#66 スクールワイドPBS 積極的行動支援
■積極的行動支援
PBSは、障害がある人々の問題行動に対する「懲罰的・嫌悪的な方法」に反対する運動、ノーマライゼーションとインクルージョンの運動の推進を契機にして誕生したものである。
PBSは、行動分析学的アプローチを適用した「ポジティブな行動支援」「積極的な行動支援」(Positive Behavior Support)と呼ばれ、日本の教育界にもスクールワイドBPSが広まりつつある。
具体的には、発達障がいがある児童生徒だけでなく、定型発達の児童生徒の指導も含んでいる。
最近の教育界で気になる動きのひとつにあげられているのは、教職志望者が激減していること。
なおかつ、教職に就いて1年未満で休職や退職に至るケースが増えていること。
人手不足が各都道府県で深刻化している。
教師を辞める理由、または教師を志さない理由のひとつに「生徒指導が大変だから」というのがある。
心身の疲弊により休職し、残念ながら退職・転職するという人が徐々に増えているのは頷ける。
実際にやってみると想像以上に大変だと気付く。
自分の教科だけ頑張っていれば良いわではなく、生徒指導もあれば部活動もあり、その他諸々の業務が一気に押し寄せてくる。
何がどう大変なのか、個別の事情によるだろう。
「働き方改革」も含めて、学校の体制として教員へのサポートがどれほど実施されているのか気になるところである。
初任者として採用されてからの1年間は、校内外での初任者研修(法定研修)が義務づけられている。
そこで教師としての在り方をはじめ教科指導、生徒指導など多面的な研修が行われている。
ところが、それが負担になっているという初任者もいる。
教科指導ができなくて困りを抱える教員もいる。
教科指導の根底には生徒指導がある。
教科に関する知識・技術は個人の努力で何とかなりそうな気もするが、事はそう単純ではない。
教科指導で上手くいかなくなり、それがこじれてしまうと、児童生徒からの信頼を失い、生徒指導も上手くいかなくなるという悪循環だ。
そこが踏ん張りどころなのだけれど・・・・・
職種を問わず、常に離職・転職の理由の上位にあるのが「人間関係」だ。
生徒指導も人間関係の構築が前提になる。
■PBSの考え方のポイント
昔から「叱るより褒めること」と言われてきたが、私たちは感情を持つ生き物であるが故に、なかなかそれができなくて苦しむことがある。
PBSは単に「褒める」「傾聴」を推奨して、あとは「臨床心理士(スクールカウンセラー)にお任せ」「教師個人の努力で頑張ってね」というものではない。
“ スクールワイド ” なわけだから、行動支援を学校全体で組織的に行う枠組み・仕組みをつくらなければならない。
ベースは、行動分析学、行動心理学、認知行動論等の科学的な手法とエビデンスだ。
児童生徒の行動変容を促すうえで、適切な行動に対して周囲の教師や大人がポジティブに関わる、という要素に加えて、それを維持・発展させていく中で、組織の見直しや、一人ひとりの役割、取り組みに対する教職員の賛同と協働が重要な要素となる。
すでに取り組んでいる学校では理論と実践を積み重ねている。
個人的に思うことは、児童生徒を対象としたものだけでなく、教員に対するPBSが必要ではないか、ということ。
後期の教職課程の授業で学生と共に考えていくことにする。