子ども先生に教わる、行動が止まらない「自動操縦モード」
子どもが教える学校は「子ども達」が先生となる学校です。これまで誕生した50人の子ども先生。その6~7割が、授業を終えた直後に口走るセリフとは?
1:終わった直後に子ども達から出るこのセリフ
子ども達が授業をする相手は大人です。それも100人近い大人たちです。自分の言葉で授業を行う、そんな緊張のピークを終えた子ども達。さぞかしホットしてるんだろうな、と思いながら感想を聞くと、みんな決まってこう言います。
「もう一度やりたい!」
「また子ども先生やりたい!」
「次はもっと資料に手を入れるんだ!」
「次回は違うテーマの授業にしよう!」
これを「子どもが教える学校」では「おかわり先生」と呼んでいます。6~7割の子が終わった直後に、「またやりたいー!」と言います。
なかには、お母さんに誘われしぶしぶ参加したという子や、ワークショップの様子をまずはチラ見したいだけで子ども先生するかは分かりませんなどと言っていた子が、率先して「おかわりー!!!」と言います。
参加当初のやりとりなどを思い起こしながら「どの口が言うんかーい!」って、毎回ずっこけてしまうのですが(笑)、子ども達の嬉しい変化につい目を細めてしまいます。
2:熱源にスイッチが入ると無敵
おかわり先生は分かりやすい一例です。人によっては、変化の形はまちまちです。
ある子は、自分の大好きなマインクラフトのゲームをもっと勉強するために、英語の本格的な勉強を始めたり。(小学生で英検のさらなう上級にトライとか!)
ある子は、大好きな昆虫を授業に取り上げ、参加者の多くが画面越しに飼っている虫を見せてくれる人が続出したことがとっても楽しかったよう。授業をきかっけに、「大好きな昆虫」についてさらに勉強始めてるとか。公園でもお友達のお母さんに、昆虫知識を披露して「昆虫先生」と呼ばれているらしいですよ。
これは、いわばそれぞれの「熱源」にスイッチが入った状態です。やりたい、伝えたい、もっとしてみたい、そうやってそれぞれの「やる気のスイッチ」がONになっている状態なんですよね。
これは本当に最強です!
まわりからせっせと薪をくべる必要もない、後ろからクラクションを鳴らす必要もない。
放っておいても勝手に走り出す。給油の不要な自動操縦モードの車です。その子の熱源がたぎっている限り、その子の行動は止まりません。
3:心のうちに秘めていたテーマだからこそ
子ども先生たちがテーマにするのは、好きな事や伝えたい事、普段考えていることなどです。
人によっては「こんなこと理解されるわけないよな~」「大好きなゲームについて話しても大人に褒められるわけはないし」と、
心の中には溢れるくらいの思いや考え、アイデアがありながらも、「大人の評価や反応」を意識するあまり誰にもきちんと話したことのない話題を授業にすることも多いです。
だって、ゲームをし過ぎて怒られることはあっても、褒められることはないでしょう?
思春期の娘へのお母さんの対応について話して、うるさいと一蹴されることはあっても、それは興味深いねって言われることは日常ではないでしょう?
だからこそ、各御家庭ではこんな声が聴かれます。
子ども達が選んだ授業テーマを見て、親御さんがまずびっくりされます。「そんなに好きとはしらなかったな」「こんなに詳しいとは知らなかった」という具合にです。
そんな誰にも話したことのない、だけど心の中で熱く火のついたテーマを、一度でも誰かに話す経験をしたら、それが思った以上の反響だったとしたら・・多くの子ども先生がクセになるのも理解できませんか?
もっと言うならば、まわりの反応がどうこうではありません。
その授業を作り上げていく過程で、どんな授業にしようかな、どんな話をいれようかな、どんな資料がいいかな、じゃあ写真撮ろうかな、あれこれ自分が選んだテーマについて考えていく過程が「自由で」「創造性」にあふれていて、とってもワクワクすることを、子ども達は知ってしまったからだと思います。
それは、自分が好きな事、興味がある事、伝えたい思い、それらを心の中から掬い上げ、言葉にし、誰かに分かる形に整えていく、とってもかけがえのない作業だからです。
▼あるお母さんはその様子をこう表現してくださいました。
これはなかなかエネルギーの要ることだと思いますが、自分の本当の思いを自分に向き合って外に出すことって、とてもスッキリするし、生きてる!って感じがしますね。
本当にそうだと思います!!!
