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恋愛していないと恋愛の相談にはうまくのれない 「感情移入ギャップ」

認知バイアス大全マガジン

人間の不合理な行動の原因、認知バイアス。なぜうまく行動できないのか、その理由がわかると人生がかなりおもしろくなります。そんな認知バイアスを紹介するマガジンです。


恋をしていない人は恋に悩む人を慰められない…

「そんな男なんてわすれちゃいなよ!」は不正解かも?!

友人が恋に悩んでいるとき、自分が恋愛をしていない場合、とても冷静なアドバイスをするかもしれません。理屈ではあなたのほうが正しいかもしれません。しかしここに大きな落とし穴があります。まず恋愛をしているとき、人間は冷静ではありません。頭の良さに関係なく(だから頭の良い人も恋愛や結婚に失敗することが多々あります)。そして冷静ではないその感情の渦に、自分も入っていないと相手のことを理解できません。つまりあなたの言葉は相手に届かない可能性があります。このギャップを「感情移入ギャップ」と言います。

感情移入ギャップ

感情移入ギャップ(empathy gap)とは

怒ったり恋愛したりしている時に、その感情を持たない視点で考える事ができない傾向

ホット・コールド・エンパシー・ギャップ(hot-cold empathy gaps)ともいいます。人間の理解は、非常に「状態に依存」します。怒っているときには、冷静であることを理解するのは難しく、逆に冷静であるときに怒っている状態を理解するのは難しい。恋をしているときに、恋をしていない状態を理解するのは難しく、逆もまた然り。「まあ、そりゃそうだよな」と思うも、この感情移入ギャップが問題を起こす場面がいくつかります。

感情移入ギャップが問題になる現場

感情移入ギャップがあると医療現場では、医師は痛みに苦しむ患者の状態を理解できません。上司は部下を理解できず、販売員は顧客の状態を理解できなくなります。

性欲が生むギャップ

マサチューセッツ工科大の2005年の研究によれば、わたしたちは、冷静でいるときには、すごくムラムラしているときの行動をちゃんと予想できないようです。冷静なときには、コンドームをちゃんと使用すると想定していても実際に興奮した状態では、その使用を怠る傾向がありました(※2)。ムラムラしている人の状態をムラムラしていない人(同一人物でも違うタイミング)は理解できません。

いじめと感情移入ギャップ

いじめは、されていないひと、特にいじめをしている側の人間は、いじめられているひとの気持ちを理解できません。いじめにあった経験を持つ教師とそうではない教師とでは、前者のほうが、いじめをしている生徒を罰する率が高いという研究結果があります(※3)。

対策

感情移入ギャップを知っておく。
まずは理解することから始めようとする。

まずは、感情移入ギャップというものを知っておくこと。職業的に相手の自分のあいだに感情移入ギャップが生じそうな医者、弁護士、教師などの職種の人はとくに。

身近の場面では、恋愛に関する相談をするとき、されるときに、相手と自分の間に感情移入ギャップがあることをばっちり想定しておくのが良いでしょう。「そんな男(女)、やめときなって」というセリフは、功を奏しないどころか、心理的リアクタンスを引き起こすことうけあいです。

ビジネスシーンにおいては、売り手は買い手を、買い手は売り手をうまく理解できない状態をデフォルトだと想定しておきましょう。相手の心理をより正確に想定できたとき、ビジネスチャンスを強く引き寄せることになるはずです。

応用

相手(ターゲット)になりきってみる

売り手のニーズや狙いより、買い手のニーズや狙いを理解する。

関連した認知バイアス

投影バイアス (Projection bias)

他の人が自分と同じように考え、自分の意見に同意するはずだと考えるバイアス。


心理的リアクタンス (Reactance)

他人から選択を強制されたりすると、例えそれが良い提案であって反発する傾向。


参照

※1:Empathy gap

※2:The Heat of the Moment: The Effect of Sexual Arousal on Sexual Decision Making

※3:Empathy gaps for social pain: why people underestimate the pain of social suffering

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