産業医視点での復職判断

 精神疾患で休職していた方が復職する際、産業医がいる企業であれば産業医面談を経て復職することが一般的です。稀ですが、「メンタルのことはわからないから」などといって面談しない産業医もいるとは聞いたことがありますが、通常はあり得ません。

 休職している労働者にとって、産業医面談は一つの「関門」なのかもしれません。しかし、産業医が意図的に復職させないようにする、ということは無く、むしろ復職後までサポートする立場なのです(そうでなければいけません)。

 また、「復職判断」と書きましたが、最終的な復職の可否は産業医が決めるのではなく、会社が決めることです。産業医はあくまで意見を伝えるという立場なのです。

 ただし、産業医が復職不可と考えることは当然あるのです。

 一般的には、休職している方は、主治医から復職可能の診断書をもらって産業医面談になります。主治医から復職可能と言われた時点で、症状はあってもわずかで、就労に支障がない「はず」です。

 しかし面談をしていると必ずしもそうとは限りません。日常の生活リズムすらままならない方であっても、復職可能の診断書を持ってくることがあるのです。理由はさまざまです(ここで書くと脱線しますので割愛します)。

 症状が強く残っていたり、日常の生活リズムが整っていない方は、私は復職可能とは判断しません。「生活リズムなどすぐに戻せます」と言われたら、「戻してから来てください」と言います。昼寝も基本的に不可です。普通の職場は昼寝できるのでしょうか?昼休憩のうち、食事を急いで摂って15分くらい仮眠、なら許容できますが、休職していると1時間以上仮眠してしまうことはざらにあります。

 ここまでは必須の条件でしたが、これから復職を考えている方との面談であれば、さらにいくつかのことをお勧めしています。

 一つは運動です。運動といっても、息が切れるほどではなく、一日に8000歩くらい歩くことを勧めます。体力の自信がある方でも、復職すると疲れますから。

 もう一つは頭のリハビリです。本を読んだり、パソコンを使う方は文章を書いてもらったり、何か集中しなければならないことを勧めます。仕事は単純作業なので頭は使わない、ということではないのです。自分を緊張状態において、疲れをみてほしいのです。

 最後の一つは、再発予防策を考えてもらうことです。過重労働など職場の要因で体調を崩した方であってもです。どうすれば再発を防ぐことができるのか、それから、再発のサインにどうやって気づくのか。これをしっかり話しておくと、復職してから危ないと感じた時に、早めに産業医のところに来て相談してくれるのです。これで再休職を回避できたことは多々あります。

 再発予防策でストレスを「気にしないようにする」と答える方が結構います。私は「どうやって?」と訊きます。私のこの質問に正解はないのでしょう。「そうすれば気にしないようにできる!」と納得できた回答は今までありません。ですので、他の方法を考えてください、と言っています。


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