#95 面白半分日記05 なぜ登るんですか? そこに階段があるからさ
学生達は若いがゆえに悩み立ち止まり、そして考える。
しかし、酸いも甘いも噛み分けてきた老練の私は決して立ち止まらない。
なぜかというと、内科医と管理栄養士が
「運動不足にならないよう歩くことを心がけてください」
と言うからだ。
血液検査のエビデンスに基づいた医学的助言に従うのが最も合理的だ。
血中脂質(コレステロール値)や尿酸値を下げる薬を処方してくれたらいいのにと思うのだが(薬を処方した方が病院の利益になるのに)、
「まず食事の改善から始めましょう」と言われた。
私の一日の食事メニュー1週間分を記録したものを提出したら
「野菜の摂取量が少ない、炭水化物(白米、小麦食品)、塩分・糖分、魚・肉、鶏卵・魚卵の摂取量が多い」
と指摘された。
過ぎたるはナントカか‥‥
最も効果的なのは「好きなものを絶つこと」だそうだ。
つまり、嫌いなものを食えってことか?
「饅頭、豆大福、おはぎ怖い怖い!」って言いながら食うか。
つまらない人生になりそうだ。
霞を食って仙人になるという考え方もある。
とりあえず歩くことから始めた。
キャンパス内の移動時、研究室と教室を往き来するのに、スケートボードやセグウェイは使わず、もちろんゴルフ場にあるカートも使わず、ひたすら歩いている。
学生達は1、2階上に行くのにもエレベーターを利用するが、私は7階くらいなら涼しい顔をして階段を軽やかにダッシュで駆け上がる。
むかし柔道とウェイトトレーニングで培った筋力は健在だ。
ただし、ひとつ問題がある。
教室に着いた頃にはゼーゼー、ハーハーと呼吸が乱れて授業の始まりは何を言っているのか自分でもわからなくなっている。
科学的に考えると、上層階は高山と同じで気圧が低く酸素が薄くなり、息をするのが苦しくなるのだろう。
学生達が提案してきた。
「センセー、無理をなさらずエレベータを使った方がいいと思います」
私は答えた。
無理なんかしていない。
なぜ階段を上るのかって?
そこに階段があるからさ・・・・
なにを笑っているんだ。
私の目標は、キャンパス内にある全ての建物を単独無酸素で踏破することだ。
コラコラ、笑うな!
今は授業中だぞ。
年明けには北壁ルートを制覇する計画だ。
若い君たちには私の背中を見て感じてほしい。
己のポテンシャルは無限であると信じてチャレンジすることが大切なんだよ。
「センセー、そろそろ授業を始めませんか?」
「あっ、ああ、そうだな・・・・」