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三匹が行くコロンビアの旅(3)ボゴタの日常

<20XX年2月7日>
 朝の3時、ルピタが目覚める。
 日本では朝7時ごろまでいつもぐっすりなのに、早くもこの時間に起きてしまうのは、やはり時差でまだリズムが整っていないからであろう。
 私自身は、日本にいる時でも3時くらいに起きて仕事をする習慣が根付いているので、ボゴタ到着翌日のこの日の朝も、3時ごろからメールチェックや資料作成などの簡単な仕事をこなすものの、ルピタが起きてしまったので、寝かしつけながらそのまま一緒に寝てしまう。

 朝7時、起床。
 洗面と着替えを済ませ、ドン・ネストルと共に近くの店へ朝食を買いに出かける。
 一歩外へ出ると、朝の陽ざしがまぶしい。青い空。大きな雲がいくつも浮かんでいる青い空が、ボゴタの空の特徴と私は記憶している。雲が全くない青い空というのはボゴタではあまり見た覚えがなく、入道雲のような大きな雲の塊が常にいくつも青い空に浮かんでいる。雲が一時的に空を覆うこともあるが、実際に雨が降ることは少ない。とはいえ、聞くところによると2月は雨の季節らしいので、普段はもっと頻繁に、このような空模様でも雨が降るのかもしれない。

 ドン・ネストルは出てすぐの角の店で声をかけ、少し歩いて別の店へ行く。後ろからついていく。
 歩道や道路の路面がデコボコして、あちこちにやや大きめの穴があいている様子がいかにも懐かしい。日本では路上の整備が非常に充実しているので、未舗装ならまだしも、きちんと舗装されている道路のあちこちに穴が開いていたりデコボコしたりしているようなことはあまりないが、この国では普通だ。走っている車は、慎重に穴を避けたり、スピードを落として衝撃を回避したりしている。

 昨日、空港到着後に車で移動した際にも感じたことだが、前回の旅の時と同様、200CCクラスのバイクが非常に多い。
 ボゴタでは、車のナンバーによっていくつかのグループ分けを行い、日によって走ってよい車のナンバーが指定され、全体的な交通量の規制が行われているのは相変わらずだ。バイクはナンバーによるこの規制の対象外のため、移動手段としてバイクが好まれる傾向がある。そして、圧倒的に200CCクラスのカマキリヘッドのバイクが多い。最近の言葉で言うなら、ストリートファイタータイプのバイク、とでも言うのか。
 前回ボゴタに来たときは、カワサキBajajのPulsarが圧倒的な人気だった。街乗りの200CCはいかにも軽快で便利そうな感じだったので、日本に戻ってからPulsarを買いたくなったほどだ。だが、残念ながら日本ではPulsarはあまりタマ数がない。
 久しぶりにボゴタへ戻ってきて最近のこのバイク事情を見てみると、Pulsarが多いのは前回と同じ。ただし、以前ほどの圧倒的多数派ではないという印象。ホンダのCBR、スズキのジグサー、ヤマハのR15なども見かける。特にジグサーをしばしば見かける。
 そういえば最近では日本でもジグサーが人気らしく、150~250CCクラスに日本でも注目が集まっているという状況を鑑みると、海外(ボゴタ)での200CCクラスの人気が、ようやく日本にも届き始めたようにも思えるから面白い。

 さて、2件目の店でパンを買ってから1件目の店に戻り、スープを購入。それらをもって帰宅し、近くに住んでいるフリエータも来たところで朝食となった。

 食後は、ルピタを連れてフリエータのアパート(日本でいうところの分譲マンション)へ行き、敷地内にあるプレイグラウンドでルピタを遊ばせる。ブランコはないが、滑り台があるので楽しいようだ。
 ボゴタ市内には、もちろん公共の公園があって滑り台やブランコもあるのだが、犬のフンがあちこちにあって衛生面の問題があるし、怪しい雰囲気(つまり怪しいヒトがいる、ということだが)があったりで、小さい子どもを気持ちよく遊ばせるには少々ハードルが高い。こういうところは、日本のようにどこでも大丈夫というわけにはなかなかいかない。
 フリエータの自宅を初めて見せてもらうことになり、日本の不動産感覚から言っても好印象であった。もともと不動産に関心があるので、今後の参考にもなる。コロンビアでの不動産賃貸業も検討したくなる。ドン・ネストルの新宅との距離が徒歩圏内というのも便利だ。

 フリエータが運転する車で新宅に戻り、皆で近くのショッピングセンター「EXITO」へ行く。
 EXITOはボゴタ市内にいくつか店舗を展開しているチェーン店で、食材や日用品の買い物で利用されているようだ。つまりボゴタ市民の日常生活に近い金銭感覚で買い物ができるわけだ。私は、観光客向けの店や一般的な市民感覚よりも高めの商品を扱うショッピングモールで買い物するよりも、地元のヒトが普段から利用する店でごく普通の買い物ができるほうを好むので、ちょうど良い。
 まず、2階の衣料品フロアから見て回り、アレクサがシャツなどを見ている間に、たまたまタクティカルブーツを見つけたので、じっくり確認してみる。良さそうだが、値段を日本円に換算すると約15,000円くらいになるので、なかなかいい値段だ。あって困るものではないので、買って日本に持って帰ろうかと思うが、この金額を旅の序盤に使ってしまうのはどうかと思ったので、とりあえず保留する。帰国前にお土産のお菓子などを買いにまた来たいので、ブーツはその時でもいいだろう。
 2階の買い物が終わったところで、フードコートで昼食。食後は、1階の日用品フロアでシャンプーとパルモリブの石鹸を選ぶ。パルモリブは、外国に出た際に私が好んで購入する石鹸で、コロンビアに来た際も必ず購入することにしている。だが、最近では人気がないらしく、あまり見かけなくなったという。その他、お菓子類を見て回り、お土産として買って帰るものの目星を付ける。いま買うのはまだ早いので、帰国する前にもう一度買い物に来たい。

 帰宅すると、午後4時半くらいになっていた。
 アレクサと共に少し寝る。ルピタはパパとママが休んでいる間、みんなと遊ぶ。
 やがて、仕事を終えたディエゴがやって来て、遊び疲れたルピタはすっかり寝込んでしまい、そのまま熟睡モードに入ってしまったので、無理に起こさず、皆で夕食のパスタを食べる。

 日本から持ってきたお土産を開放し、特に母・綾子から渡してほしいと頼まれていた着物について、ドニャ・クラウディアとアナに説明する。

 こうしてボゴタ到着翌日が終わる。特に珍しいイベントがあったわけではなく、ボゴタの日常と言ってもよい1日であった。

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