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#85 面白半分日記03 読書日記08 バッタを倒しにアフリカへ

『バッタを倒しにアフリカへ』光文社新書
前野 ウルド 浩太郎 著

国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター 研究員、前野浩太郎博士は面白い。

5年前に読んだ本だが、おおよそ研究者(博士)とは思えぬ軽妙な語り口の文体に引きこまれ、あっという間に読んだ。

バッタに扮した本人が表紙を飾っているのだから面白くないわけがない。

たまたまキャリアデザインを扱う授業で、世の中にはこんなことで飯を食っている人がいるんだよと話題提供した。

仕事を楽しみながらやるって結構むずかしいんだけど、でも楽しめる要素を自ら生み出すことができるというのは才能だよね、という話をした。
「好き」は無敵だね、と。

「 “ 好き ” で飯食うバッタ博士 」を引き合いにしたわけである。

30歳頃まで、昆虫研究だけでは食うに食えない状況の中にあっても、研究し続けていた筋金入りの「“ 好き “ で食う」だ。

授業後、学生が質問してきた。

「その本はうちの大学の図書館にありますか?」

「私は図書の管理をしていないのでわからん。図書館の検索用PCで探してごらん・・・・なんなら私が所有している本を読むか?いや、読みなさい」

押し売りならぬ “ 押し貸し ” だ。

「ただし、読後感想をnoteに4,000字程度で書くこと」

「無理です!」

「いいや、読んだら絶対書きたくなるって!」

「無理です!」

「自分でマインドセットしちゃいかん!」

本を貸してから1週間後。

「センセー、この本、すんごい面白かったです。僕は読書習慣がまったくないんですけど、こういう本ならたくさん読める気がします。他におすすめの本はありませんか?」

「おすすめねぇ・・・・・図書館には76万冊の蔵書あるんだから、片っ端から読めばいい」

「いや、無理っス!」

「いや、君ならできる! 読書はね、いい本に巡り会うための漂流、旅なんだよ。つまり、ジャーニーだ。自分で何言っているかわかんないんだけど‥‥」


それにしても、地球規模で猛威を振るうバッタの大群に人類はどう立ち向かえばよいのか。

時折、ケーブルテレビのサイエンス・ドキュメンタリーを観ることがある(たしか、前野博士が所属する上記法人の番組もあったと思う)。

東アフリカから南西アジアにかけて大発生したバッタの映像を見てギョッとしたことがある。

ちなみに、私はムカデだろうが蜘蛛だろうが毛虫だろうが、昆虫に恐怖や気味の悪さはほとんど感じない。
ただし、1種類だけダメなやつがいる。

バッタ目カマドウマ科の「マダラカマドウマ」だ。

地域によっては「便所コオロギ」と呼ばれているアレだ。

子どもの頃、それがほんとうに便所に現れ、ピョーンと跳ねて、おしり丸出しで用を足している私のおしりにしがみついてきたのだ。

絶体絶命だ。
当時は、くみ取り式トイレ(ボットン便所)である。

危なく私が便槽にボットンしそうになるほどパニックに陥った。

以来、マダラカマドウマは天敵である。

もう見ただけで鳥肌が立つあの姿とマダラ模様・・・・・

自然災害とも言われているバッタの大量発生は、農作物に深刻な被害をもたらす。
防除対策は飛躍的に向上したらしい。

それでも、薬に対して耐性ができる害虫やウイルスと同様に遺伝子レベルの変異なのか進化なのかわからないが、バッタの発育・繁殖能力が向上しているという研究報告もある。

実は著者の前野先生、おふざけ博士ではなく、地球環境の維持に貢献する偉大なる研究者だ。

多くの研究者がインドア(研究室・実験室)で研究し論文発表する中、Far East(極東)の国ジャパンからアフリカの現地にやって来た人物がバッタのコスプレをしながらバッタを追い回し、その生態の謎を解き明かそうとしている物語は面白おかしく、そして奥が深い。

そんなことを800字程度で学生がレポートしてくれた。
やればできるじゃないか!