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#127 ことばの宝箱 再現性はあるのか?

冬休み明け、教職の授業で「言葉の宝箱」という名前を付けたクラウド上の課題回収フォルダにレポートを提出するよう指示した。

 これまでの人生で大切にしてきた言葉はありますか?
 あなたの心の琴線に触れた言葉や金言名句、座右の銘について、その意味や生かし方を考えてみましょう。
 教師になったとき、子どもたちに伝えたい思いはなんですか。
 あなたが紡いできた人生の物語の中から得た、あなたならではの考えを教えてください。

ここ数日、宝箱に金銀財宝がどんどん放り込まれている。

私も以下のようなものを、いろいろな授業で紹介してきた。


神は細部に宿る 

God is in the details.

出典・起源は不明だが、建築家のミース・ファン・デル・ローエや、ニーチェ、アインシュタインなどの名前も出てくる。

価値を創造する芸術、哲学、文学、思想に情熱を注ぐ人々がこの表現を好んで用いて伝承されてきた言葉だ。

物事を大きく見て、小さなことをおろそかにしては意味がない。
細部にこそ人生の真実・真理(神)が宿っている。

細部に目を向ける人は、本物がわかる人ということなのだろう。

翻って、子どもの何気ない言動にも神が宿っていると受け止めたい。

ちなみに、油断していると「悪魔も細部に宿る」ことになる。
The devil is in the detail.

心が変われば人生が変わる

これも出典・起源は不明だが、ヒンズー教の説法や哲学者・心理学者のウィリアム・ジェームズの言葉として紹介されている例が多い。

心が変われば態度が変わる
態度が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる
運命が変われば人生が変わる

思考が運命を決める

マザーテレサが遺した言葉だ。

思考に気をつけなさい 
それはいつか言葉になるから
言葉に気をつけなさい 
それはいつか行動になるから
行動に気をつけなさい 
それはいつか習慣になるから
習慣に気をつけなさい 
それはいつか性格になるから
性格に気をつけなさい 
それはいつか運命になるから

子どもが育つ魔法の言葉

教育学者ドロシー・ロー・ノルトの言葉も示唆に富んでいる。

批判ばかりされた子どもは非難することをおぼえる
殴られて大きくなった子どもは力にたよることをおぼえる
笑いものにされた子どもはものを言わずにいることをおぼえる
皮肉にさらされた子どもは鈍い良心のもちぬしとなる
激励をうけた子どもは自信をおぼえる
寛容にであった子どもは忍耐をおぼえる
賞賛をうけた子どもは評価することをおぼえる
フェアプレーを経験した子どもは公正をおぼえる
友情を知る子どもは親切をおぼえる
安心を経験した子どもは信頼をおぼえる
可愛がられ抱きしめられた子どもは世界中の愛情を感じとることをおぼえる

けなされて育つと、子どもは人をけなすようになる
とげとげした家庭で育つと子どもは、乱暴になる
不安な気持ちで育てると子どもも不安になる
「かわいそうな子だ」と言って育てると、子どもはみじめな気持ちになる
子どもを馬鹿にすると引っ込み思案な子になる
親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる
叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう
励ましてあげれば、子どもは自信を持つようになる

広い心で接すれば、キレる子にはならない
誉めてあげれば、子どもは明るい子に育つ
愛してあげれば、子どもは人を愛することを学ぶ
認めてあげれば、子どもは自分が好きになる
見つめてあげれば、子どもは頑張り屋になる
分かち合うことを教えれば、子どもは思いやりを学ぶ
親が正直であれば、子どもは正直であることの大切さを知る
子どもに公平であれば、子どもは正義感のある子に育つ
やさしく思いやりをもって育てれば、子どもはやさしい子に育つ
守ってあげれば、子どもは強い子に育つ
和気あいあいとした家庭で育てば、子どもはこの世の中はいいところだと思えるようになる

ドロシーの言葉は60年以上前にラジオの朗読で注目され、彼女の講演や書籍によって広められたものだ。

幼児教育にける「非認知能力」の育成においてもドロシーの教えが実践されている。
今もなお、教育界では様々な形で引用され続けている。

いつも学生に問いかけている。

私たちは偉大なる成功者の言葉をどう捉えるべきか。

実際に結果を出した人の方法論や思考法は参考になる。

しかし、それが自分にとって再現性のあるものなのか、真似るこができるのかということを、今一度よく考える必要がある。

成功者の話は明快である。

力ある言葉を紡ぎ出した背景にある努力や苦難の物語を理解しているだろうか。

成功したくて真似てチャレンジしたけれど、上手くいかないということはよくある。

失敗したとき自分に足りないものは何かという捉え返しはできているだろうか。

チャレンジャーの7割は失敗し「どうせ自分なんて」と諦めているという。

即効性を期待しすぎていないだろうか。
結果が出ないとすぐ諦めていないだろうか。
習慣化することを怠っていないだろうか。

上手くいかない時は、自分と向き合い、心の立て直しが必要になる。

パラダイムの転換、マインドセット(思い込み、固定観念)の解除をしなければならない。

この言葉はすべて私に跳ね返ってくる。

自戒の念を込めながら唱え続ける人生にしたい。