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関東圏でタガメを探す(前編)

ドラクエの発売日に一緒に徹夜する父親


僕が小学生のころの話。

夏、カブトムシやクワガタが欲しいと駄々をこねたら、車で山々まで一緒に探し歩いたり。

冬、当時大人気のドラクエ2が欲しいとせがめば、町に1件しかないおもちゃ屋さんに発売日前日から一緒に並んでくれたり。

今は80歳になる僕の父親は、いい意味でも悪い意味でも「友達」のような感覚で接してくれる大人でした。

これが(※相当甘やかしもありますが)親の愛情なんだと、当時の自分はわかるまでもなく。今回、息子に「タガメを見つけに行きたい」と言われて、はじめて、そんな父親が提供してくれた「時間」と「行動」は、本当にかけがえのないものだったんだなと思い至りました。

子供心を納得させるために必要なもの。

それは、親が自分に対し、真剣に向き合ってくれた時の「納得感」なんじゃないかと思うわけです。

自分の幼少期と重ねあわせ、息子がタガメを見つけたいというのなら、全力で一緒の時間を過ごしてやろうと思い、2019年6月に旅をした記録をnoteにまとめておきます。

※関東圏在住で、5歳ぐらいの息子さんから「タガメ捕まえに行きたい!」と唐突に言われた親御さん向けのnoteです。結論からお伝えすると、「タガメ」はそう簡単に見つけることはできません。見つかりませんでした。


それが実滅危惧種のタガメであるということ


背景は詳しくわからないのですが、ある日、「タガメ」というかっこいい生き物がいるんだな、ということを知った息子。

最初のうちは、どんな生物なのか図鑑で調べたり、タガメが好きすぎて絵で描いたり、博物館で標本をみたり、動物園にある水生生物センターで生きているタガメの写真を撮ったり。小さい男の子が、たいてい辿るだろう道のりを進んで行ったわけです。

もちろん、それだけでも十分「タガメ愛」を感じるのですが、

「生きてるタガメを捕まえたい」
「東京にはいないらしいよ」
「調べたら北関東にいるって」
「茨城県とかの田んぼに泳いでるみたい」

彼が話す内容が、徐々に(そして正確に笑)エスカレートしてきたため、こちらも心してかからないとまずいな、と思わざるを得ない状況になりました。

ちなみに、このタガメ。

こんな形の水生昆虫で、屈強な前足と獲物の体液を吸う針が特徴的な勇ましい格好の昆虫です。宮城の田舎出身の自分でも、自然に生きているタガメを見つけたことはなく、それはとても貴重な存在です。
希少価値の高い水生昆虫で「ゲンゴロウ」という昆虫もいます。こちらは、小さいときに何度も捕まえたことがあるのですが、下のタガメは本当に見つけたことがない...

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https://ja.wikipedia.org/wiki/タガメ
カメムシおよび水生昆虫としては日本最大級。2020年2月10日以降は絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づき特定第二種国内希少野生動植物種に指定され、販売目的の捕獲・売買が禁止されている。

※写真および上記は、リンク先のwikiより抜粋。


大体の目星をつけて、北関東へ

息子の情報をもとに、自分でもざっくりと調べました。たかが昆虫、されど昆虫。それは希少価値の高いタガメなので、ネットの情報も公にされているものが非常に少なく、場所が特定できないようになっています。

以下、僕が調べた情報をまとめると

・首都圏では絶滅危惧種に指定されていて、東京、埼玉、千葉、神奈川、長野ではほぼ見つけることができない。

・北関東の農薬を散布していない田んぼ、用水路からの支流に生息している可能性が高い。

・用水路や支流が「コンクリート舗装」されているところでは、ほぼ見つけられない。未舗装でかつ水位が高くない場所に生息している。

・北関東の中でも、茨城県での生存確認情報が高い。反面、群馬県側では、あまり見つかっていない(というか生息していない。)


さて、そうこうして事前調査も終え、長男らを連れてタガメを見つけに行く旅を企画しました。

どうせやるなら「全力」です。

それはタガメの探索もそうですが、今回の「旅程」もそうです。仮に見つけられなかったとしても、本人に「あー、あの時こんなことを体験したんだな」という納得感が得られれば、意味のある記憶になるだろうという思いも込めて「旅のしおり」を作成しました。

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旅立つ前日に、このしおりを入念に読み聞かせてました。何よりも怖いのは探しに行く場所に相当な「危険」があるということ。

初夏の気持ちいい季節だし、

・半袖!
・短パン!
・網を片手に!

というわけにはいきません。

なぜかというと、タガメがいるような場所は雑草が生い茂っているみずたまりや支流になります。そこには猛毒を持つ「マムシ」がいる可能性大なのです。

素肌むき出しの半袖、短パンで探している最中に、マムシの歯が手足をかすっただけで非常事態です。万が一、土日祝日で医療機関が空いてなく、血清が手はいらないようなことがあると...。

そのあたりは、事前に周辺市役所に問い合わせをして、実際にマムシの有無なども教えてもらいました。対策として、長袖、長ズボン、長靴、そしてグローブなどを入念に準備。皆さんも、もし、タガメ探索に出かける際には、そこに危険があるということを念頭に、細心の準備を心がけてください。

さて、ここまでが今回のタガメ探索に至った経緯(前編)です。
1日目、2日目に分けて、どんな場所を網でガサったか。そして、どんな水生昆虫が見つかったのか、その辺りを詳しく後編としてまとめようと思います。

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