ライトノベルに「さよなら」を言う日・削除分

 ぼくの最初のnote『ライトノベルに「さよなら」を言う日』は、もともともっと分量の多いものを、読んでもらうにはちょっと長すぎないか、と削ったものです。
 幸い、ある程度の反響もいただき、ホッとすると同時にいまさら赤面するものもありますが、これを機会に削除した部分も載せてみます。

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 おもしろい、とは何か。

 古い話ですが、ぼくが中学生のころTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』が始まりました。もちろんドはまりし、夢中になって観ましたが、その放送直前、少年マンガ誌、サンデーだったかマガジンだったかで、特集記事が掲載されたのです。
 2色カラーの6ページくらいだったか。どのページも松本零士先生のメカ+人物イラストで埋まっていました。当時はまだ、松本零士といえばSFよりも四畳半ペーソスものイメージが強く(青年誌の連載やSF小説のイラストなどは好きで知っていましたが)、いわゆる松本メカを全面に出したメカ設定や陰のあるキャラなど、当時のアニメとしては目を見張るものでした。絶対観よう! と思いながら、そのページを(誇張でなく)何時間も眺めたものです。とくに天井と床に同じメカが配された第三艦橋のイラストが圧巻だったな。
 ガンダムは高校生のこと。これはもっとはっきりおぼえています。当時買っていた「アニメージュ」の新番組特集で、1/3ページだけ、彩色された設定画だけが載っていました。同じ時期に放映開始の『未来ロボ ダルタニアス』がまるごと1ページの描き下ろし?イラストだったのと比べれば、はっきり言って、あまり期待されていたとはいえない扱い。けどぼくはすぐにその『機動戦士ガンダム』というちょっとゴロの悪い(と当時は思えた)タイトル作品にすっかり惹きつけられていました。これまた絶対観ようと思い・・(以下同文)。
 いまにして振り返れば、ガンダムが一般名詞ほどに普及し発展し人気があるの較べ、ダルタニアスはカケラも残っていません。三銃士の人?というくらいか。
 マクロスも同じでした。アニメばかりだな。まぁ、わかりやすい例で良いかなと。
 エヴァンゲリオンのときはもう働いていたので初動に遅れたけれど、友人が貸してくれたビデオ(テープ!)で1話を見始めたとたん、引き込まれました。あとは、これも以下同文で。
 アニメファン、マニアならそのくらい当然、なのかも。
 けど単なる人気とか出来の良さ、をはるかに凌いでアニメ史に残る作品群を、紙媒体の予告だけで確信した、のはちょっとした(間違った)自信をぼくに与えたのは間違いありません。
 オレはおもしろいモノがわかる。おもしろいモノを見分ける目がある。オレがおもしろいと感じるモノがおもしろいモノだ。
 間違いない。そう思いました。
 つまりは、オレが作る(書く)モノがおもしろくないわけがない。
 ひどい誤解、誤りでした。けど、そうでも思わなければ作家はやっていられない、というところはあります。
 それがいまはどうか。
 例の超絶記録的ヒット作も……、止めましょう、そういうことです。
 これおもしろいのかな? おもしろく書けてる? もしかしたらおもしろくないのでは……、一抹でもそんなことを想うと、もう1行も書けません。

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 又吉直樹氏の『火花』がとても好きで、半分所属している同人で読書会をしてもらったこともあります(してもらった、のは、もともとぼくが司会・進行で企画していたものの、母親の手術で急遽帰省しなくてはならず、バトンタッチしたため)。
 芥川賞作として「文藝春秋」に掲載されたのは、ウィキペディアによると2015年2月号、なので、その(前年の年末?)あたりに読んだのだと思います。氏の以前からの文筆活動などは知らず、芸人の人が初めて書いた小説、という興味でした。正直に言えば、話題作りだろ? マーケティングだろ? という例のいつものバカにした気持ちがそこにはありました。
 けど読んで、おもしろくて驚いた。もっと驚いたのは、主人公たちがお笑い芸人が下積みから成功するまでの話だと思っていたら、そうはならず、どうにもメジャーになれずに挫折し、芸人を辞めて就職するのです。ラストはもう少しありますが、要約するとそんな感じ。
 もっとハマったのは、同作のネットフリックス版映像作品で、ぼくが見たのはNHKで2016年2月から放送されたものでしたが、のちに、ネットフリックス版そのものも見ました。
 ネトフリ『火花』は、1時間弱の10話構成という、中編程度のボリュームの原作を10倍に引き伸ばしたような内容で、あ~、こんな展開、小説になかったよな~、とか、主人公(林遣都)顔良すぎでしょ、とか最初は批判的だったのが、見るうちにどんどん引き込まれていきました。なんというか、スタッフがすごく、この作品をわかっているな、愛情をきっちりかけてやっているな、という感じが強くて。
 原作だと主人公コンビは、ちょっと売れかけた程度でしたが、ネトフリ版では明確に売れ始めて、テレビにもよく出る、ワンマンライブも超満員、とハッキリ売れる軌道に進みます。けどしだいに失速。解散ライブも、かつてのワンマンライブよりずっと小さなハコになっていました。
 ネトフリ版を録画して、各話もう10回以上見たと思います。そのくらい、なんだか身につまされていたのかもしれません。

