがずらずらと並んでいました。もう内容は忘れてしまったのですが、常人であればひと目で「ヤバイやつ」とわかるものだった気がします。
Aさんはその新聞の右上から丁寧に音読しはじめたのです。コメダ珈琲のど真ん中で。私は黙って指示に従い、彼女が読んでいる文を一生懸命目で追いました。

しばらくして彼女が決めていた範囲の音読が終わったらしく「どう思う?」と質問されましたが、私の頭の中はまだ混乱状態で口をパクパクする他にできることはありませんでした。「まだわかんないか」と次はカラフルな冊子を開き、よくわからない図を丁寧に説明された気がします。
今は(そのカルトの中の)神に従わない人間をこらしめ、間違いに気づかせる時期であると。世の中の人間がそれに気づけばとても良くなり、みんな幸せに生きていけるんだと。

私が何も言わない=感心しているまたは興味があると捉えたらしく、一度本部に行って神に許可を貰ったら家で祈っても貢献してることになるから大丈夫!と説明され、笑うしかありませんでした。

実のところ自分の親も宗教に入っている

私は親の宗教に入っているわけではありませんが、占いや性格診断などハタから見たら宗教じみたことを信じているように見えるかもしれませんね。
世界にはあらゆる宗教がありますが、結局の所「自分」に「神」や「ユニバース」などの名前をつけているだけなんですね。なので、神が私を救ってくれる=私が私自身を救う。目を瞑って橋を渡ったり、人類をコントロールしようとするのは神を信じていると言えないと思っています。

Aさんは立て続けに家族を失っていた

まだ一緒に働いていた頃、突然旦那さんの調子が悪くなりAさんの看病も虚しくたった数ヶ月の間に亡くなってしまい、そのすぐあとに娘さんが相談なしに県外への就職を決めて家を出て行ったと涙ぐみながら話してくれたことを思い出しました。
だから、彼女がカルトにハマってしまったことは責められなかったし、辞めろとも言えませんでした。悲しみや怒りを共有できる人たちをそんな風に失ってしまったら、嘘でも「わかるよ」と言ってくれる人たちに寄りかかりたくなると思います。

「私は自分を信じているからそれを変えるつもりはありません」

数十分ぶりに発した声は緊張で震えていました。Aさんは「そっか」と無表情になり、私の分の新聞と冊子をスーパー袋に入れて持ち帰るよう促しました。突然冷たくなった態度で私がこの袋を受け取ろうが拒否しようが彼女には何の意味もないことはわかっていたので、袋を受け取り席を立ちました。

店を出てお互い適当なことを言って別れました。また会おうねとか、また会社に遊びおいでとか。二度とそんなこと起きないとわかってましたが。

失礼かとは思いましたが、AさんのLINEをブロックしてそれっきりです。


そんな感じで、今回は長くなりましたが長くお世話になった方に宗教に誘われるという衝撃体験をしたお話でした。
※途中宗教からカルトに書き換わっている部分がありますが、こういう団体はカルトだと思っているのでそれを強調したいところではそちらを使いました。

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