自分にしかないテーマを見つけたとき、それが自分の言葉で表現出来たとき、その過程で自分の熱源に着火したとき。
それらが引き金となり、子ども達はあらゆるインスピレーションがONになり、あれもやりたい、これもやりたい、そのための勉強だったらちっとも苦にならない、そういった自動操縦モードに入るのだと思います。
4:今こそ必要なセンス
先日、このプロジェクトに興味を持っていただいた、某市の教育委員会のメンバーのみなさんと打合せという名の、意見交換をさせていただきました。教育の専門家の方を前に、私が語れることはそうないのですが、私が力を込めて話したのは、この子どもたちの「熱源」の話です。「熱源の持つ力」についての話です。
つながった熱源は行動を促進させるし、見ている大人たちを感動を届ける、そんなお話をしました。
▼すると、とある参事の方からこんなお話が。
今は休校中の学習の遅れを取り戻そうと、学校現場ではみな躍起になっている。だけど、学校や先生だけの努力で取り戻せる量などたかが知れている。大事なのは子ども達の「やる気のスイッチ」を入れること。
こんな時代だからこそ、子ども達一人一人がやる気になれば、それは学校や先生だけが躍起になるよりも、ずっとそれ以上の学びにつながるはず。
そんなお話でした(表現はすべてニュアンスです)
本当にその通りだな、と思います。
私たち大人はついつい、知らないこと、知識を教える方に力をいれようとしてしまいます。
だけど、本当に大事なのは子どもたちの学びのやる気をONにすること。
そのためには、
人生はこんなに可能性に満ちていて、君にもそれを実現できる可能性しかないということ。
その可能性は、誰に定められるものでもなく、君自身が自由に決めていい事、そのヒントは君の心の中にすでにあるということ。
好きな事、情熱、やりたい事、問題に感じている事、なんでもいい、それらにまずは真剣に向かってみる事。
自分のアイデアや思いを、怖いけれど、まわりに伝えてみること。必ずや君のことをいい!と言ってくれる人は一人はいること。
まずはその一人を手掛かりに、可能性をもっと外へ外へ広げていけばいいこと。
そんなことが私たち大人が一番子ども達に伝えるべきことなのかもしれません。その見つかったやりたいこと、可能性を実現するために、勉強も、語学も、人とのコミュニケーションも、あらゆる学びはあるのだ、そう思った時、子ども達は自動操縦モードで学びを始めるのではないか。
その自動操縦モードこそが、思いを増幅させ、仲間を呼び寄せ、持っている可能性を実現させるキーになるのではないか。
私はそう思います。
そのために私たちが出来ることは、本当にやるべきことは・・
実は、ぐるっと一周回って、まずは私たち大人がやりたい事、伝えたい事、好きな事、問題に抱えている事、それらに真剣に向き合う姿勢なのではないでしょうか。そうやって、自分の中から込みあがってくる熱に従って行動してていく、その可能性について行動で指し示す、それが私たち大人の一番の役割だと思います。
だからこそ、私も世間のこうしたらいい、そういったノイズに耳に傾けるより、自分の思いにまずは真摯でいたい、そう子ども達を前にいつも感じています。
子どもが教える学校 次回は??
毎月第1土日に開催!
次回は9月の第1土日!!
【プロフィール】
鈴木深雪 東京都日野市在住
小学2 年生男子を子育て中の働く母。
個人HP)https://himotoki.com/
大手印刷会社に 16 年勤務そこでのプレゼンテーション/資料作成スキルを活かし、思考整理サポートや資料作成代行業務で独立。 7 年間の子育てで学んだのは「子どもが大人に最大の学びをくれる存在」であること。いつか子どもが先生の学校をやりたいという夢と、学校休校への子どもたちへの思いが合致し、本プロジェクトを 2020 年 3 月に立上げた。
その他、ライフワークとして、働き方をテーマとした東京都日野市主催セミナーへの登壇や、 NHK 番組「おはよう日本」への出演実績あり
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