 2018年4月からのNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』も、ぼく的に印象に残った作品でした。そのまえの『わろてんか』はぜんぜん見なかったのに、ここから毎日見るようになりました。放送時間が変わったんだっけ?
 ヒロイン(永野芽郁)は少女マンガ家を目指して、人気漫画家のアシスタントとして入って修行。新人賞デビューして連載も持ちます。単行本も10冊くらい出ていた8年目(ウィキペディア見ました)で失速。スランプに陥ってマンガ家を辞めます。
 ヒロインを含め、若手アシスタントは3人いて(プロアシ的な人もいました。リアルだな、と)、もうひとりの女性アシ(清野菜名)もヒロインと同じような軌跡をたどってマンガ家を止め、男性アシ(志尊淳)だけが成功し人気マンガ家キャラとして最後までいました。
 何が言いたいのかはおわかりかと。
 従来、夢を追って挫折する若者の話はポピュラーだけど、いちおうは夢をかなえた、ある程度売れ、いいとこも行ったのに、その場所から去らねばならない。そんなストーリー(『火花』は主にネトフリ版が、ですが)は、ある意味画期的で、今日の決断からは(視聴時には)まだまだ時間があったぼくに、予兆のように刺さったのですね。
 逆に言えば、まだまだ時間があったのに、それを止める、逆転することのできなかった事実が突き付けられるようです。

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 どちらから言うか、というのもあります。
 たとえば雑誌連載をしていたころは、「あと3回で一旦終了ということにさせてください」とか、「今月いっぱいで終わりになります」と言われることはよくありました。
 最初から10回なら10回の連載と決まっている小説などならともかく、毎回の企画記事みたいなものは、人気と必要があれば続く、そうでなければ終わるわけですから、仕方がない。仕方がないけれど、次がないというのは堪えます。
 とはいえ、そろそろ終わりだな、という予感はあって、あぁ、やっぱりか、というときもあれば、まったく予期せぬとき、また、ダメかもと思いながらも「じゃあ、次は」と提案してみて、「いえ、すずきさんには一旦お休みをいただいて、ということに」言われ、やっぱりダメというのも。
 今回の場合は、この作品が売れないと厳しいだろう、から、やっぱりダメかも、いや……、んー、無理だなどうにも……、となっていきました。なので、「じゃあ次(の巻)は」と言っても厳しいだろうし、別の新しい企画で、というのも、直近の販売成績、昨今の出版不況、ぼくの年齢、などを考え合わせると、GOは出ないでしょう。
 やって(提案して)みなければわからないじゃないか、やらないで諦めるのか、と言われるかもしれません。しかしそこで執拗にがんばっても変わらないし、そんなふうに食い下がって、どうにかなるというのはやはりドラマの中だけなのです。そしてドラマでは主人公は必ず逆転勝利(成功)を治めます。
 なので、言い方はともかく、こんな風に自分から言い出すのはやはりひとつの区切りとしていいのではないか、必要なのでは、と。どちらも言わず、自然消滅というか、どちらもメールも電話もしなくなり、最低限必要な書類(支払い通知とか)が送られて来るだけ、というのもあります。というか最終的にはそうなります。
 明らかに避けられているケースとか、以前はメールしてもその日のうちに返信があったのに、1週間しても2週間してもなし。メール事故か(なことはないでしょう)と再度送ると、なんだかいやいやそうな返事が返って来る……。10年以上の付き合いでもそういうのはあります。まえは誕生日プレゼントだってくれたのに!w ネットとSNSの現代、対応によっては炎上したり、電話の音声録音データを公開されたりする危険もあるので、決定的なことは言わずにお呼びでない感を強めてフェードアウトを狙うのだとか。
 そんなふうになるよりは?という気持ちはありました。
 それでも(『TOKYO異世界不動産』)3巻も刊行されたのですから、出版元(ホビージャパン)には感謝しかありません。売り上げで恩返しができなかったのが申し訳なく残念でした。

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 これだけ載せると、これまた変な感じですが、ご容赦ください。
 もっとまた、別のまとまった文章が書けたら、そのときは。


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