#157 面白半分日記34 ココアの甘い思い出
機能性表示食品のココアがネットで話題になっている。
コーヒー共々、好きな飲み物だ。
■飲食部門部長&ココア課長就任!
中2年の時、学祭の飲食統括部長に任命され、なおかつココア課長になった私である。
だから、ココアに関してはうるさい。
「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい!ココアはいかがっスかぁ!」
「ヘイお待ち!」
うるさいくらい元気に大きな声を出す。
いや、その “うるさい” じゃないでしょ‥‥
学祭では、衛生管理のこともあって、飲食料品の販売は調理不要の既製品(パンやカステラだったと思う)に限定されていた。
私は加熱できるトーストとココアは大丈夫だろうから自分たちで作りたいと主張したら、ココアだけ認めてもらえた。
それで、「言い出したお前がココア課長になれ」と言われたのが真相。
お湯を注ぐだけの簡単なやつではない。
友達のお父さんが喫茶店を経営していたので、そこを経由してバンホーテンの業務用キログラム単位のココアパウダーを仕入れた。
しかも、マスターのもとで美味しいココアの作り方を修行した。
そうして私は、ココアマスイターとココアソムリエの資格を修得したのである。
そんな資格ないか・・・・・
少年にとってココアづくりはシンプルだが奥が深い。
少年の知恵は浅い。
鍋にココアパウダーと砂糖を入れて弱火でじっくりネリネリする。
ペースト状にしてそこへ牛乳を混ぜる。
隠し味としてごく少量の塩を入れる。
繊細さは、あんこ作りと一緒だ。
ココア課長という肩書きがある以上は手抜きできない。
その社会的な使命と責任が大きいことを自覚していた私である。
何日も前から家庭科室で練習し、家庭科の先生に味見してもらった。
先生は最初から「これで十分美味しいよ」と褒めてれくれた。
でも、自分は納得でききないフリをし続けた。
そうすることによって、先生とずっと会話できるから。
若くて笑顔が可愛い先生だった。
中2の多感な課長だもの。
喫茶店で飲んだココアはお洒落でホイップクリームが浮かんでいたけど、それだと値段が高くなるので断念した。
ココアパウダーと砂糖の量を調整し試作と試飲を繰り返した。
しっかりデータを取って分量比率を一覧表にした。
科学実験と一緒だ。
「これだ!」という味に決まってから、厨房に入る人たちに作り方と分量の黄金比率を伝授した。
本当に最高の味かどうかは疑わしい。
カップは紙コップでいいじゃないかという意見もあったが、使い捨てはもったいないから家庭科室のティーカップを借りるという自分の案を貫いた。
なぜなら、それでまた家庭科の先生に会って話をすることができるから。
バザーの当日はてんてこ舞いだった。
当日は飲食統括部長に専念しなさいと言われた。
ココア課長は厨房に入るべからず。
でも、厨房には家庭科の先生がいる。
用事もないのに、指示を出すふりをして何度も厨房へ行った。
しかし、私の使命はあくまでも全体を掌握するために陣頭指揮を執ることことだった。
そこを忘れてはいけない。
(おおっ、カッコイイ!!)
カップはお湯に浸けて温めておく。
使い終わったらすぐに洗う。
次々と注文が入り、みんなドタバタ状態だった。
ココアはあっという間に売り切れた。
その結果、人生で初めて「ココア・オブ・ザ・イヤー」を受賞!
そんな賞、ないでしょう。
売上総額がいくらだったかなんて全然おぼえていない。
飲食の売上金を生徒会室へ持って行ったら全額を生徒会に吸い上げられた。
当初からそういう説明は聞いていたけど、とりあえず文句を言った。
そのとき、生徒会担当の先生の説明は・・・・
喫茶部門の仕入代金や消耗品費などは生徒会が出しているのだし、学祭は商売目的じゃないから、売上金を生徒会費にバックして、別な形で全校生徒に還元する・・・・云々かんぬんという話をされ、素直に引き下がった。
素直に従った決め手は、褒められたことだった。
日頃は勉強に熱心なわけでもなく、集団行動も協力的ではなく陰でチョロチョロしていたタイプだ。
部活の柔道のことしか考えていなかった私である。
先生から
「お前の違う一面を見て感心したぞ」
と褒められて、ただただ嬉しかったことを覚えている。
3年生に進級した途端、またまたなぜか柔道部のキャプテンに任命されてしまった。
こりゃ困ったぞと悩んだ14の春。
父がよく言っていた言葉がある。
ココアに関わったのも人生の節かもしれない。