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選択肢に「お得なもの」があるとき、そこには「おとり効果」が使われているかも?

甲乙つけがたい2択にもうひとつの選択肢を加える

あなたはあるメーカーに勤めており、消費者にぜひ買って欲しい自社の製品、商品Aと、絶対に買って欲しくない他社のライバル製品、商品Bが存在しているとします。商品Aと商品Bには、どちらも優れているところと劣っているところがあり、消費者は、購入時にどちらを選ぶか迷うことが多い。このような状況に対して自社の「商品A」に対してあらゆる点で劣っているが、他社の「商品B」よりは優れているところも劣っているところもある「商品C」を投入するとします。

そうすると

商品A ≒ 商品B

という状況から

商品A > 商品C ≒ 商品B

という状況に変化する。こうなると消費者は迷わず商品Aを購入しやすくなる。これをおとり効果といいます。「商品C」は、「商品A」を購入させるためのおとり商品」となります。


おとり効果

おとり効果(Decoy effect)とは

おとりを含めることで、意思決定力を高める効果

です。非対称優位性効果(asymmetric dominance effect)とも言います。おとり効果とは、選ばれないであろう、魅力のない選択肢を一つ加えることで、他の選択肢が選ばれることを強める効果です。これは、映画館でポップコーンやスターバックスのラテの価格帯にも使われています。スターバックスのMサイズとLサイズの価格差は非常に小さいので、特別な理由でSサイズを選ぶのでなければ、自動的に大きい方の選択肢を選ぶことになります。

スマホの例

最新型スマホ「A-Phone」と「B-Phone」があるとします。これら2つをマーケティングでは考慮集合といいます。考慮集合(consideration set)とは、購買検討の対象となる製品の集合です。一般にブランド認知が高いほど考慮集合に含まれる可能性が高くなります。それぞれのスペックは以下のとおり。

A-Phone:価格 40,000円/ 容量 30ギガ
B-Phone:価格 30,000円/ 容量 20ギガ

この状況、つまり考慮集合に対して、消費者は、B-Phoneを「容量は小さくなるが、その分安いスマホ」という認識をします。つまり高くて容量も多いA-Phoneか安くて容量が少ないB-Phoneのどちらかを選ぶ、という認識です。ここにおとり商品、C-Phoneを投入します。C-Phoneは、B-Phoneよりは優れている点も劣っている点もあるが、A-Phoneにはすべて劣っているという商品です。

A-Phone:価格 40,000円/ 容量 30ギガ
B-Phone:価格 30,000円/ 容量 20ギガ
C-Phone:価格 45,000円/ 容量 25ギガ

C-Phoneが投入されるとB-Phoneの容量が少ないけれどお手頃という魅力が、相対的に小さくなります。

ダン・アリエリーの例

ダン・アリエリーの著書『予想通りに不合理』(下記)で紹介されている雑誌『エコノミスト』の例です。

(1)web版エコノミストの定期購読 :59ドル(ウェブ版の1年間の定期購読)
(2)雑誌版エコノミストの定期購読 :125ドル(雑誌版の1年間の定期購読)
(3)雑誌版とweb版の両方の定期購読:125ドル

上記のような選択を用意すると実験対象の学生がそれぞれを選んだ割合が以下のとおりです。

(1)web版エコノミストの定期購読 :16%
(2)雑誌版エコノミストの定期購読 :0%
(3)雑誌版とweb版の両方の定期購読:84%

(2)が、この場合、おとり商品です。(2)がない場合は、多くの学生(68%)が、(1)のWeb版を選択しました。(2)が加わることで、(3)がお得になったと感じてしまうためです。

難点

価格や関心の高さで、おとり効果はあまり現れないことがあります。

おとり効果の使い方

(1)選択肢は3〜5程度が良い
多いと選択したくなくなるから。

(2)価格の比率は、5:3:2
プレミアム:スタンダード:お得 = 5:3:2
にすると良いという説があります。

応用

心理的リアクタンスを避けるためにも、相手に選択の自由を感じさせたほうが良いでしょう。デザインなどのプレゼンテーションでは3つの選択肢があるほうが選びやすくます。しかし著名なデザイナー、ポール・ランド(Paul Rand)は、スティーブ・ジョブズからの依頼で制作したロゴ案では1案だけ提出し、アレンジをスティーブ・ジョブズが求めると大激怒しています(笑)。


オススメの本

おとり効果を詳しく解説している本に、ダン・アリエリーの『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』があります。



関連した認知バイアス

•心理的リアクタンス
他人から選択を強制されたりすると、例えそれが良い提案であって反発する傾向。



認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。知れば、普通は落ちてしまう落とし穴を避けることができるかもしれません。こちらに一覧があります。

記事はマガジンにまとめてます。



参照

※1:Decoy effect

※2:おとり効果

※3:Are You Using the Decoy Effect in Your Favour?

#認知バイアス  #おとり効果  #非対称優位性効果

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