事業戦略、第五章、コストリーダーシップ戦略、502.棚の効率を高める
今は違うと思うが、以前、ある人と話をしていて、彼は「名古屋の本屋には、本がないね」と言った。
私はこれに頷いた。彼によると、東京や大阪の大書店に本を見に行っているという。
それは、会計や経営の本が名古屋の本屋に置いてあっても内容のないものが多いからだ。
これは本だけではなく、全ての商品にあてはまる。目利きの客は、棚の商品を見て、店が繁盛しているか?仕入れ担当者にやる気があるかを的確に判別する。
そして、繁盛する店の棚には顧客が本当に必要とする商品しか置いていない。だから、売り場の効率が良い。
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私は、もう四十年以上、クラッシックのレコードやコンパクトディスクを聴いてきた。だから、面白いコンパクトディスクを良く知っている。
クラッシックのコンパクトディスクは良いものを聴いていると病みつきになる。
私は、以前、ある人にチャイコフスキーの悲愴交響曲の良いコンパクトディスクを教えて欲しいと聞かれたので、ドイツグラモフォンの、ムラヴィンスキー指揮、チャイコフスキー後期三大交響曲の二枚組コンパクトディスクを推薦した。
それを聴いた、その人は、すっかり感激してムラヴィンスキーのコンパクトディスクを何十枚も買い込んで、ムラヴィンスキーの強烈なファンになってしまった。
もし、クラッシックを嫌いにしたければ、廉価盤を買わせることである。
そうすれば、いっぺんにクラッシックが嫌いになる。そうした廉価盤の曲を五分聴いていると、私も嫌になって、それ以上聴かず、「この買い物は失敗だった」と考える。
岐阜駅前に以前あった中小レコード店はクラッシックの棚を広く取ってあった。
しかし、その中で私が面白いと感じたコンパクトディスクは、ほんの数枚である。
ところが、近くにあった、あるスーパーの全国チェーンのレコード店の棚は、スペースが、その店の数分の一だが、ムラヴィンスキー指揮のチャイコフスキーのような、私が面白いと感じたコンパクトディスクしか置いていない。
だから、初心者が買って聴いても面白いのでまた店に来る。だから儲かっている。
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もし、低コストで商品を供給するのであれば、特定の棚をできるだけ少ない専任の仕入れ担当者に管理させる必要があるだろう。
全ての店を規格化して、ある一ブロックを専任のバイヤーが担当する。
そのバイヤーは、店がどのような条件の商圏に立地するか?によって、どのような商品がどれくらい売れるか?棚割はどうするのか?について明確かつ適切な計画を立案できるくらいでなくてはいけない。
そして、売れない、無駄な商品は一切置かないという方針を徹底的に堅持しなくてはいけない。
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あるスーパーでは、店舗を建設する前に商圏の分析を行い、各商品の仕入れ担当者が、商圏分析を元に、店の売り場の配置や棚割をコンピューター上で操作して組み立て、仮想の店舗をコンピューター上バーチャル(仮想空間)で作り、店の収益性を計画してしまう。
それから、店舗を建設する。
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良い売り場というのは、必要なものがもれなく置かれ、一切贅肉がなく、客が自分の欲しい商品をすぐに見つけ、レジを済ませると、さっさと店を出ていってしまう店である。
ダメな店というのは、客がいつまでもウロウロして、何も買わずに出ていってしまう店である。
店に必要不可欠な商品しか置いてなければ、店の面積はそれだけ少なく済む。
だから、店舗の建築費、減価償却費、地代、あるいはリース料が低く押さえられる。減価償却費、地代、リース料が安ければ、販売費、管理費を抑制し、商品の価格を安くできる。
これも低コストのための立派な戦略である。
また、財務構造、情報システムの的確な構築というのも、低コストのための戦略である。
適切な財務構造は商品の価格を引き下げるのに役立つ。
不要な不動産を所有しない。借入に依存しない。無駄な建物、什器備品を買わない。労働節約的で価格の低い生産設備を作る。時として特注する。
在庫を極力抱えない。
適切な増資、社債発行等の資本政策を取り、投資家の信頼を大切にする。プロジェクトの収支計算をきちんと行う。
これらによって、財務上のコストを適切に切り下げることができる。
さらに、最近になって、AIを利用したネット通販サイトがCDショップを窮地に追い込んでいる。
四十年近く前、メーカーの商品を百貨店、総合スーパーに置いてもらうためには、先ず、バイヤーに商品を認めてもらわねばならなかった。
そして、バイヤーが適当と認めて、メーカーの商品が売り場に置かれた。
それに対して、ネット通販サイトは、メーカーの商品を自分のサイトに出品することに制限を設けなかった。
ただ、商品のレヴューがあって、AIが整理している。商品を買った顧客は、ある商品についてレヴューを書いてくる。
商品に欠陥があると、買った顧客は、商品レヴューに否定的な意見を書く。
そうすると、この商品を購入しようとする人が、このレヴューを見て、買うのを止める、ということも可能になる。
つまり、顧客は、商品に関するほぼ完全な情報が得られるようになった。
たとえば、私の若い頃、買いたいCDがあっても、CDショップには置いてないことが多かった。だから、私は、自分の欲しいCDを買うために、いろいろな大きいCDショップを回って、お目当てのCDを手に入れた。
しかし、アマゾンでは、中古も含めて、注文すれば欲しいCDがすぐ手に入る。しかも、輸入盤でとても安い。
私が手に入れた、107枚組の輸入盤フルトヴェングラーのCDセットは9000円ほどだった。CDショップは、これに太刀打ちできない。
ネット通販サイトは、店舗を出す必要がないので、地代、店舗・什器備品の減価償却費がかからない。
店員が不要である。売り場の陳列、棚への補充が不要である。光熱費、照明費がほぼ不要である。
従って、その分だけコストがカットされる。
だから、商品の売価が安くても利益が出るということになる。
私は、AIを利用したネット通販サイトは、コストリーダーシップ戦略を取っていると見ている。
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